Overview

アフリカ進出にあたっての基礎知識

ケニア・ナイロビ

世界人口の4分の1がアフリカに。
「アフリカ版EU」の運用も始まり25億人が一つの市場に

アフリカの人口は2023年時点で12億人。1億人を超える国は4カ国存在します。2050年には25億人まで増え、世界人口の1/4がアフリカとなります。

現在、アフリカの人口の半分は19歳以下と非常に若いです。一方でこれは、生産年齢人口(15歳~64歳)に比して非生産人口である子どもの割合が高いことを意味しますが、将来的にこの人口構成は変化し、人口に占める生産年齢人口の割合が大きくなります。経済成長と強く関連するいわゆる「人口ボーナス期」が、2050年以降にやってきます。

アフリカ大陸の関税を撤廃し、貿易ルールを共通化する「アフリカ自由貿易圏(AfCFTA)協定」は、2021年から運用が開始されました。「アフリカ版EU」と言われるもので、アフリカ54カ国・地域間の貿易と人の流れを活発化し、いずれ共通通貨を導入することも目指しています。25億人を市場とする単一市場が誕生することとなります。

2050年のアフリカの人口予測
25億人
人口増加と人口ボーナス期を迎え、今後あらゆる需要が増加。都市化が進み、若い世代が経済を牽引
貿易免税化の対象となる国・地域
54カ国
54カ国間の貿易を免税とし、共通通貨導入を目指すアフリカ版EUが運用開始。アフリカ54カ国が一つの市場に

アフリカに法人を持つ日本企業は年々増加。アフリカだけで1兆円超を売り上げる企業も

日本企業のアフリカ進出はこの10年増加し、拠点数は600弱となりました(アフリカビジネスパートナーズが調査集計する「アフリカビジネスに関わる日本企業リスト2019年版」より) 。このうち、アフリカ事業だけで100億円を超える売上を得る企業は数十社存在します。

アフリカを社会貢献(Social)の相手でなく、利益を期待する市場(Shobai)とする見方が定着しました。グローバルな競争や現地の高い需要を背景に、アフリカビジネスを企業の戦略に位置づけ、本格的に取り組む企業が増えています。

日本企業のアフリカ進出数

拠点数/企業数

拠点数:現地法人、支店、駐在員事務所、現地出資先の延べ数で、同一企業がアフリカの複数国に進出している場合は複数カウント
企業数:進出している国の数に関わらず、アフリカのいずれかの国に一つでも進出している日本企業の法人数

日本企業のアフリカ進出動向と事例はこちらから

日本企業の海外進出先は、中国からインド、そしてアフリカへ
2020年代はアフリカ進出が本格化する見通し

日本では、2000年代に中国、2010年代にインドへの進出がブームとなり、アジアへの海外進出が進められてきました。2020年代はアフリカへの進出がより本格化し、企業にとっての重要な拠点となることが見込まれています。なぜならグローバルで勝負をする日本企業にとって、アフリカは、今後世界で生き残るための試金石となるからです。

日本企業の海外進出の進展

2000年代
中国事業の本格化
製造拠点としてだけでなく、消費市場としても中国ビジネスが本格化。中国に駐在員を置く企業が急増
2010年代
インド進出が活発化
現地企業との提携などにより成功パターンの模索を開始。製造拠点を置く動き。2010年代後半にはインド事業で利益が出始めた企業も。
2020年代
アフリカ進出に本腰
アフリカビジネスを企業の戦略に位置づけ、本格的に取り組む企業が増える。法人設立や工場設立などの投資へと移行

アフリカが、日本企業が今後世界で生き残るための試金石となる理由

アフリカビジネスのメリット
アフリカが注目される4つの理由

日本企業がアフリカに注目するのはなぜでしょうか。アフリカは、成長市場を獲得できることはもとより、日本企業を強くします。企業の将来的な存続を考えたときに、次のような4つのメリットがあります。

1. 人口が増加するラストフロンティア。最先端と伝統が同居し変化する市場
25億人が住む単一市場が残っているのはアフリカのみ。携帯で完結するサービスが普及している一方で、伝統的なパパママショップでの買い物が一般的であるなど、最先端と伝統が同居し、日本とは違う産業発展の過程をたどっています。流通や製造における外部環境やインフラがこれから変化を迎えるにあたり、参入のチャンスが生まれます。競争もまだ固定化していないためこれからでもトップをとることが可能な事業領域も多く、現地有力企業との提携や出資などの関与の余地も残されています。
2. 課題の宝庫であり、日本企業が蓄積してきた技術やペレーションが活かせるチャンス
産業が成熟していない若い大陸であるアフリカは、言いかえると課題とニーズの宝庫です。生かされていないリソースも多く、通り一遍の市場調査を行っただけではわからないビジネス機会が存在しています。成熟した日本市場ではもはや見つからない大きなニーズに対して、日本企業が蓄積してきた技術で答えられる可能性があります。日本に対しては「技術」「戦後の経済発展」「規律」といった よいイメージが持たれています。
3. アジアを超えた先のグローバル企業へと脱皮するためのノウハウや人材の取得
グローバル化を進める日本企業。海外事業は欧州や東南アジアに留まっており、インド以西はまだ弱いのが現実。世界で戦える企業となるには、アジアから先に歩を進め「時差3時間の壁」を超える必要があります。ビジネス慣行が違い情報やネットワークがないアフリカにおいて事業を立ち上げる経験は、海外事業のノウハウや人材を社内に蓄積し、グローバル化の遺伝子を導入することにつながります。
4. 閉塞感から抜け出し、誰かの役に立つ誇らしく思える事業を
自社の製品やサービスはほんとうに誰かの役にたっているのだろうか...。自分は毎日意味のあることをやれているだろうか...。このような閉塞感を、アフリカでは感じる必要がありません。成長する変化の大きい若い大陸で、目の前の困っている人の本質的なニーズに答える事業を行うことができるため、自社の事業が本来持つ価値を再確認できます。サスティナビリティー(SDGs、ESG、気候変動)の目標達成に資することもできます。

一方で、3つのデメリットと3つの難しさが存在します

3つのデメリット

1. 治安や政治、事業運営上の不確実性
54カ国のなかには治安や政治的な不確実性を抱える国があります。外貨不足や不安定な為替、代金回収や債務不履行といった事業運営上のリスクも存在するため、影響を最小限にし、リスクを回避するためのビジネスノウハウを身につける必要があります。アフリカで強い企業は、環境変化への適応力が優れています。
2. 成長懸念と事業が軌道に乗るまでの時間軸
資源価格の下落や金利上昇、天候の変動といった外部環境変化に国家財政や経済が影響を受けやすく、景気が変動します。事業が軌道に乗るまでに時間がかかり、3年で黒字といった事業計画は立てづらく、10年単位で取り組む必要があります。一方で、かけた時間が成功要因である事業も多く、100年企業は盤石な事業基盤を持ち多少のことではゆらぎません。早く始めることが重要です。
3. 日本との関係性
アジアとの間のような深い歴史的な関係性がないため、日本ブランドや日本コネクションで商売をすることができません。商習慣や文化も違うため、日本でのやり方をそのままもって移行したり、アジアの延長線上で事業に取り組むのは得策ではありません。いいかえると負の歴史もなく、アフリカでは日本に対してトヨタなどが醸成した「技術や品質が優れている」「勤勉で誠実」といった良いイメージを持たれているため、関係を構築する最初のハードルは高くありません。

3つの難しさ

情報がない
アフリカビジネスに関するまとまった情報はインターネットでも見つからず、統計資料では現地のビジネス環境や需要が腹落ちできません。出張をしても決め手に欠き、事業の青写真を描くための情報が足りていないのが現状です。
ノウハウがない
サプライチェーンや商習慣、規制や税制がアジアとは違う環境下で、事業を立ち上げ商売を拡大する経験をしてきた人や企業が圧倒的に少なく、アフリカならではのノウハウは広く知られていません。
ネットワークがない
日本人や親日家ネットワークがアジアのように厚くなく、頼れる現地著名企業やフィクサーがいません。だからこそ依存の落とし穴に嵌ることなく、正しく市場を見ることができるともいえます。

こういった難しさを解決するためのサービスを提供しています

アフリカビジネスパートナーズのサービス紹介

アフリカの国数は54カ国

アフリカは4つの地理的なエリアに分けられ、あわせて54カ国*が存在しています。
東アフリカには「EAC(東アフリカ共同体)」、東南アフリカには「COMESA(東南部アフリカ市場共同体)」西アフリカには「ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)」「UEMOA(西アフリ経済通貨同盟)」といった、政治・経済共同体が組まれ、関税の優遇などが行われています。

国旗をクリックすると、それぞれの国のビジネス環境や、どの経済共同体に属しているのかが表示されます

南部アフリカ(10カ国)

北アフリカ(6カ国)

西アフリカ(15カ国)

中部アフリカ(9カ国)

*西サハラをあわせると55カ国

ビジネスの主要国はそのうち26カ国。国によって産業構造が違います

アフリカのビジネス上の主要国は26カ国。経済の中心が資源・石油である国、工業・製造業である国、消費や貿易である国に分けられます。

*順位はアフリカ54カ国内での順位
**工業競争力指数:製造業がGDPに占める割合や輸出に占める工業の割合などからその国の製造業の競争力を指標化した世界ランキング。数値が小さいほど強い
***人口100人当たりの携帯電話契約数
GDPと人口は2022年、都市化率は2018年、工業競争力指数とビジネスのしやすさは2020年、携帯普及率は2021年

アフリカ26カ国の1人あたりGDP

1人あたりGDP(ドル、2022年)をアジアの国々と比べてみると、想像されているほどの差はないことがわかります

アフリカ26カ国の経済状況やビジネス環境、マクロ指標について、1カ国ずつ紹介しています
アフリカ国別情報はこちらから

アフリカで注目するべきBIG5は、南アフリカ、ケニア、ナイジェリア、
コートジボワール、エジプト

そして、日本企業にとって次に注目するべきNEXT5は、モロッコ、エチオピア、ガーナ、タンザニア、コンゴ民主共和国の5カ国です

BIG5の5カ国

南アフリカ
  • 南部アフリカ
  • (英語)
アフリカ最大の工業国。農業、小売、ヘルスケアもトップクラス。優良企業が多い
ケニア
  • 東アフリカ
  • (英語、スワヒリ語)
東アフリカの経済国。進取の気性に富み、新しいビジネスが生まれる場所。モバイルマネーが有名
ナイジェリア
  • 西アフリカ
  • (英語)
アフリカ最大のGDPの産油国。政治や治安のリスクがあれども、2億人を超える市場の大きさは随一
コートジボワール
  • 西アフリカ
  • (仏語)
仏語圏西アフリカの経済国。貿易の要であり都市化も進む。世界最大のカカオ産地
エジプト
  • 北アフリカ
  • (アラビア語、英語)
アラブと北アフリカの交接点。南アフリカに次ぐ工業国で東西アフリカに輸出。近年スタートアップがさかん

NEXT5の5カ国

モロッコ
  • 北アフリカ
  • (アラビア語、仏語)
王制がゆえ経済戦略を迅速に実行。自動車をはじめとする産業誘致に成功し欧州の工場に
エチオピア
  • 東アフリカ
  • (アムハラ語、英語)
1億人の人口を抱える期待国。産業基盤がある軽工業や農業の可能性。エチオピア航空はアフリカの成功モデル
ガーナ
  • 西アフリカ
  • (英語)
相対的に安定した政治。制度が整い政策の実行力も高い。金、石油、カカオの輸出国
タンザニア
  • 東アフリカ
  • (スワヒリ語、英語)
天然ガスや鉱業、農業といった資源に恵まれており、近年の政治体制の変更で経済が好転
コンゴ民
  • 中部アフリカ
  • (仏語)
アフリカの眠れる獅子。1億人の人口と資源を抱える。EVや脱炭素の潮流が飛躍の機会

各国の産業水準にあわせて、製造業や消費ビジネスのチャンスがあります

工業化の水準

製造業に関するビジネスチャンスがある国
レベル1
欧州等向けへの輸出や加工貿易を行う製造業が存在する。原料や素材、中間財についても国内の製造が可能

南アフリカ、エジプト、モロッコ、チュニジア

レベル2
消費地立地型製造業が存在し、自国で消費する日用品などが製造できる。原料は部品は輸入が多いが一部製造している

ケニア、ナイジェリア、エチオピア、アルジェリア

レベル3
産業集積度は低いものの、消費地立地型製造業が存在

タンザニア、ガーナ、コートジボワール、ウガンダ、セネガルなど

消費ビジネスの水準

消費ビジネスに関するビジネスチャンスがある国
レベル1
サプライチェーンやチャネルが近代化されており、商品によっては日本製品がそのまま販売できるだけの購買力がある

南アフリカ、エジプト、チュニジア

レベル2
都市部を中心に旺盛な消費力が存在。サプライチェーンは分散しており伝統的小売が中心であるものの、近代化を期待して多国籍企業が力を入れる

ケニア、ナイジェリア、モロッコ、コートジボワール、ガーナ

レベル3
高い消費力は都市部に留まるものの、人口の多さや成長性から期待されている

タンザニア、エチオピア、コンゴ民、ウガンダ、セネガルなど

アフリカに進出している日本企業の拠点数は563拠点

2019年現在、アフリカにはのべ563の日本企業の現地法人等*が存在しており、南アフリカ、ケニア、エジプト、モロッコ、ナイジェリアがトップ5カ国となっています。日本の各業界を代表するトップ企業はほぼなんらかの拠点をアフリカに持っており、一般的に想像されているよりも多くの日本企業がすでにアフリカに進出しています

*現地法人、支店、駐在員事務所、現地出資先の数
出所:アフリカビジネスパートナーズ発行「アフリカビジネスに関わる日本企業リスト2019年版

「アフリカビジネスに関わる日本企業リスト」 (無料)のダウンロード

アフリカの日本企業に関する7つの疑問

Q1. 日本企業の現地法人等が存在しない国は?
なし。54カ国すべてに現地法人が存在しています。
Q2. 日本企業の進出が多い産業は?
自動車、現地製造業向けの資機材の販売、資源や農作物の輸入、消費財の販売などが、日本企業に多い事業です。
Q3. アフリカに日本企業の工場はありますか?
自動車関連は、トヨタ、いすゞ、スズキ、日産、ホンダ、三菱自動車がアフリカで組み立て生産を行っており、これに伴い部品メーカーも製造を行っています。ワイヤーハーネスを作る住友電装、矢崎総業は複数国に複数の工場を設立し、多くの従業員を雇用しています。

消費財では、味の素、日本たばこ、YKK、大塚製薬、ユニ・チャームが現地で製造を行っており、サンヨー食品、三井物産、双日の出資先や合弁企業が食品工場を営んでいます。
Q4. アフリカで日本のブランドは知られていますか?
トヨタやホンダ、日産の他、ソニー、東芝、ヤマハ(楽器)といったブランド名は、アフリカでもよく知られています。アフリカでよく知られたブランドを「アフリカで強いブランドトップ100」としてまとめています。
Q5. アフリカで100億円以上の売上がある日本企業はありますか?
答え:あります。豊田通商はアフリカの売上が1兆円を超えています。コマツ、NECなども100億円を超えています
Q6. アフリカに代理店を設置している日本企業はありますか?
日本企業の多くは、代理店を通じて製品の販売を行っており、現地法人を設立している企業の何倍もの企業が代理店を設置しています。日本企業の代理店数は延べ約2,000社程度と見られます。
Q7. アフリカに住む日本人の数は?
2022年時点で6,229人が在留邦人として登録されています

アフリカの日本企業の進出数、進出国、進出事例のデータベースを、公開しています。
日本企業のアフリカ進出動向と事例

日本とアフリカの貿易関係

日本はアフリカ向けに、自動車や現地製造業向けの金属、資機材、化学品を輸出し、アフリカからは鉱物資源や農産物を輸入しています

日本からアフリカへの輸出(2022年)

主な輸出先(2022年)

アフリカから日本へ輸入(2022年)

主な輸入元(2022年)

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