モロッコ

モロッコ進出:王国が進める工業化・輸出産業強化が結実し「欧州の工場」へ。自動車や縫製での進出や財閥や大企業を通じた消費市場進出にチャンス

モロッコ

経済・ビジネス指標

正式名称
モロッコ王国
人口
3,843 万人(2025年、国連)
アフリカ11位
宗教
イスラム教(外務省)
使用言語
アラビア語、ベルベル語、フランス語(外務省)
GDP
1,826億ドル (2025年、IMF、名目ベース)
アフリカ5位
GDP成長率(経済成長率)
4.9%(2025年、IMF、実質ベース)
アフリカ26位
一人当たりGDP
4,842ドル (2025年、IMF、名目ベース)
アフリカ11位
GDP構成比
農業10.1%、工業24.1%、サービス54.1%(2024年、CIA)
消費者物価上昇率
0.8%%(2025年、IMF、年平均)
アフリカ46位
政府債務残高GDP比率
67.1%(2025年、IMF)
アフリカ17位
輸出額上位3品目
自動車(14.2%)、肥料原料(12.5%)、絶縁電線(11%)(2024年、OEC)
輸出額上位3カ国
スペイン(19%)、フランス(15.8%)、ドイツ(6.4%)(2024年、OEC)
輸入額上位3品目
精製石油(7.8%)、自動車部品(4.8%)、自動車(3.2%)(2024年、OEC)
輸入額上位3カ国
スペイン(16.3%)、中国(11.4%)、フランス(10.6%)(2024年、OEC)
直接投資額(フロー)
33.4 億ドル(2025年、UNCTAD)
アフリカ7位
工業競争力指数
世界45位、アフリカ1位(2024年、UNIDO)
都市人口・都市人口比率
3,007万人・78.2%(2025年、国連)
アフリカ11位
中位年齢(人口の中央の年齢)
30歳(2024年、国連)
中間層比率※
77.8%(2013年、アフリカビジネスパートナーズ)
ジニ係数
39.5(2013年、世銀)
アフリカ25位
現地日系企業数※
61社(2024年、アフリカビジネスパートナーズ)
アフリカ3位
加盟経済共同体
AMU(アラブ・マグレブ連合)
CEN-SAD(サヘル・サハラ諸国国家共同体)
Doing Business ランキング
世界53位、アフリカ3位(2020年、世銀)
腐敗指数
世界91位、アフリカ18位(2025年、世銀)
デモクラシー指数
世界91位、アフリカ15位(2024年、EIU)
リスク指数
カントリーリスク、Bビジネス環境A4(2026年、coface)
携帯電話普及率
97.0 %(2024年、ITU)
アフリカ2位
インターネット利用率
91.2 %(2024年、ITU)
アフリカ1位
銀行口座普及率
42.5 %(2024年、世銀)
モバイルマネー普及率
5.9 %(2024年、世銀)
次回の大統領選挙年
2026年

※「中間層比率」はこちら、「現地日系企業数」はこちらにアフリカ各国のデータと算出根拠が説明されています。

モロッコ進出ガイド

経済構造と事業環境

国王を頂点とする統治により工業化を推進

国王に権力が集中する権威主義国家。この統治体制が逆に功を奏して、治安の良さや長期的な産業政策への取り組み、投資の迅速な実行を可能としている。かつては農業とリン鉱石に依存する産業構造だったが、過去20年にわたり工業化と輸出主導型産業の育成に費やしてきた。

港湾、高速道路、鉄道、電力、工業団地といったインフラに積極的に投資を行い、OECD加盟国並みの水準を整えた。それを呼び水に、自動車、自動車部品、航空部品、電機部品などを製造する外資企業に輸出特区を用意して誘致した。EUや米国をはじめとした多くの国とFTA(自由貿易協定)を結び、輸出を増加させた。こうしてモロッコは、グローバルなサプライチェーンに組み込まれた工業国へと成長しつつある。2030年のワールドカップではスペイン、ポルトガルとともに共催地に選ばれ、インフラ投資をさらに加速させている。

「欧州の工場」として、輸出軽工業や自動車産業が集積

モロッコは地理的に欧州と近く、スペインとの間はフェリーで1時間もかからない。北部のタンジェ港からフランスのル・アーブル港までは、トラックのまま約4日で運ぶことができる。この地理的な近さは、ワイヤーハーネスなどの自動車部品や縫製品・衣料といった、軽工業製品の製造と輸出に有利に働いている。

自動車産業では、欧州メーカーのルノーとステランティスが欧州から生産機能を移す形でモロッコでの生産台数を増やし、欧州市場向けへの輸出拠点としている。ルノーにとって、海外生産拠点でもっとも台数が多いのはモロッコとなった。両社に供給する部品メーカーも集まっている。貿易摩擦により欧州や米国市場から締め出された中国自動車・EVメーカーおよび部品メーカーも、欧州や米国とFTAを結んでいるモロッコから迂回輸出しようと進出を進めている。

東欧の賃金が上がり、欧州で政治的混乱が起こるたびに、企業が製造拠点をモロッコに移す動きが見られ、モロッコはこの10年で「欧州の工場」として躍進した。欧州向けにの輸出を見据え、再生可能エネルギーやグリーン水素といったエネルギーへの投資も呼び込んでいる。

国営企業・公共事業と財閥に集中する経済構造

国営企業と財閥、大企業が実質的に優遇されており、各産業で高いシェアを占める。一方、民間企業や中小企業に対する金融支援や投資は十分といえず、大企業と公平に競争できる環境とはえいない。経済規模に比してスタートアップの誕生やその投資への動きも鈍い。一方で、財閥や大企業の寡占は、日本の大企業にとっては提携先を選びやすいという側面もある。

輸出産業に重点を置くあまり、国内向け産業とのギャップも生じている。モロッコはアフリカ最大規模の乗用車生産国だが、ルノーが生産する車の9割は輸出されており、国内販売は5万台程度に留まる。国内新車市場も大きい南アフリカとは対照的である。

自動車や縫製・衣料の欧州への輸出港となっているモロッコのタンジェ港

モロッコの代表的な企業

モロッコは世界最大のリン酸輸出国であり、これを支えるのがリン鉱石の採掘から加工、肥料の製造まで行う政府100%所有のOCPグループである。OCPは、農業や飼料、インフラといった関連事業を抱え、さらには海水淡水化、再生可能エネルギー、グリーンアンモニア、グリーン水素プロジェクトを積極的に推し進めている。アフリカ各国への肥料工場設立も進めており、モロッコ企業でもっとも「アフリカ進出」している企業といえる。

通信、金融、建設、不動産、製造業、農業、水産業といった他の主要産業も国有企業かロイヤルファミリーに関わる財閥が主要なプレーヤーであったり、株式を保有している。たとえば3大通信会社のうち、Maroc Telecomは政府、Orangeは財閥O Capital Group、Inwiは財閥Al Madaが出資する。Al Madaはモロッコを代表する銀行Attijariwafa Bankや、保険会社Wafa Assurance、国内最大手スーパーMarjane、セメントLafargeHolcimのモロッコ子会社にも出資する一大財閥である。他にもSanam Holdings、Saham Groupといった財閥が、製造業から流通小売まで傘下におさめている。

フランス企業は多く進出している。TotalEnergies、Engie、EDFはエネルギー分野で投資しており、ルノーとステランティスは自動車の組み立て生産を行う。航空産業ではAirbus、Safranが進出済みである。スペイン企業は農産物や水産物、食品、縫製での進出が多い。米国ではAptiv、Learといった自動車部品企業が進出している。

アフリカビジネスパートナーズは、事業領域や事業規模にあわせて、日本企業にマッチするモロッコのビジネス相手を紹介しています。

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モロッコに進出する日本企業

モロッコにはこの5年で新たに12社の日本企業が進出し、現在60社が超が進出している。日本企業のアフリカ進出拠点数で3位となった。モロッコの主要な輸出製品である自動車用ワイヤーハーネスにおいて、住友電工は6工場、矢崎総業は4工場、フジクラは2工場を稼働させ欧州に輸出を行っている。デンソー、ジェイテクト、日本精工、富士機工、三井金属アクト、ミツバ、AGC、関西ペイント、旭化成といった企業が自動車関連部品の製造拠点を持つ。一方、日系自動車メーカーはモロッコで生産を行っておらず、中古車を含め市場における日本車の存在感は薄い。

縫製・衣料品では、ユニクロ(ファーストリテイリング)がアフリカで初めてとなる委託工場をモロッコに設定した。YKKは2005年から事業を行っており、2023年には新工場の開設を発表している。モロッコの工場労働者の賃金は月300ドル程度であり、東欧の人件費に比して優位性がある。

三井物産は石炭火力発電、風力発電に投資するほか、現地の養鶏会社Zalar Holdingsへ出資している。丸善製茶は現地企業と合弁を設立し、日本から荒茶を輸出しモロッコで加工した上で、欧米の茶メーカー向けに輸出している。日本たばこ産業は2024年に新工場を開設すると発表した。コンテナ物流のONEも同年モロッコに合弁会社を設立した。

日本はモロッコから、タコやまぐろ、寒天などの海産物や冷凍いちごなどを輸入している。

モロッコに進出しているすべての日本企業については、「アフリカビジネスに関わる日本企業リスト」で紹介しています。

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モロッコの事業機会

モロッコの乗用車生産台数はすでに南アフリカを超えている。自動車関連事業にとっては、電気自動車やその部品も含めて、欧州需要向けの投資先としての重要度が高まる。

自動車産業以外でも、たとえば縫製・衣料品や食品などで、モロッコの地理的優位性やFTAを活用した欧州への輸出拠点になりうる。輸出特区を利用した製造の開始や現地企業への製造委託も可能である。丸善製茶のように、欧州のマーケットを確保しているモロッコ企業と組むことで、日本の製品の欧州輸出拠点とすることも可能である。

都市化が進み、若い世代では欧州に近い消費行動や商品選択が生まれている。2030年のワールドカップ開催に向けて街は急速に変わっており、日本における1964年の東京オリンピックの前のように、新しい消費行動が浸透しつつある。日本企業が得意なハイエンド製品や付加価値製品の販売機会もあるほか、そういった製品を製造する現地メーカー向けへの資機材の販売のチャンスがある。財閥や大企業との協業が可能であり、モロッコに適した進出方法である。

再生可能エネルギーやグリーン水素、インフラ投資や工業団地事業、海水淡水化といったプロジェクトにおけるPPP(官民連携)は、欧州企業が強いものの、日本企業にもチャンスがある。

関連情報:テレビ東京「モーニングサテライト」に出演し、モロッコについて解説しました

アフリカビジネスパートナーズはモロッコで、製造業向けの事業立ち上げ支援や消費材の販売支援、製造を開始するための支援や出資・買収のためのM&A支援を行っています。弊社が行っているモロッコでのコンサルティングサービスについては、モロッコ進出コンサルティングでご紹介しています。

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