ナイジェリア

潜在的な成長力を期待される人口2億人の産油国。カントリーリスクへの対応力を得るためにも早く事業を始めることが戦略となる

ナイジェリア

経済・ビジネス指標

正式名称
ナイジェリア連邦共和国
人口
2億1,854万人(2022年、世銀)
アフリカ1位
宗教
イスラム教、キリスト教、伝統宗教(外務省)
使用言語
英語、各民族語(ハウサ語、ヨルバ語、イボ語等)(外務省)
GDP
3,950億ドル(2024年予測値、IMF)
アフリカ2位
GDP成長率(経済成長率)
3.1%(2024年予測値、IMF)
一人当たりGDP
1,734ドル(2024年予測値、IMF、名目ベース)
アフリカ27位
GDP構成比
農業21.1%、工業22.5%、サービス56.4%(2017年予測値、CIA)
消費者物価上昇率
23.0%(2024年予測値、IMF、年平均)
政府債務残高GDP比率
41.3%(2024年予測値、IMF、年平均)
輸出額上位3品目
原油(74%)、石油ガス(13%)、窒素肥料(3%)(2022年、OEC)
輸出額上位3カ国
スペイン(13%)、インド(12%)、フランス(7%)(2022年、OEC)
輸入額上位3品目
精製石油(31%)、小麦(4%)、自動車(2%)(2022年、OEC)
輸入額上位3カ国
中国(32%)、ベルギー(11%)、オランダ(10%)(2022年、OEC)
直接投資額(フロー)
-1.9億ドル(2022年、UNCTAD)
工業競争力指数
世界97位(2021年、UNIDO)
都市人口・都市人口比率
10,711万人・52.0%(2020年予測値、国連)
アフリカ1位
中位年齢(人口の中央の年齢)
17歳(2022年、国連)
現地日系企業数
34社(2019年、アフリカビジネスパートナーズ)
加盟経済共同体
ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)
CEN-SAD(サヘル・サハラ諸国国家共同体)
中間層比率
73%(2018年、アフリカビジネスパートナーズ)
ジニ係数
35.1(2018年、世銀)
Doing Business ランキング
世界131位、アフリカ21位(2020年、世銀)
腐敗指数
世界150位、アフリカ40位(2022年、世銀)
デモクラシー指数
世界104位、アフリカ21位(2024年、EIU)
リスク指数
カントリーリスクD、ビジネス環境D(2022年、coface)
携帯電話普及率
102%(2022年、ITU)
インターネット利用率
35%(2022年、ITU)
銀行口座普及率
45%(2021年、世銀)
モバイルマネー普及率
9%(2021年、世銀)
次回の大統領選挙年
2027年

経済構造と事業環境

原油中心の産業構造

世界的な原油・天然ガスの産出国であり、OPEC(石油輸出機構)のメンバー国。GDP規模は南アフリカに次ぐアフリカ2位の4,000億ドルで、人口は2億人を超える巨大国である。原油がGDPに占める割合は10%未満であるものの、国家予算の60%、外貨収入の90%を原油収入に依存しており、世界の油価相場が国家財政や金融政策、ひいてはインフレ率に大きな影響を与えている。

国内製造するより原油で得た外貨で輸入するほうが安いという構造が、工業・製造業の発展を妨げてきた。国営企業、政府、金融機関等が原油産業に注力し利権としてきたことから、相対的に民間ビジネスである製造業や商業は制度的にも実務上も冷遇されてきた経緯がある。資源中心の経済は一部の資本家・企業に富が蓄積され、人脈で物事が決まる経済を生み出す。ネットワークの外にいる外資企業の投資に対しても時間や手間がかかることが多い。

巨大なインフォーマルセクターが動かす経済

消費ビジネスの基盤となる人口は2億人を超えており、中位年齢は17歳(日本は48歳)。2050年には人口は4億人となって米国を抜き、世界3位になると予測されている。都市化率は高く、人口の半分にあたる1億人は都市で暮らし、雇用がなくともなんらかの小商いや取引で生計を立てている。この少額・多人口のダイナミックなインフォーマル経済(統計や税務で捕捉されない非公式な活動)が、ナイジェリアの民間経済の基盤となっている。サプライチェーンも、青空マーケットやパパママショップ、行商といったインフォーマルセクターで構成されている。

課題と好機に恵まれた」国

アフリカには人口規模が中程度の国が多いなか、ナイジェリアの人口の多さとその成長性はどの産業領域にとっても魅力である。原油や天然ガスのみならず、農業資源などにも恵まれており、潜在的なビジネスチャンスは膨大に眠っている。

しかしながら政治的な課題により、あらゆる面で効率化や組織化が進んでいない。よく知られるように、産油国であるものの国内の製油所が稼働していないため、原油を輸出し石油製品を輸入していることから外貨が流出し、国家歳入が油価と為替に大きく影響を受け安定しない。財源不足は道路、港湾、発電・送電といった基礎的なインフラの整備を遅らせ、都市部でも1日12時間以上停電し、最大都市ラゴスの交通渋滞は深刻である。昨今では油田地域との対立により原油輸出量も減少し、為替も安定しない。製造業にとっては輸送や自家発電、原料輸入コストがかさみ、小売にとっては末端価格の安定や効率的なサプライチェーンが妨げられている。一方で、現政権はこれら積年の課題の解決に取り組んでおり(参照:「動かぬ巨人」ナイジェリアにポジティブな異変。ビジネス環境改善なるか)、またこの状況をむしろ課題解決の好機と捉え、新しく事業を開始するスタートアップや、そこに投資を行う企業が存在する。また、外貨不足やインフラ不備だからこそ成り立つ事業とその好機も存在している。

現地の代表的な企業

資源国によくあるように金融業が強く、さらに金融や貿易を押さえた上で、製造業や農業、物流、自動車販売、ITビジネスといった事業を傘下に抱える財閥が複数存在する。人口が多く取り扱う物量も大きいため、食品や日用品にも大企業が多く、「アフリカ売上高トップ500企業リスト」ではナイジェリアの消費財企業は10社前後ランク入りしている。UAEやレバノンなどの中東諸国やインドや東南アジアなどアジア諸国を出自としたり、関係性が深い企業が多いのもナイジェリアの特徴である。

セメントや小麦粉などの資本集約型製造業を営むDangote Groupは、ナイジェリア人創業者のアリコ・ダンゴテ氏が一代でアフリカ随一の富豪に成り上がった成功ストーリーを持つ企業グループである。2024年には民間初となる巨大製油所を開設した。フル稼働すれば、ナイジェリアが石油製品の輸入国から輸出国へと転じることが可能となり、国家経済のゲームチェンジャーとなりえると期待されている。1996年にインドネシアのSalim GroupとシンガポールのTolaramの合弁企業から開始したTolaram Africaは、麺を食べる習慣がなかったナイジェリアでインスタントヌードルのインドミーを国民食といっていいまで普及させた企業で、現在は外資FMCGとも提携し食品や日用品に関する事業を傘下に持つ他、工業団地の開発も行っている。

コカ・コーラ、ペプシコ、ネスレ、ユニリーバといった外資企業は70年以上ナイジェリアの地で事業を行っている。ビジネス環境が不安定なナイジェリアにおいては経験に基づくその対応力が鍵となるため、「事業経験年数が競争要因」といえる面があり、経済が悪化するなど変化が起こるほど経験が長い企業がよりシェアを高めてきた経緯がある。

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日本企業の事例

横河電機は石油産業向けに制御システムを販売しており、東洋エンジニアリングは肥料プラントの建設を受注している。他は消費者向けの事業が多く、本田技研工業は80年代から二輪の生産と販売を行い、いまは四輪も生産・販売している。味の素は90年代からうま味調味料のリパック製造と販売を行っており、2016年に現地食品大手Promasidorに資本参加した。サンヨー食品は三菱商事が出資するOlamとインスタントヌードルを製造販売する合弁を立ち上げており、大塚製薬はポカリスエットを製造販売するべく工場を建設中である。ダイキンは代理店を通じてエアコンを組み立て販売している。ソニーミュージックエンターテイメントはナイジェリアに現地法人を立ち上げている。化学メーカーのカネカやデンカは、女性が使うヘア製品(ヘアエクステンション)の原料として合成繊維を輸出している。

日本からナイジェリアにはさばが輸出されている。ナイジェリアから日本へはごまが輸入され、ごま油として食卓に並んでいる。

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事業機会

「事業経験年数が競争要因」であるため、早くナイジェリアで事業を開始することが、ナイジェリアが世界3位の人口大国となる2050年に向けての一番の戦略である。とくに消費財ビジネスは、多国籍企業を競合と目してグローバルに戦うためにはナイジェリアを無視することは不可能で、次の10年を消費者と市場を理解する期間と位置づけ、早く開始することが肝要である。前述のインドミーや携帯のTranssion、二輪のBajajにみるように、ナイジェリアでゼロから始めて短期間で急成長した企業もあり、当てれば大きいのがナイジェリア市場である。

資金的な余裕がある大企業も多く、現地製造業向けに機械や機器、資材を販売することにもチャンスがある。自動車や農機など、政府の政策実行や予算を期待する産業にチャンスが到来するにはまだ時間がかかりそうである。政治や経済に予測できない不確実性が大きいのがナイジェリアの難しさだが、政治の改善に期待したい。

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