南アフリカ

アフリカ最大の工業国で経済大国。消費の成熟度も高い。低成長が続き課題山積みであるものの、日本企業がまだ開拓しきれていない事業進出や買収の価値と機会が多いに残されている

南アフリカ

経済・ビジネス指標

正式名称
南アフリカ共和国
人口
5,989万人(2022年、国連)
アフリカ6位
宗教
キリスト教(約80%)、ヒンズー教、イスラム教等(外務省)
使用言語
英語、アフリカーンス語、バンツー諸語(ズールー語、ソト語ほか)(外務省)
GDP
3,732億ドル(2024年予測値、IMF、名目ベース)
アフリカ1位
GDP成長率(経済成長率)
0.9%(2024年予測値、IMF、実質ベース)
アフリカ51位
一人当たりGDP
5,975ドル(2024年予測値、IMF、名目ベース)
アフリカ7位
GDP構成比
農業2.8%、工業29.7%、サービス67.5%(2017年予測値、CIA)
消費者物価上昇率
4.9%(2024年予測値、IMF、年平均)
政府債務残高GDP比率
75.4%(2024年予測値、IMF、年平均)
輸出額上位3品目
金(15%)、白金(13%)、石炭練炭(9%)(2022年、OEC)
輸出額上位3カ国
中国(16%)、米国(7%)、ドイツ(7%)(2022年、OEC)
輸入額上位3品目
精製石油(15%)、自動車(4%)、原油(4%)(2022年、OEC)
輸入額上位3カ国
中国(21%)、ドイツ(9%)、インド(7%)(2022年、OEC)
直接投資額(フロー)
90.5億ドル(2022年、UNCTAD)
工業競争力指数
世界49位(2021年、UNIDO)
都市人口・都市人口比率
3,955万人・67.4%(2020年予測値、国連)
アフリカ4位
中位年齢(人口の中央の年齢)
27歳(2022年、国連)
中間層比率
41.1%(2014年、アフリカビジネスパートナーズ)
ジニ係数
63(2014年、世銀)
アフリカ51位
現地日系企業数
141社(2019年、アフリカビジネスパートナーズ)
加盟経済共同体
SADC(南部アフリカ開発共同体)
SACU(南部アフリカ関税同盟)
Doing Business ランキング
世界84位、アフリカ6位(2020年、世銀)
腐敗指数
世界72位、アフリカ8位(2022年、世銀)
デモクラシー指数
世界47位、アフリカ4位(2024年、EIU)
リスク指数
カントリーリスクC、ビジネス環境A4(2022年、coface)
携帯電話普及率
167%(2022年、ITU)
インターネット利用率
75%(2022年、ITU)
銀行口座普及率
84%(2021年、世銀)
モバイルマネー普及率
37%(2021年、世銀)
次回の大統領選挙年
2024年

経済構造と事業環境

アフリカ最大の経済国で工業国。産業成熟度は高い

金、石炭、プラチナといった鉱物資源や、穀物、果物といった農業資源に恵まれ、その加工を行う資本集約型製造業と輸出が主要産業として経済を牽引してきた。1948年に法制化されたアパルトヘイトは欧州からの技術移転と労働力を提供し、道路、鉄道、港湾、電力といったインフラの整備とともに工業化が進んで1950年代には近代産業が発展した。石油化学や鉄鋼といった重工業も生まれた。M&Aがさかんで企業の規模化が進む傾向があり、南アフリカから世界に進出した企業も多数存在する。南部アフリカ随一の経済国であるため、周辺南部アフリカの国々の市場を支配し「南ア経済圏」を形成しており、人口以上の市場規模がある。

一方、1990年代以降の投資不足や経営の失敗により、近年は電力、港湾といったインフラや航空など国営企業が混乱をきたしている。豊富な石炭を用いてかつては世界一安く供給され、工業化の進展に貢献した電力は計画停電が行われるような供給不足に陥った。加えて世界的な脱炭素の潮流は、石炭立国である南アフリカ経済に打撃となっている。

先進国型の消費文化

早くから国中の物流インフラが整ったことから、都市型の消費生活の普及も早かった。スーパーマーケットは日本とほぼ同時期に誕生。モールの数は日本に続く世界第5位である。人口の67%が都市に住み、モータリゼーションも進んでいるため、どのような地方に行っても店舗がある。一人あたりGDPは6,427ドルと、タイ(7,650ドル)に続く水準で、大半の東南アジアの国より高い。単純労働でも賃金は月5~8万円程度であり、他のアフリカの国々と比較すると住環境や所有物、生活の水準も高い。富裕層から貧困層まで先進国型の生活スタイル、食生活が普及している。しかしながら所得格差を示すジニ係数が世界で最も高いなど貧富の差は大きく、今も土地の70%は白人が所有するなどアパルトヘイト時代からの資本家に富は偏在している。

M&Aのための環境は整っているが競争を妨げる要素も

資源国であることから金融が発展しており、M&Aや投資のための法制度や支援産業も整う。買収に値する現地優良企業も多く、外資によるM&Aはアフリカのなかではやりやすい。直接投資額もアフリカのなかで桁外れに大きい。ただし競争当局の権限が強く、独占的な買収は阻止される。

1990年にアパルトヘイトが撤廃されて以降政権をとる与党ANCは、その誕生の経緯から民主的な政策をとっており、南アフリカはアフリカのなかではデモクラシー指数は高く、腐敗指数は低い。アパルトヘイトにより生み出された格差を是正するため、福祉による支援を取り入れ、黒人経済力強化政策(BEE)を導入してきた。しかしこれら政策は、逆に失業率の上昇や利権の固定化を生み出す結果となっており、新規参入企業の成長や所得階層の移動が自由な経済の達成は道半ばとなっている。

現地の代表的な企業

アフリカの大手企業は南アフリカ企業で占められており、「アフリカにおける売上高トップ500企業リスト」の上位には南アフリカ企業が並ぶ。石油化学のSasol、医薬品のAspen Pharmacare、病院チェーンのLife Healthcare、Netcare、保険のDiscovery、金融のOld mutural、包装のMondi、製紙のSappiなど、世界に進出しシェアを獲得した南アフリカ企業は多い。NTTが買収したディメンションデータも欧州市場で強いシステムインテグレーターだった。石油化学産業トップのSasolは、石炭と石油からの脱却を急ピッチで進めており、グリーン水素の商業化を目前としている。メディア事業から出発したNaspersはインターネット事業の目利きに強い投資会社に変貌し、中国Tencentや印Flipkartに投資した企業として知られる。金融や投資は南アフリカが強い領域で大手企業も多い。

通信会社MTN、Vodacom、金融Standard Bank、保険Sanlamなど、アフリカ各国で事業を展開する汎アフリカ企業も多い。流通小売では、Shoprite、Pick n Pay、Spar Group、Woolworthが4大企業で、米ウォルマートが買収したMassmartがこれに続く。食品製造業ではRCL FoodsとTiger Brandsが2大企業で、3位のPioneer Foodsは2019年に米ペプシコが買収した。

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日本企業の事例

トヨタ自動車は1962年から南アフリカで組立生産を開始し、欧州への輸出拠点としてきた。トヨタ自動車に納入するデンソー、トヨタ紡織、豊田合成なども進出し、トヨタ車は南アフリカ市場においてもトップシェアを獲得しており、近年はハイブリッド車の生産・販売に注力している。スズキはインド等で生産した車両を南アフリカで販売し、シェアを急速に伸ばしている。コマツは1960年代から建設・鉱山機械を販売してきた。住友ゴム工業はダンロップタイヤを製造販売している。現地製造業向けでは日本電産、ファナック、オムロンらが現地法人を置いて現地製造業向けの販売を行う。医療の水準が高い南アフリカ向けに、富士フイルムをはじめとする医療機器メーカーが販売を行っている。富士フイルムはインスタントカメラのチェキも南アフリカで販売しており、人気となっている。

NTTは2010年に買収したディメンションデータを橋頭堡としてグローバル化を進め、現在ではアフリカに回帰し南アフリカでデータセンターを開設した。関西ペイントは建築用塗料への展開とグローバルでの競争力を強化するため、2011年に塗料大手Freeworld Coatingsを買収した。NECは2018年にシステムインテグレーターXONを子会社化することで、アフリカ各国への展開を実現している。

南アフリカから日本へは、自動車の触媒に用いるプラチナが輸入されるほか、グレープフルーツや柑橘類、果汁、冷凍果実が輸入されている。大手商社はこれらトレーディング業務を行うとともに、南アフリカにアフリカを統括する拠点を置いている。進出日本企業数はアフリカ内でトップであるものの、増加ペースは鈍い。日本企業は南アフリカ市場の事業機会を掴みそこねているという見方がある。

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南アフリカの事業機会

南アフリカのマクロ経済は2010年代以降低成長を続けており、政治的にも課題が山積みである。また、欧州企業が古くから進出しており産業によっては寡占が進んでいる。一方で、日本企業と相性が良い優れた現地企業が多く存在し、製造業では事業承継問題も存在するなど、買収の価値と機会は多い。NTTがグローバル化を進め、NECがアフリカ進出を進めたように、南アフリカ企業の買収を立脚点として展開地域を拡大する戦略が描ける買収先はまだ残っている。

アフリカで一番の工業国であるため、現地の製造業企業に向けた機械、機器、資材、原料の販売には機会がある。代理店を置くだけでなく、一歩踏み込み営業活動を行うことで、優良顧客を獲得することが可能となる。消費者向けビジネスでは、アフリカの他の国に比べて流通が整備されているのが大きな利点である。販売や販促のデジタル化もこの数年で進み、2024年にはamazonがeコマースを開始する。日本や欧州マーケットと似た嗜好や購買力の消費者も存在することから、商品や販売方法の横展開が可能な点は、もっと着目されるべきだろう。

スタートアップでは、ソーシャルやリープフロッグといった「アフリカっぽい」スタートアップは少ないものの、技術に裏付けされた優良スタートアップが存在し、調達額を集めている。現地大企業が積極的にスタートアップを買収しており、エグジットが比較的容易な点も、南アフリカのスタートアップ投資の魅力である。

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南アフリカに進出する方法

法人設立

南アフリカに進出するにあたっての法人形態は現地法人、支店、駐在員事務所がある。特定業種*を除いて、外資の進出規制や株式保有比率の規制はなく、日本企業100%出資による法人設立が可能。駐在員事務所は営業活動はできない。現地法人の場合の取締役数は1人でも可能で、外国人のみでも良い。資本金額の規定はないが、事業内容に応じた慣習的な金額が存在する。正しいステップを踏めば、法人設立は数日で完了する。

法人口座の開設は時間がかかることが多い。南アフリカの代表的な銀行としては、Standard Bank、元バークレイ銀行であるAbsa Bank、First National Bank(FNB)、Nedbankが挙げられる。 外資の金融機関としては、CitibankやStandard Chartered、Société Généraleなどが南アフリカで営業を行っている。Standard BankやEco Bank、Access Bankといったアフリカ複数国で営業するアフリカ系銀行も利用できる。日系の金融機関はみずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行が出張所を置いている。

*銀行、保険、通信、鉱業については、政府の許可が必要となる

BEE(黒人経済力強化政策)対策

南アフリカでは、アパルトヘイト時代に不利益を被った主として黒人の人たちに対する格差是正のためのアファーマティブアクションとして、BEE(Broad-Based Black Economic Empowerment、黒人経済力強化政策)が導入されている。黒人の経済的地位向上に対する企業の貢献度を所有権、経営支配、技能開発、企業およびサプライヤーの発展、社会開発の5要素それぞれで点数化(スコア)し、その合計点数により企業をレベル1からレベル8までに格付けするもので、政府や公共事業の応札優先条件として用いられている。民間取引では条件でないものの、スコア化の5要素のうち1要素中の1項目に「優先調達」があり、黒人が51%以上の株式を保有する企業などからの調達の割合に目標数値が設定されていることや、BEEレベルの高い企業からの調達額は多く算入できることから、取引相手によってはサプライヤー選定の判断基準に使うことがある。

日本企業においても、南アフリカで展開したい事業の内容によっては事業成長のためBEEのスコアの確保が必要となるため、法人を設立するタイミングで、得たいBEEレベルにあわせて株主比率や取締役の任命、法人のサイズ、現地企業との提携や原料調達先、サプライチェーンの座組みなどについてあらかじめ検討し工夫を行う必要がある。

税制

法人税の基本税率は27%で、売上額が55万ランド以下の小企業や100万ランド以下である零細企業と定義される場合はそれより低くなる。日本の消費税にあたるVAT(付加価値税)は2024年現在15%で、課税対象の商品・サービスの供給額が年間100万ランドを超える場合に納税義務が生じる。ほかに品目に応じてExcise Duty(物品税)が課税される。また、企業は税務登録から21日以内に南アフリカIDを保有する個人をPublic officerとして指名することが義務付けられている。

所得税は累進課税で、たとえば一般的な工場労働者の年収相場である237,101~370,500ランド(2024年4月現在の為替で199万円~310万円)で26%、オフィスワーカーの相場である370,501~512,800ランド(310万~430万円)で31%、673,001~857,900ランド(同560万~720万円)で39%となり、最高税率は45%である。ほかに事業者は雇用にあたってUIF(失業保険)、SDL(技能開発税)、COIDA(労災)を負担するが、金額としては大きなものではない。なお、日本と南アフリカの間には二重課税防止協定が締結されている。

労働許可・雇用

外国人が南アフリカで労働を行うためにはWork permit(労働許可)の取得が義務付けられている。駐在員の多くはICTビザとよばれる企業内転勤ビザ (Intra Company Transfer Visa)を取得しており、これは4年間に限り取得が可能なものとなる(運用上は1回のみの更新、計8年間が可能)。他に、技能を持つ者のみに認められるクリティカルスキルビザ(Critical Skill Visa)と一般労働ビザ(General Work Visa)が存在するが、近年この取得は難しくなってきている。手続きは日本の南アフリカ大使館か南アフリカに所在するVISA Facilitation Servicesで行う。

外資が設立した法人では、南アフリカ人を雇用することが原則的に必要とされている。従業員が50人以上もしくは一定の売上高以上の企業は一定の割合で南アフリカ国民の雇用が求められている。労働法に関しては日本と大きく変わらず、解雇、残業代の割増支払い、法定休暇などの労働者の権利が定められている。政府が規定する最低賃金は低く一般企業が雇用する際の相場とはかけ離れており、相場は掃除やホテルスタッフ、レストランの給仕で月収5,000ランド~1万ランド、工場労働者で1~2万ランド、オフィスワーカーで2万~5万ランド程度となっている。

治安

治安リスクは、(1)テロ、暴動、紛争対立といった国家の脆弱性リスク、および(2)誘拐、強盗、スリひったくりといった犯罪リスクに分けられる。南アフリカでは暴動はときどき発生しているが、テロや紛争はほぼ発生しない。暴動には理由があり、いきなりは発生することはなく必ず前兆があるため、ニュースなどで把握することが対策となる。後者の犯罪は、経済発展にともない犯罪者の水準も上がる一般的な傾向どおり、アフリカでもっとも高度な犯罪が組織化された形で実行されている。住居への侵入と移動時の強盗や襲撃が二大リスクであり、防犯カメラや防止柵の設置、歩かず自動車で移動し窓を開けないといった基本的な対策のほかに、狙われないためにロープロファイルを心がけることが重要である。ただしこういった犯罪リスクが高いのは人が集まる都市部や中心部であり、また同じ市内においても犯罪が起こりやすい地域とそうでない地域に分かれている。自己の治安対策能力にあわせて居住や訪問地域を選ぶことで防ぐことができる。

法人設立や口座開設、BEE対策のご提案や取締役や従業員のリクルーティング、税務登録や労働許可取得のお手伝いも行っております。南アフリカの産業実態やビジネスチャンス、進出方法なども含め、ご質問やご依頼などありましたら、以下からお問い合わせください。

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