エジプト

エジプト進出:人口1億人を抱える工業国、製造業および製造業を顧客にするビジネスに機会。「日本びいき」も追い風なるか

エジプト

経済・ビジネス指標

正式名称
エジプト・アラブ共和国
人口
1億1,837万人(2025年、国連)
アフリカ2位
宗教
イスラム教、キリスト教(コプト派)(外務省)
使用言語
アラビア語、英語(外務省)
GDP
3,646億ドル (2025年、IMF、名目ベース)
アフリカ2位
GDP成長率(経済成長率)
4.4%(2025年、IMF、実質ベース)
アフリカ28位
一人当たりGDP
3,379ドル (2025年、IMF、名目ベース)
アフリカ17位
GDP構成比
農業13.7%、工業32.6%、サービス48.9%(2024年、CIA)
消費者物価上昇率
20.4%(2025年、IMF、年平均)
アフリカ7位
政府債務残高GDP比率
86.8%(2025年、IMF)
アフリカ6位
輸出額上位3品目
精製石油(12.4%)、金(6.3%)、窒素肥料(3.2%)(2024年、OEC)
輸出額上位3カ国
サウジアラビア(10.9%)、トルコ(8.5%)、アラブ首長国連邦(6.2%)(2024年、OEC)
輸入額上位3品目
精製石油(9.7%)、石油ガス(5.9%)、小麦(5.2%)(2024年、OEC)
輸入額上位3カ国
中国(17%)、サウジアラビア(8.3%)、米国(7.3%)(2024年、OEC)
直接投資額(フロー)
154.5 億ドル(2025年、UNCTAD)
アフリカ1位
工業競争力指数
世界67位、アフリカ3位(2024年、UNIDO)
都市人口・都市人口比率
11,536万人・97.5%(2025年、国連)
アフリカ2位
中位年齢(人口の中央の年齢)
24歳(2024年、国連)
中間層比率※
73.8%(2019年、アフリカビジネスパートナーズ)
ジニ係数
31.5(2017年、世銀)
アフリカ3位
現地日系企業数※
61社(2024年、アフリカビジネスパートナーズ)
アフリカ3位
加盟経済共同体
COMESA(東・南アフリカ市場共同体)
CEN-SAD(サヘル・サハラ諸国国家共同体)
Doing Business ランキング
世界114位、アフリカ15位(2020年、世銀)
腐敗指数
世界130位、アフリカ29位(2025年、世銀)
デモクラシー指数
世界128位、アフリカ32位(2024年、EIU)
リスク指数
カントリーリスク、Cビジネス環境C(2026年、coface)
携帯電話普及率
97.4 %(2024年、ITU)
アフリカ1位
インターネット利用率
74.6 %(2024年、ITU)
アフリカ8位
銀行口座普及率
35.3 %(2024年、世銀)
モバイルマネー普及率
15.6 %(2024年、世銀)
次回の大統領選挙年
2030年

※「中間層比率」はこちら、「現地日系企業数」はこちらにアフリカ各国のデータと算出根拠が説明されています。

エジプト進出ガイド

経済構造と事業環境

政府と軍が強い権威主義国家、地政学的な重要度が高い

強権的な政治が行われており、アラブの春を経てさらに政権と軍の権力が定着した。多くの主力事業が政府と軍が所有する国有企業となっており、公共事業が多い。地政学的に重要な地域であるからこそ強い交渉力を持ち、大国主義、汎エジプト主義、イスラム主義が標榜され、排他的な面がある。外資投資においてもエジプト資本が必要な事業や、政府との関係構築が必要な事業が存在しており、自由度は高いとはいえない。貿易上も保護的な政策により輸入を禁じる品目も多く、外資による輸出販売に規制がある。ただし、製造業や輸出産業といった、政府が外資投資を求める産業については協力的な姿勢がとられる。

欧州と中東とアジアを結ぶ地政学的要衝に位置し、政治、経済、また物流の各面で重要性が高いことから、常に欧米諸国やロシア、中国、湾岸・アラブ諸国といった大国との協調と交渉を通じて国益を確保してきた。とくにサウジアラビア、UAEなど湾岸諸国との関係は政治的・経済的に深く、人の往来も多い。国内の政治や経済が不安定となったときには、これら「兄弟国」やエジプトの安定を求める諸外国が影に日向に支援し、安定性を支えている。

人口1億人を超える工業国。コスト競争力はあるが価格競争も厳しい市場

エジプトのGDPは南アフリカに次ぐアフリカ第2位だ。石油や天然ガス資源を有し、補助金の影響もあり、電気代やガス代は安い。約1億人の人口を抱え、水源周辺に人口が集中することから都市部の人口密度は高く、都市人口の規模はアフリカ2位と、消費者も労働力も多く抱える。最低賃金は8,000エジプトポンド(約150ドル)とアフリカのなかでも低い水準だ。

こうしたエジプトの事業環境により、現地製造業はコスト競争力が高い。国内市場向けはもとより、輸出においても、欧州に近い立地も優位性となり、縫製・衣料品や食品加工、ワイヤーハーネスといった価格競争力が求められる製品を主要輸出品としている。鉄鋼や化学といった資本集約型の製造業が国内に存在するため、国内で原料を調達できることも競争力を高めている。工業化の水準は南アフリカに次ぐ水準である。一方で、同じ事業環境は、消費者の可処分所得の低さも招いている。国内市場向けの、とくに大量生産品においては、価格競争力の確保が求められる。

インフラ整備と工業化が進む

強権的な政治であるからこそ大型の公共インフラ投資が早く進む。工業団地や新都市、道路の建設や、石油・天然ガス、また気候変動対策を背景とする再生可能エネルギーやグリーン水素・アンモニアへの投資が矢継ぎ早に行われている。アフリカ大陸では南アフリカに続く工業国で、石油化学や鉄鋼、肥料などの重化学工業が存在し、加工貿易による製品が欧州や中東へ輸出されている。縫製やワイヤーハーネスなどの輸出軽工業もさかんで外貨収入を支える。食品や日用品、家電や医薬品などの内需向け製品は多くが国内で製造され、1億人を超える人口を賄っている。工場労働者の賃金は120~200ドル程度と安く(2025年4月改定の最低賃金は7,000エジプトポンドで、約140ドル)、電気やガソリンも補助金により安価。大企業のみならず町工場や中小企業が無数に存在し、工業化を支えている。

エジプトは、東・南部アフリカの国々19カ国が加盟する経済同盟COMESA (東・南アフリカ市場共同体。南アフリカは加盟国でない)に加盟しており、地域で一番の工業国であるエジプトで製造された製品がアフリカの加盟国に免税で輸出されている。

エジプトの代表的な企業

国有企業は建設、不動産、鉄鋼、化学・肥料、物流、金融・保険、ホテルなどあらゆる産業領域に存在している。スエズ運河の物流は国有企業Suez Canal Authorityが管理する。民間企業においても、公共インフラ事業の需要が多いため、Orascomなどの建設会社、Ezz Steel Companyなどの鉄鋼、Elsewedy Electricなどの送配電機器に大企業が複数存在している。日立製作所がABBのパワーグリッド部門を買収して設立したHitachi energyも大手の1社。医薬品は外資が多く進出しており、GSK、Pfizer、Novartis、Merck、Bayer、Sanofi、AstraZenecaなどが工場を置いている。

家電メーカーではRaya Holdingや日本企業と縁が深いElaraby、食品ではEdita Food IndustriesやArabian Food Industries Company、Juhayana Food Industriesが大手となる。流通小売では、UAEのMajid Al Futtaim Egyptがフランチャイジーとして運営するCarrefourや、サウジアラビア資本のAl Othaim、UAE資本のSpinneysが存在する。

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関連記事:エジプトに関するビジネスニュース(アフリカのビジネスニュース)

エジプトに進出する日本企業

エジプトでは、60社を超える日本企業がすでに事業を行っており、日本企業の進出数で、3位につけている。新しく進出する企業が増えているというよりも、長年エジプトで事業を行っている企業が多く存在するのが特徴である。

日立製作所は2018年にABBのパワーグリッド部門を買収した。ABBはアフリカ、なかでもエジプトで強く、新会社日立エナジーが公共事業を含めた事業基盤を引き継いでいる。軽工業の輸出における競争力を活用し、住友電工や矢崎総業(準備中)はワイヤーハーネスを製造して欧州の自動車工場に輸出し、YKKはエジプトの輸出縫製工場にファスナーを納めている。

内需向けには、シャープ、ソニー、セイコー、日立製作所が前述のElarabyと提携して、液晶テレビや白物家電の製造や販売を行っている。ヘルスケア領域では、70年代から輸液や処方薬を製造してきた大塚製薬が、2022年に健康飲料やサプリメントの製造も開始すると発表した。武田薬品工業はエジプト政府のがん治療向上に協力する。エムスリーはエジプトの医薬品配送スタートアップに投資している。

ユニ・チャームはおむつと生理用品を製造し、エジプト工場からCOMESAによる免税を使って他のアフリカに輸出している。日本たばこ産業は現地のタバコ会社を買収して製造販売を行う。中古車の輸入を原則禁止しているエジプトでは新車の販売割合が高く、トヨタ自動車、いすゞ自動車、スズキ、日産自動車が組み立て生産を行っている。

日本はエジプトから石油や天然ガスを輸入している。果物や果汁の輸入元でもある。

エジプトに進出しているすべての日本企業については、「アフリカビジネスに関わる日本企業リスト」で紹介しています。

関連記事:エジプトにおける日本企業の動き(今月のアフリカにおける日本企業の動き)

エジプトで売られる東芝やシャープの液晶テレビや白物家電
エジプトで売られる東芝やシャープの液晶テレビや白物家電(ABP撮影)

エジプトの事業機会

インフラ建設や発電、医療といった公共事業に関わるビジネスチャンスが存在する。とく日本企業にとっては、これら公共事業に関わる国有企業や公共事業を受注した民間企業への機械や機器、原材料の販売が機会となる。再生可能エネルギーや次世代エネルギー、電気自動車、廃棄物処理といった気候変動や環境関連事業は、近年政府が力を入れている領域である。強権的な国家であるがゆえに、政府プロジェクトは進みが早い。

1億人の人口を対象とする消費財ビジネスにもチャンスがある。安価なコストを用いて現地で製造される製品と競争するには、現地製造が欠かせない。エジプトは、多くの消費財を原料から最終製品までを一環して作ることができる国であり、工業団地も比較的整っている。現地企業との合弁などを用いながら工場を設立したり、買収による製造業での参入も候補となる。

さらに昨今は、政府が外資の製造業誘致を強力に推し進めている。2022年以来エジプト政府は、投資優遇策として、政府戦略に合致する投資に対して許認可手続きを迅速に進める「ゴールデンライセンス」を与える取り組みを開始した。輸出製造業はこのライセンスを取得しやすく、エジプトから輸出を行う複数の日本の製造業企業も取得するなど、独自資本での製造業進出のハードルは低くなった。中国や韓国の縫製・アパレルメーカーは、エジプトを次の生産地と定め投資を加速させている。食品、日用品の他、電気・機械メーカーが製造拠点への投資を発表し、自動車部品も進出を開始した。

エジプト国内での販売のみならず、ケニアやエチオピア、タンザニアといったCOMESA加盟国や、ナイジェリアやガーナといった西アフリカ、チュニジアやモロッコといった北アフリカへの輸出拠点としてエジプトを位置づけることも可能である。地理的に近い欧州に向けて、軽工業品や加工貿易の輸出の拠点としてエジプトで製造を行うこともできる。

エジプトは、日本への信頼や評価が根底にある、日本のブランド力がもっとも高いアフリカの国だといえる。日本のアニメや漫画の人気も高く、子どもから大人までファンがいる。

関連記事:アフリカにおける日本企業の認知率と日本のイメージ

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