
(調査レポート)アフリカにおける日本企業の認知率と日本のイメージ(2025年版)
日本企業の知名度は?日本と中国どちらのブランドとして認知されているのか。日本へ持たれているイメージは?

アフリカビジネスパートナーズの自主調査として、日本企業の認知率と日本のイメージについて調査しました。
調査対象国は、南アフリカ、ケニア、ナイジェリア、エジプト、モロッコ、コートジボワールの6カ国、調査した企業名は次の30社となります。調査レポートはこのページの最後で無料でダウンロードできます。
調査対象企業名 計30社
トヨタ、スズキ、いすゞ、ホンダ、ヤマハ発動機、ヤマハ(楽器)、ソニー、キヤノン、パナソニック、東芝、ニコン、シャープ、ダイキン、サントリー、大塚製薬、味の素、資生堂、ソフトバンク、楽天、任天堂、ユニクロ、ユニ・チャーム、JICA
以下は日本企業ではないが、対照群として加えた
Alibaba、LG、Samsung、Tecno(携帯)、MINISO(名創優品)、SHEIN(アパレル)、Softcare(おむつ)
調査結果ハイライト
アフリカは親日なのか
「アフリカは親日なのか?」-よく聞かれる質問です。アフリカにおける日本のイメージはとても良く、初対面の人から日本人であることで歓迎されることの方が多いです。良くも悪くも歴史的な関係性が強くないため、ビジネスにおいて過去の遺恨などによる障壁を感じることはありません。ただし、その裏返しで、日本は身近な存在ではありません。日本のイメージは、「技術に優れている」「戦後の経済発展」「規律が効いた人々」といったものですが、そのイメージは長らく更新されていないように見えます。「よく知らないが、印象はいい国」ーアフリカにおける日本を表すとこうなります。
それぞれの日本企業の名前となると、実際のところ、アフリカでどの程度知られているのでしょうか。また、アフリカでは中国の存在感が大きいなか、比較して日本という国に対してはどのようなイメージを持たれているのでしょうか。
アフリカでよく知られている日本企業
アフリカ6カ国における日本企業認知率(日本企業認知率が50%以上の企業のみ抜粋)

調査対象6カ国いずれかで、90%以上の人に知られており、かつ50%以上の人が「この企業は日本企業」と認識しているのは、トヨタ、スズキ、ヤマハ発動機、いすゞ自動車、ホンダ、東芝、ヤマハ、パナソニック、ソニー、任天堂、ニコン、シャープの12社となりました。
とくに、トヨタ、スズキ、ヤマハ発動機、ホンダの4社は、すべての国で高い認知率を得ています。
別調査の「アフリカにおける好きなブランドトップ100」でも、これらの企業はランキングの上位に食い込んでいる日本企業で、アフリカでの知名度が根付いていることがわかります。
日本企業認知率は、ある程度その国での事業活動の活発さと比例しています。トヨタはアフリカ54カ国すべてに代理店を持っているためどの国でも知られています。ヤマハ発動機はモロッコにおける代表的な日本企業として知られており、ヤマハ(楽器)は音楽の国コートジボワールで人気です。シャープはエジプトの出資先の工場で白物家電を製造しており、任天堂は南アフリカのみで販売を行っています。ニコンはケニアで力を入れて販売しています。
ただし、上位に挙がった12社のうちスズキと任天堂を除く企業は、いずれも80年代や90年代からアフリカで事業を行ってきた企業で、現在の市場での競争力や事業領域に鑑みて分析すると、かつての活況や高いシェアといった過去のレガシーがあるため認知が高くなっている企業もうかがわれます。
関連記事:日本企業はどの国でどのような事業を行っているのか(日本企業のアフリカ進出動向と事例)
日本企業をよく知っている国
調査対象の6カ国を比較すると、全体として日本企業名に認知が集まる分量の違いがあります。次のグラフは、薄い緑が「その企業を知っている」企業認知率、濃い緑が「知っていてかつ『日本企業である』として認知している」日本企業認知率です。差分は、企業名は知っているけど中国企業と思われていたり、どの国の企業がわからないという回答の比率です。
ケニアにおける企業認知率と「日本企業」と認知した率

コートジボワールでの企業認知率と「日本企業」と認知した率

今回調査した6カ国のなかで、日本企業の名前を一番よく知っているのはケニアでした。ケニアでは、日本企業認知率が50%を超えた企業数が15社ともっとも多くなりました。それ以外の企業も他の国より概ね高い日本企業認知率を得ており、グラフに占める濃い緑の色が多いのがわかります。ケニアのほかには、エジプトにおいて日本企業認知率が高い傾向がありました。
一方、コートジボワールでは、トヨタでさえ56%に留まり、50%を超える企業はヤマハ発動機、スズキ、トヨタ、ヤマハ、ホンダ、東芝の6社に留まりました。今回調査した6カ国では、コートジボワールとモロッコにおいて日本企業への認知が低調でした。
アフリカにおける日本のイメージ
18のイメージワードについて、「日本と中国、どちらにあてはまるイメージか」と質問しています。以下のケニアやナイジェリアのような結果は、アフリカにおいて日本に持たれている典型的なイメージで、「自動車に強い」「長持ちする」「信頼できる」「本物の」というイメージに回答が集まっています。
ケニアにおける日本と中国のイメージ

ナイジェリアにおける日本と中国のイメージ

しかしながらケニアやナイジェリアといった国でも、日本側が日本に持たれているのではないかと期待している、「製造業に強い」 「技術力に優れた」「近代的、進んだ」といったイメージは、中国のものになっています。
一方、エジプトだけは、「近代的・進んだ」「アプリやITに強い」「クールな」「パワフルな」「ユニークな文化」といった、他の国では中国が連想されるイメージが、日本に対して持たれています。
エジプトには、日本を輝かしいイメージで捉えるكوكب اليابان(日本は惑星)という言葉があるといいます。逆に中国については他のアフリカほど豊富なイメージを持たれていません。
以下右のグラフのモロッコは、「技術力に優れた」「クールな」「自動車に強い」が上位となりましたが、日本に対するイメージに広がりや強さがありません。ただ中国に対してもそれは同様で、地理的・歴史的に欧州企業の影響が強いからか、アジアの存在感自体がそれほどないといえそうです。
エジプトにおける日本と中国のイメージ

モロッコにおける日本と中国のイメージ

アフリカにおける中国のイメージと存在感
中国が「製造業が強い」「アプリやITに強い」「近代的・進んだ」というイメージを醸成しているのは、アフリカとの関わりを思えば不思議ではありません。アフリカの現地企業は中国の工場から機械や原料を仕入れており、中国で作られた日用品はアフリカにあふれ、中国のスマホやオンラインサービスを人々は使っています。
今回調査対象企業名に入れたなかでも、たとえばAlibabaはとても身近な越境ECサイトで、その利用者は企業から個人まで広がっています。Tecnoはアフリカでもっともシェアが高い携帯電話メーカーであるトランシオンのブランドですし、MINISO(名創優品)は調査対象とした6カ国すべてに店舗を持ち、店舗にはMade in Chinaと書かれた商品が豊富に並んでいます。アパレルコマースのSHEINはアフリカでの衣料のオンライン購入を一気に拡大する起爆剤となっており、Softcare(おむつ)はアフリカにも工場を持ちP&Gのシェアを各国で奪っています。
日本製品の訴求点であるはずの「技術力に優れた」でも中国が強いのは、日本企業としては忸怩たるものがありますが、消費者は中国企業の製品を、必ずしも安かろう悪かろうだけとは思っていない、ということが想定されます。
日本の「技術」「品質」訴求は有効なのか
日本企業はよくアフリカにおいて、「Japan technology」「Japanese quality」といった言葉を使い、日本に持たれている「技術」「品質」のイメージを製品販売につなげようとしています。しかし、日本に「技術」「品質」というイメージを持たれていないならば、それは伝わるでしょうか。
また、その言葉で伝えようとしている具体的なイメージは、アフリカの消費者に伝わっているでしょうか。
単純な製品スペックの比較では、いまや中国製品との差はいうほどありません。では、日本製品の強みはどこにあるのか。それは、設計段階での深い検討、幅広い使用シーンやリスクの想定力、ユーザのニーズに応える細部にわたる工夫の蓄積、厳格な製造・検査管理、そして自動車産業に見られるような「すり合わせ」の職人技であり、それが日本製品といって思い浮かぶ、または思い浮かべてほしい「技術」や「品質」なのだと思います。
日本で生まれ育った人が日本製品に持つそういったイメージは、メディアや学校教育、工場見学などを通じて醸成されたものだと思います。ただし、同じ経験を経ていないアフリカの消費者や企業においても、「技術」や「品質」と聞いて同じものが伝わるかは疑わしいところです。
また、そのような「技術」や「品質」があると、なにがいいのか。技術や品質という訴求には、合理的なメリットの訴求にみえて、情緒的な信心のようなものも含まれています。「長く使うと得をする」といった理由だけでなく、限られた予算から支払いを行う人達が払いたくなるような、情緒的な「技術」「品質」のイメージを積み重ねる必要があるかもしれません。
日本製品の良さをアフリカで伝えるには、伝え方を変え、工夫する必要があるように思います。
調査概要
- 対象国:南アフリカ、ケニア、ナイジェリア、エジプト、モロッコ、コートジボワールの6カ国
- 対象者:18歳以上、男女50%ずつ
- サンプル数:南アフリカとケニアは200サンプル、ナイジェリア、エジプト、モロッコは100サンプル、コートジボワールは50サンプル。計750サンプル
- 調査方法:オンライン(モバイル、PC、タブレット)を通じたアンケート調査
- 調査時期:2024年12月~2025年1月
- 調査実施機関:アフリカビジネスパートナーズによる自主調査
調査結果レポート
調査結果をまとめた「アフリカにおける日本企業認知と日本のイメージ調査レポート」は、以下からダウンロードできます。
なお、各国とも、貧困層、中間層(下)、中間層(上)、富裕層(下)、富裕層(上)の5段階(国によっては4段階)にわけた所得層別の分析も行っています。こちらは有料で販売していますので、こちらからお問い合わせください。
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