アフリカ自由貿易圏(AfCFTA)協定が運用を開始、何が変わるか
アフリカ域内の関税を撤廃し貿易ルールを共通化する「アフリカ版EU」と言われるアフリカ自由貿易圏(AfCFTA)協定について、解説しています。
アフリカ主な輸出相手国と輸入相手国、日本とアフリカの貿易関係は?
アフリカの全54カ国が、どの国と貿易関係が深いかをまとめました。2021年に各国の輸出額、輸入額がそれぞれもっとも大きかった相手先の国を示しています。なお、同じ情報を、2017年、2019年にもまとめています。
あわせて、日本とアフリカの貿易関係についてもまとめました。日本がアフリカから輸入している品目と相手国、逆に日本がアフリカに輸出している品目と相手国をとりあげています。2022年に日本はアフリカから年間約2兆円を輸入していますが、輸出額は1.3兆円で、対アフリカ貿易において貿易赤字となっています。何を輸入し、何を輸出しているのでしょうか。
2021年は、アフリカの実に12カ国において、アラブ首長国連邦(UAE)が最大の輸出相手国となりました。輸出されているのは金です。これは、2021年が金相場の高騰のタイミングであったことが大きく影響しています。UAEのドバイは、金の一大市場です。相場が落ち着いていた2019年にUAEを最大の輸出相手としていた国は1カ国のみでした。
中国は、南アフリカ、アンゴラ、コンゴ民、南スーダン・・・と、やはり資源国において中国が相手国である国が多いことに気づきます。鉱物資源や石油が輸出されています。
アフリカの最大の工業国であり、資源国である南アフリカも、最大の輸出先は中国です。なお、南アフリカの輸出先第6位は日本で、自動車触媒に用いるプラチナを輸出しています。
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ナイジェリアはインドに原油を輸出しています。かつてはナイジェリアにとって米国が原油の輸出先でしたが、シェールガス以降減少し、いまはインド、そしてスペインが買い手となっています。タンザニアはインドに銅や金を、モザンビークは石炭を輸出しています。
フランスは、主にアフリカの西から中部にある仏語圏アフリカと軍事的、政治的、経済的に関係が深いです。ただし、そのフランスを貿易トップ国としているのは、モロッコ(自動車や航空部品)、チュニジア(ワイヤーハーネスや縫製品)、モーリシャス(縫製品)などに限定されており、アフリカの輸出先としては必ずしも存在感があるわけではありません。
米国を最大の輸出相手国とするエジプト、マダガスカル、レソトが輸出しているのは、衣料です。アフリカの国々にとって、原油や鉱物資源に続く輸出品は、衣料などの縫製品や、自動車部品などの軽工業品です。とくに、米国とアフリカの多くの間では特恵関税が結ばれており、衣料のような現地生産された製品は、原料の原産地に関わりなく、免税で輸出できます。リーバイスのジーンズやファストファッション、ユニフォームなどがアフリカで製造され、米国に輸出されています。
ケニアにおけるウガンダ、セネガルにおけるマリ、ジブチにおけるエチオピア、ルワンダにおけるコンゴ民は、内陸貿易の相手国です。海のない国が陸路で輸入するには、必ず近隣国を通らなけらばなりません。
輸入相手国としては、中国のポジションが年々高まっています。2017年、2019年と比べても、赤色の国の数は増えるいっぽうです。
アフリカの国々が中国から輸入している物は、あらゆる物です。食品、衣料や靴、家電や携帯、鉄鋼品、プラスチックなど製造業の原料、機械や道具類などです。日本に中国製の商品があふれているように、アフリカも世界の工場で作られたものが普及しています。
緑は南アフリカで、周辺の南部アフリカの国々へ、食品や日用品から機械や原料まで輸出しており、南アフリカ経済圏を作り上げています。他の国にとっての中国のような存在で、あらゆる物が南アフリカから流れてきます。港がない国では、南アフリカの港が輸入の入り口となっています。
モロッコにとってはスペインが「中国」です。フェリーで15分の距離にあるため、加工食品や原料や機械類を、スペインから輸入しています。
リビアは、自国で生産した原油をトルコに輸出し、精製された石油を輸入しています。産油国でありながら十分な精製能力がなく、原油を輸出していて石油を再輸入している国としては、他にはアフリカで一番の産油国であるナイジェリアが挙げられます。ナイジェリアは、オランダやベルギーなどから精製石油を輸入しています。
こう見てみると、アフリカの国々の貿易相手は、内陸国を除いては、アフリカ大陸以外の国が中心であることがわかります。いいかえると、アフリカの付加価値はアフリカ大陸外へと流出しており、輸入を行うために外貨が流出しているといえます。
この状況を変えるべく、アフリカ自由貿易圏(AfCFTA)協定という、域内FTAが2021年から運用を開始しており、アフリカの国同士の貿易を活発化させようとしています。
AfCFTAについては、以下からご覧ください。
関連情報:アフリカ自由貿易圏(AfCFTA)協定が運用を開始、何が変わるか
日本はアフリカから年間約2兆円を輸入していますが、輸出額は1.3兆円で、対アフリカ貿易において貿易赤字となっています。
日本がアフリカから輸入しているもっとも金額の大きい品目は、南アフリカから輸入している自動車用のプラチナです。これに、石油・石炭と鉱物資源で、輸入額の70%を占めます。
南アフリカからは、グレープフルーツや飲料用の柑橘なども輸入しています。たこ焼きなどに使われるたこをモロッコやモーリタニアから、カカオ豆をガーナから、コーヒー豆やごま油用のごまをエチオピアやタンザニアから、まぐろをモロッコやチュニジア、セーシェルから、バニラをマダガスカルから輸入するなど、さまざまな農産物を日本はアフリカから輸入しています。
アフリカに輸出している品目としては、よく知られるように中古車や自動車部品がもっとも金額が大きいです。南アフリカには日本の自動車メーカーの工場が多くあるためそこへの輸出品があり、ケニアやエジプト、タンザニアといった日本から近い東側の港を持つ国には中古車が輸出されています。
一方であまり知られていませんが、現地の製造業企業向けに機械や機器、鉄鋼原料、化学原料なども輸出されています。エジプトやナイジェリア、ガーナに向けては、サバも主要な輸出品となっています。
国別にみると、日本の対アフリカ貿易の相手国として輸入、輸出とも上位であるのが南アフリカです。輸入においては、ナイジェリア、アルジェリア、モロッコ、マダガスカルが続き、輸出においては、船舶の便宜置籍船国であるリベリア、ケニア、エジプト、タンザニアが上位の輸出相手国となっています。
データはいずれも2022年です。
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