アフリカの自動車生産国と日本メーカーの動向

トヨタ、スズキ、いすゞ、ホンダ、日産、三菱、日野がアフリカで自動車を組み立て生産中

アフリカの自動車生産国と日本メーカーの動向

(トヨタの南アフリカ工場、ABP撮影)

アフリカにおける自動車の生産状況についてまとめました。

アフリカでは日本の中古車が普及しているものの、自国での生産が悲願

スズキのエブリィが並ぶナイジェリア・ラゴスの街角
スズキのエブリィが並ぶナイジェリア・ラゴスの街角(ABP撮影)

よく知られているように、アフリカでは日本車が多く走っています。国によっては道路を走る自動車の9割程度がトヨタやスズキを始めとする日本車です。乗用車だけでなく、トヨタ・ハイエースや日産・キャラバン、スズキ・エブリイは、改造してバスとして使われ、文字通り庶民の足となっています。

しかし、南アフリカやエジプトを除いて、登録台数の8-9割は中古車です。アフリカの政府はどこも、中古車でなく、新車を国内で生産して国内で販売する「地産地消」を目指しています。自動車産業は裾野が広いため部品製造業の勃興とレベルアップが期待できること、雇用を確保できること、自動車を輸入する外貨を節約できることなどが理由です。

自動車の国内生産を増やすためには、中古車の輸入に制限をかけ、自動車生産への税制面(関税・法人税)などの優遇策を制定し、新車メーカーを誘致しなければなりません。自動車メーカーは、新車を輸入して販売するよりも国内で生産することにメリットがなければ、生産は行いません。

南アフリカはこういった政策が功を奏し、アフリカ最大の新車生産地となっています(ちなみに南アフリカでは、中古車の輸入は禁止されています)。トヨタがカローラなどを欧州に輸出し、BMWが米国など向けに輸出するなど、国内向けを超えて、自動車の輸出拠点にもなっています。南アフリカからは完成車だけでなく、部品も輸出されています。

アフリカで自動車生産ができている国は?

ある国で自動車生産が可能となるには、前述の(1)政策や税制面の他に、(2)投資規模(固定費)に合うだけの市場、(3)生産が可能となる技術水準が必要となります。政府は通常、優遇策と同時に国内部品調達率などを定めますので、国内で部品を調達できる水準に達していることが必要となります。

これらの観点から、アフリカで国内で自動車生産している国は多くはありません。南アフリカ、モロッコ、エジプト、ケニア、アルジェリア、チュニジア、ガーナ、エチオピア、ナイジェリア、ルワンダの計10カ国が、生産を行っている国です。

また、アフリカの工場はすべてCKDまたはSKDの組み立て生産です。塗装工程などの取り込みも見られますが、基本的に組み立てです。

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このうち、年間56万台ほど生産している南アフリカと、47万台のモロッコが、アフリカにおける自動車生産の2大拠点です。ただこの2カ国、生産の内容が少し違います。

アフリカの自動車生産国と台数
アフリカビジネスパートナーズ調べ(2023年3月時点)

南アフリカは、前述の通り中古車の輸入が禁止されているため、国内生産車、輸入新車、国内中古車が選択肢となります。国内生産車のうち6~7割が輸出、残りが国内向けです。アフリカ最大の工業国として、トラックなど商用車も生産・国内販売されています。

モロッコの自動車生産は、欧州へ輸出するための車両が中心です。ルノーやステランティスといった仏系メーカーを誘致し、輸出特区の設置や港、道路といったインフラの整備を進めてきました。トルコやウクライナに代わる、欧州向けの輸出拠点となることで、規模の経済をクリアしています。生産されている車両もほぼ乗用車です。

続くのは、生産台数5万台のエジプトと、1万台のケニアです。

ケニアは、実は古くから国内組み立て生産を続けてきた国です。たとえばトヨタのランドクルーザーは1977年からケニアで生産されています。メーカーがそれぞれ工場を持つのではなく、複数のメーカーの車両を製造する共同工場が2つ存在しており、外資メーカーの多くはそこで生産しています。例外はいすゞ自動車で、かつての提携先だったGMが開設した工場を買い取り、自社の工場を保有しています。ケニアにおいて、新車販売台数が最も多いのは、いすゞ自動車となっています。

一方、ガーナ、エチオピア、ルワンダ、ナイジェリアなどは、近年あらたに自動車生産を開始しようとしている国です。とくに注目を浴びているのはガーナで、2019年に自動車産業政策を発表したことで、外資の参入が相次ぎました。

日本の自動車メーカーの動き

南アフリカの国内向け乗用車のシェアは、トヨタ自動車が長らくトップです。VWがこれに続きますが、3位に急上昇し販売台数を大幅に増やしているのがスズキです。スズキは、南アフリカには生産拠点を持っておらず(よって上の地図にスズキの名前はありません)、インドのクジャラートの工場から南アフリカに輸出しています。

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ちなみにアフリカで最も人気があるトヨタ車は何だと思いますか?ハイラックスです。強く、丈夫で、人間も物も乗せられるため、特に所得が低い国や地方にいくほど、場所によってはハイラックスだらけになります。

ケニアの道を走るいすゞ車両を改造したバス
ケニアの道を走る、いすゞのトラックを改造したバス(ABP撮影)

いすゞ自動車は、南アフリカ、ケニア、エジプトで、軽トラックやバスを中心に生産しています。直近では、エチオピアに工場を開設しました。

いすゞのトラックは、現地でとても信頼されており、人気です。ケニアではバスに改造され、ファンキーなペイントを施されて、人々の足となっています。

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ガーナでは、2021年にトヨタ車(ハイラックス)、2023年にスズキ車(スイフト)の生産が開始されました。なお、トヨタ自動車とスズキ、トヨタ自動車と豊田通商の間の業務提携に基づき、どちらも実際に生産・販売を担っているのは豊田通商です。

ガーナでは、Uberなど配車アプリ用車両として軽自動車が走っており、スズキ車はこの市場を狙います。ガーナは、西アフリカにおいて相対的に政治的に安定しており、ガーナを通じて他の西アフリカ諸国へ輸出することが目論まれています。

  • 日本の自動車メーカーの日々の動きは、週刊アフリカビジネスで毎週お知らせしています。
  • 日本企業のアフリカでの動きは、こちらの「アフリカにおける日本企業の動き」で毎月まとめています。自動車メーカーの動きは頻繁に取り上げられています。
  • アフリカで事業を行っている日本企業については、「日本企業のアフリカ進出動向と事例」で包括的にとりまとめています。日本の自動車メーカーの他、自動車メーカーに納品している部品メーカーについても掲載しています。

アフリカビジネスパートナーズは、アフリカ各国の自動車生産台数やメーカー別のシェアといったデータを保有しています。ご関心がある方は、スポット相談市場調査・産業調査として、お問い合わせください。

※引用される場合には、「アフリカビジネスパートナーズ」との出所の表記と引用におけるルールの遵守をお願いいたします。

執筆者: 梅本優香里

アフリカビジネスパートナーズ代表パートナー

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