- アフリカのビジネス環境
アフリカビジネスの2026年予測

2026年のアフリカ経済はどうなるでしょうか。2025年を総括し、今年の経済とビジネスの展望をまとめました。日本企業にとってはどういった事業機会が生じるタイミングとなるでしょうか。
1. 長い停滞が底を打ち、経済は回復の見通し。成長へ転換するための政策は今年も継続される
2025年後半には、コロナ以降5年続いた経済的停滞が、回復・安定に向かうシグナルが見られ、潮目が変わった。主要国において大統領選挙がない今年、成長のための政策は継続される。
2. インフラ投資と海外投資誘致が積極化され、投資環境が改善するか。先行者として参入するチャンスの年
主要国は守りから攻めの体制に転換した。今年はインフラ投資と海外投資を進める、動きの多い転換点となる。いまなら体制が固まり成長基調に乗る前に参入できる
3. 日本企業は、強みとする欧米企業との連携による大型投資や買収とともに、消費財ビジネスの躍進を期待
欧州企業の再編やUAEの積極投資は日本のチャンス。実需の回復が見込まれ業界再編の余地もあるいまが、消費財ビジネスにとっても仕込みの好機
アフリカ経済はこの5年、不運に見舞われてきた。確認感染者は相対的に少なかったにも関わらず、コロナによるロックダウンや需要縮小による景気落ち込みを受けた。欧米の脱炭素のブームは、石油や石炭を主要産業とする国への投資を急速に抑制した。
決定打はロシアによるウクライナ侵攻だった。多くのアフリカ諸国は両国と深い経済的つながりは持たない。それでも世界経済の減速と米国の急速な金利引き上げが、容赦なく直撃した。ドル建て債務の負担が跳ね上がり、外貨建債権を発行できるほどのアフリカの優等生だったガーナがデフォルト(債務超過)し、ケニアもその瀬戸際までいった。
原油高は資源国を潤すより、非資源国の輸入ガソリン価格を2倍、3倍に押し上げ、物価全体を持ち上げた。物価高でコロナで職を失った人々の生活はさらに苦しくなり、消費者の購買力の低下が製造業を縮小させた。為替安と外貨不足、インフレ、財政悪化という悪循環が生じた。
しかし、2025年後半には、その長いトンネルを抜ける兆しがようやく見えた。世界の経済環境が改善したこともあるが、アフリカ政府自身が外生ショックを制御する対策を講じたのが大きい。2026年は、アフリカ経済を回復から成長軌道に乗せるための正念場となる。
日本企業はこの局面で、なにをすべきだろうか。ホップ・ステップ・ジャンプでいうなら、経済の転換点にある2026年は、ステップの年となる。両足でジャンプを踏み切るための、準備を進めるチャンスだ。
アフリカ主要国の経済を長期でみると、2020年のコロナで落ち込み、2022年/2023年の世界の緊縮財政で二度目の外的ショックを受けた。2025年は持ち直しつつある-というのが概観である。
アフリカBIG5の経済成長率(2018年~2027年、2025年以降は予測、IMF)

BIG5といわれるケニア、南アフリカ、ナイジェリア、エジプト、モロッコをとりあげ、2025年までの停滞と、2025年後半に見られた回復の兆しについて、解説する。
ケニアは、調達環境が良かった時期に積極的に外貨建の借り入れを増やしてきたため、ウクライナ以降の金利上昇により債務比率が急速に高まった。干ばつによる農業生産の悪化も相まって、インフレに対処できなかった。
コロナは持ち前の助け合いで耐えた国民にも、生活必需品や交通費が軒並み上がるこの物価高はきつかった。財政健全化のために計画された増税に国民が反対して起こったのが2024年のデモだ。増税は取り下げられ、S&Pはケニアの国債を格下げした。
2025年になってようやく金融緩和策により流動性が高まり、堅調な輸出や海外からの送金で外貨収入が増え、インフレは管理可能な範囲に収まった。外貨準備高は一時期約2倍まで増え回復した。施策が功を奏し、2025年8月には格付けも元のBへと引き上げられた。
利下げを続け9%まで抑えた政府は、昨年後半、緊縮財政から積極投資に転じると発表した。交通インフラや灌漑に10年で5兆ケニアシリング(6兆円)投資するという大胆なインフラ重視を打ち出したのだ。借りたお金に苦しめられた反省を活かし、財源として政府ファンドを創設した。これまで中国に借りてきた道路や鉄道の建設費は、今後はこのファンドから拠出するという。ケニアは農業国だ。灌漑が整備されることは、経済基盤の安定と底上げにつながる。
原料高や需要収縮に苦しんできた建設や消費者向け製造業も2025年は回復がみられ、民間企業における景気を判断するPMIは、後半になるにつれ景気改善とされる50を大きく上回ってきた。
ケニアの2025年の経済指標

出所:政府発表数値、PMIはStanbic Bank Kenya PMI
エジプトは2023年にはインフレ率が38%まで上昇し、2024年には外貨不足からこの10年で3回目となる為替の切り下げを行った。エジプトの経営者は「我々は突然景気が悪化するというワクチンを接種済みだ」と笑う。
政治的に常に不安定な地域に位置するエジプトは、地域安定の柱であるため、2024年にIMFは80億ドル、UAEは350億ドルの拠出を発表してエジプトの信用危機を救い、経済は安定に向かった。2025年10月にはS&PがB-からBへと格上げを行い、12月にはインフレ率は12.3%、政策金利は20%となるまで安定した。
エジプトはいつもどこからかお金が湧いてきて、政府がまず積極的な投資に動き、実体経済がそのあとを追う。いまは政府が動くフェーズで、外資の誘致を力ずくで進めており、日本企業も参戦して再生可能エネルギーと製造業への投資発表が続いている。欧州とアジア、そしてアフリカを結ぶ物流の要所にあり、人件費が安いエジプトは、世界の製造業の拠点として、次の中国、アジアになりうる可能性を秘める。エジプトの重要産業である観光客数は2025年に21%増えた。まだ回復の途中ではあるが、2025年の経済成長率は4%に乗る見込みだ。
エジプトの2025年の経済指標

出所:政府発表数値、PMIはS&P
新しいリーダーの政策が形になりはじめたのも2025年だ。南アフリカでは、9年続いた前ズマ政権が経済・財政・政権統治を破壊した。ズマ氏が就任する以前の10年間、南アフリカのGDP成長率は3-5%で推移していたが、末期には1%さえようやくだった。2018年にズマ氏を更迭する形で就任した現ラマポーザ大統領は、粘り強く改革を進め、財政に規律を取り戻し、民間投資を促すよう規制を緩和してきた。
放漫経営により政府救済なしに継続できない状態だった国営電力公社エスコムは、2025年、8年ぶりに黒字となった。かつては豊富な石炭資源を活かして世界でもっとも電気代が安いと海外からの製造業投資が相次いだ国だったが、この数年は人為的な理由で停電が頻発し、企業の利益を圧迫していたのだ。
2025年、停電はすっかりなくなり、別の放漫経営国営企業である港湾と物流の非効率を生み出していたトランスネットの一部民営化も話が進んだ。国家債務は減少に向かう見込みだ。
2025年11月、S&Pはなんと20年ぶりに南アフリカの格付けをBBへと引き上げ、さらに見通しをポジティブとした。経済の復調はマクロ数値に反映されているとはいえないが、足元の市場をみると、小売やアパレルが好調で主要企業の2025年決算は好調だった。人々が買い物に戻ってきたのだ。
民間企業における景気を判断するPMIは、景気改善とされる50を超える月が増えている。JPモルガンは、2026年の南アフリカ食品産業の見通しは明るいとして、買い評価を発表した。ラマポーザ政権はインフラ投資の積極化へと、守りから攻めへ転じる動きだ。南アフリカはいま、悪夢の9年から続いた低成長の長い長いトンネルを、ようやく抜け出しつつある。
南アフリカの2025年の経済指標

出所:政府発表数値、PMIはS&P
ナイジェリアは、同国屈指の実業家であるダンゴテ氏率いるダンゴテ製油所が、10年かけて取り組んだ製油所を2025年頭に稼働させた。10年かかったのは、数々の妨害とマクロ経済の困難があったからだ。ナイジェリアは長年、-たとえGDP成長率が高い年があったとしても-石油に頼るモノポリー経済と資金流動性不足に苦しんできた。
2023年に10年ぶりの大統領交代で就任したティヌブ氏は、これらの原因であり、この国の経済を歪めてきた二重為替、ガソリン補助金、石油産業の独占を就任直後に終了させるという大胆な改革を行った。ダンゴテの製油所が稼働できたのはこの改革があったからだ。
関連記事:「動かぬ巨人」ナイジェリアにポジティブな異変。ビジネス環境改善なるか
ダンゴテ製油所は日産65万バレルの巨大製油所で、いま進めている拡張が完成すれば日量140万バレルの世界最大の石油生産量となる。ポリプロピレンを年間240万トン、尿素を年間800万トン生産する石油化学コンビナートの建設も進められており、念願の輸出を行い輸入代替を狙う。サブサハラアフリカに南アフリカに続く重化学工業国が生まれることになる。
ここから中間財、最終製品へとサプライチェーンが生まれていくことが肝要だ。現地企業はダンゴテの動きに触発され動いている。ナイジェリアは実は原油だけでなく、鉱物資源や農業資源にも恵まれており、ダンゴテもセメントや小麦の加工を行っている。自国の資源を用いて製造業を行い、さらに輸出する経済の高付加価値化が次の課題だ。
2024年に30%に達したインフレ率も半分まで下がり、峠を越した。2023年、2024年には厳しい物価高、原料高に製造業の撤退が起こったが、消費は戻りつつある。ネスレは前期の損失から一転し売上を伸ばして黒字を確保した。石鹸など日用品を製造する英PZ Cussonsはナイジェリアからの撤退を発表していたが、2025年12月に撤回し、逆に事業を強化することを発表した。2025年の上半期業績は2桁成長だったという。
通貨も安定し、証券取引市場も好調で、投資家の信頼は回復しつつある。結果として2年前に行った大手術は、成功だった。「ナイジェリアには立ち止まったり後退する余裕はない」と財務大臣が語るように、今年が成長に向かうかどうかの岐路となる。
ナイジェリアの2025年の経済指標

出所:政府発表数値、PMIはStanbic Bank
モロッコは前述した4カ国とは違い、この5年も安定的に推移してきた。経済成長率は高くはないが、全方位的な外交関係を結び、保守的な借り入れや為替政策をとってきたことがリスクヘッジになった。リン酸と観光に頼った経済だったところ、ルノーやステランティスの工場を誘致し、輸出特区と港を整えたことで、欧州で有事が起こるたびモロッコが製造業の移転先となった。2025年は念願の自動車生産台数100万台を達成し、南アフリカを抜き、アフリカで最も自動車生産台数が多い国という地位を獲得した。
「新・欧州の工場」は2030年のワールドカップ開催に向けて、巨額資金を出動させており、都市には1964年の東京オリンピック前であるかのような浮足だった雰囲気がある。アフリカの数少ない投資適格国だが、健全な財政と積極的な投資のバランスをとる必要がある。昨年後半には公的資金のインフラ投入に置いてきぼりにされた国民によるデモも起こった。強権政治と自由、投資と安定の綱渡りをしながら、中所得国から上へと抜きん出ようとしているところだ。
モロッコの2025年の経済指標

出所:政府発表数値。PMIは発表されていない
アフリカの他の国々の経済指標については、以下の「国別情報」を御覧ください。
関連情報:アフリカ54カ国の国別経済指標
これらアフリカの主要国では、いずれも今年は大統領選挙の年ではない。2026年も引き続き、トンネルを抜けるために講じてきた政策が継続できる環境にある。レジリエンスの構築に一定の手応えを得た2025年を経て、次に問われるのは実体経済の拡大である。
アフリカ主要国は今年、インフラ整備と海外投資の誘致に重点を置くだろう。投資や拠出を通じて、生産性を高めるレバレッジの効く資産を蓄積しなければ、安定から成長への転化は望めない。電気、道路、港、通信網を整備し、工業団地を作って、投資しやすい制度や環境を整える。BIG5の国はいずれもこの方向に動いており、インフラ関連プロジェクトの増加と、外資の参入が活発化することが見込まれる。
足元で準備が進められており、2026年に投資が増える領域はどこか。
Tier1
再生可能エネルギー、電気自動車、通信、データセンター、AIサービス、建設、天然ガスや鉱物資源開発
再生可能エネルギーや発電への投資は引き続き続く。アフリカ政府や各国開発金融、民間投資機関、民間企業が資金の出し手だ。
中国で電気自動車需要が落ちるなか、アフリカに活路を見出したい電気自動車メーカーの進出は、今年本格化する。現地製造や、一部の国ではリチウムイオン電池等の部品生産に踏み込み、アフリカを関税障壁が高い欧州や米国への輸出拠点とする動きも進む。
通信分野では、イーロン・マスク氏のスターリンクに象徴される低軌道(LEO)衛星通信サービスの展開が進み、従来カバーが難しかった地域にも通信を届ける試みが行われる。
世界の需給の逼迫のなか実現スピードは落ちそうだが、データセンターへの投資発表は引き続き活発に行われるだろう。アフリカ市場でのAI主導権争いをするAIジャイアントの投資も続く。Google、Micosoft、そしてNvidia、OpenAIはいずれも2025年にアフリカへのAI投資を発表している。
Tier2
縫製・アパレル、食品・飲料、農産加工、建設資材、ライフスタイル産業、資源リサイクル、海水淡水化、原子力発電
2026年は製造業への投資が復活しそうだ。製造業に投資するべきだというのは、アフリカで何十年と唱えられてきたことだが、生活必需品さえ手に入りづらくなるコロナや為替変動を経て真剣味が増した。
米コカ・コーラは今後5年間で12億ドルをアフリカに投資する。輸出するより現地で作る方が良いという判断を引き出すべく、主要国による輸入関税の引き上げやインセンティブを通じた国内製造を後押しする動きは少しずつ進む。
不安定な国際情勢のもとで、世界中の企業が市場ポートフォリオや貿易サプライチェーンの見直しを迫られており、アフリカに投資の目が向けられている。米国の相互関税の導入は、米国への輸出が多いわけではないアフリカの国々にとっては、高関税を避けるべく関税が低めのアフリカを通じた輸出を試みる外資がやってくるチャンスの意味合いの方が強い。
自動車部品や縫製・アパレル等、グローバルな供給網の再編や分散の流れは、モロッコやエジプトにとって追い風となる。カカオをはじめアフリカからの農産物供給を安定させるための投資も少しずつ行われるだろう。
海外企業に投資しやすいインセンティブが設定され、投資の門戸が開けられると、真っ先に応じるのは中国企業である。今年も中国企業のアフリカ進出はますます進むに違いない。米国のおかげで、中国とアフリカ間の関係は政府レベルでも民間レベルでもより強くなっている。
UAEを中心とする中東は、官民挙げて有り余る資金をアフリカに振り分け覇権を狙っている。金価格の高騰もあって、アフリカでUAEを最大の輸出相手国とする国数は、中国を抜いて最大となっている。
2025年に目立ったのは韓国の進出だ。食品や家電、美容や健康、コンテンツといったライフスタイル産業をアフリカで展開し始めている。ロシアはアフリカでの原発開発を狙う。
では、日本はどこで勝負をすればよいだろうか。
アフリカで事業を行うにあたって、日本の最大の強みは、世界市場におけるプレゼンスと信頼、そして資金力である。グローバル企業とコンソーシアムを組めるのも、英国や欧州企業のアフリカ事業を買収できるのも、そのおかげだ。
住友商事は2021年に、人口1億人以上を抱えるエチオピアの通信事業に参入した。これは英ボーダフォンとタッグを組んだ事業となる。アフリカといえば代表的な企業として挙げられる、豊田通商のアフリカ事業の躍進は、仏CFAOの買収からはじまった。
欧州企業の不調や事業ポートフォリオの組み換えは、日本企業にとってチャンスとなる。中東との関係が良い日本は、アフリカ攻略を積極化するUAE政府や企業との連携が可能な好機にある。
エジプトでは再生可能エネルギーへの投資合戦が行われている。住友商事はUAE企業と組んで、2025年5月にアフリカ最大規模となる500メガワットの風力発電所を稼働した。1カ月後の6月、仏Engieと組む豊田通商が654メガワットの風力発電所の商業運転を開始し「アフリカ最大」を奪回した。九州電力傘下のキューデンインターナショナルも、UAE企業と組んで、1,000メガワット規模の太陽光発電所を建設すると発表した。
三井物産が仏TotalEnergiesと取り組むモザンビークの液化天然ガスプロジェクト、伊藤忠商事が中東企業等と目指すグリーンアンモニア製造、欧米の国々と組むコンゴ民やザンビアの鉱物資源開発への参画は、今年進捗が期待される。
関連記事:アフリカの日系商社、大型プロジェクトがここにきて次々と開始
2025年12月、アサヒグループホールディングスは英ディアジオから、ケニアのビール会社EABLを買収すると発表した。買収額は30億ドル(4,654億円)、円安とはいえ、2010年にNTTが南アフリカのDimension Dataを2,860億円で、2012年に豊田通商が仏CFAOを2,345億円で買収した金額を上回る、日本企業によるアフリカ企業買収の最高額となった。
この買収によりアサヒGHDは、ケニアにとどまらず、アフリカ全土における大手ビール会社の一角に躍り出た。ディアジオがケニア事業を非中核資産として売却したのは資本効率改善のためであり、いわば世界的な需要不足や不況のおかげともいえる。アサヒGHDは、いまが買い時のアフリカ事業を、ジャンプのタイミングがやってくる前に買った形だ。物価高によりここ数年は好物のビールとニャマチョマ(焼き肉)を食べる頻度を減らしていたケニアの人びとも、消費に戻りつつある。
関連記事:アサヒビールがアフリカの4強入り。日本企業過去最高の30億ドルの買収でアフリカ進出

アサヒGHDによるディアジオ保有株取得を伝えるケニアのニュース番組や新聞。現地ではトップニュースとして報じられた。アサヒの買収というより「ディアジオの撤退」という文脈で報じるものが多かった

2026年は、アフリカの消費者を顧客とする事業において、日本企業の活躍を期待したい。人口規模が重要な成功要因である消費財ビジネスは、日本とアフリカの補完性が高いとされてきた。しかし実際には、日本やアジアとアフリカの消費者ニーズの違いを商品に反映させ、商流に応じた販売方法に適応することに苦労し、アジアの成功体験から離れられず、消費財企業の進出は難航している。
関西ペイントは2011年に南アフリカ、2017年に東アフリカで現地企業を買収し、アフリカに進出した。同社のコア事業である自動車用塗料に集中するべく、2022年にすべてを競合アクゾノーベルに売却し、アフリカから撤退すると発表したが、競争当局の承認が得られなかったことから「撤退を撤回」し、事業を継続するに至った。
塗料はアフリカにおいては消費財である。ホームセンターや街の建材・工具店で売られ、消費者が購買する。関西ペイントが日本やアジアで強みがある自動車用塗料とは、ニーズも商流も違う。しかしいま東アフリカの地方の街を回ると、目に見えてKansaiの看板が目立つようになっている。買収した現地企業はもともと流通チャネルのカバレッジが広く、この強さを活かしてアフリカに力を入れる戦略に転換したことがうかがえる。
サントリー食品インターナショナルは、同じような時期の2013年、英グラクソ・スミスクラインから欧州飲料ブランドを買収し、ナイジェリア、南アフリカ、ケニアの工場と市場を手に入れた。しかしナイジェリアは2022年、ケニアは2024年に事業と資産を売却し、ライセンス供与に切り替えた。
飲料事業は製品力でなく販売力がシェアを決める、全国津々浦々のパパママショップに営業を回らせ続けなければならない泥臭い事業だ。アフリカでは、スーパーの棚の確保やマス広告は最適解ではない。製品がいくら良くても、代理店を設定してチャネルに乗せれば売れるということは、ない。サントリーが買収したブランドはどこのスーパーでも売られていたが、パパママショップでは弱かった。製造は効率化できても販売はできず、とくにシェアを増やす段階においてはそうだ。サントリーの判断は、他地域と比べて効率性が劣ると見たアフリカ市場を切り離した結果といえる。
日本でアフリカビジネスが脚光を浴びて15年近く経ち、うまくいかなかった事例から得られる知見も積み重なってきた。慣れ親しんだビジネスモデルを前例踏襲して横展開するのでなく、顧客の行動や商流といった現場の実態を起点に修正することがスタート地点だ。その意味で、アフリカビジネスは企業にとって「新しいこと」をやらなければならなくなることが多い。投資効率や採算性で測って展開していては、市場に入ることさえできない。問われるのは、人材、時間、資本を長期的にコミットし、成功するまでやれと言える経営判断である。
アサヒGHDは10年後、関西ペイントになるだろうか、サントリー食品インターナショナルになるだろうか。アフリカにおいて日本企業の消費財ビジネスの成功事例となることを期待したい。
2026年は、アフリカ事業を開始するうえで一つの好機といえる。最悪期は脱し、政策の継続性が見込める。実需の回復が始まり、経済の転換点にあって業界再編の余地もある。アフリカが本格的な成長軌道に乗る前に、仕込みを行うタイミングだ。
※引用される場合には、「アフリカビジネスパートナーズ」との出所の表記と引用におけるルールの遵守をお願いいたします。
