アフリカの日系スタートアップ、注目すべき7社(上)
日本人が立ち上げたアフリカのスタートアップのうち、1億円以上の調達を達成した企業を解説しています。

(写真は北アフリカのとある国の縫製工場、ABP撮影)
毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。
ナイジェリア発のステーブルコイン取引プラットフォームYellow Cardが、英Standard CharteredのCVCであるSC Ventures、ソニーグループのCVCであるSony Innovation Fund、米Polychain Capital、米Blockchain Capitalのほか、複数の戦略的投資家から4,000万ドルを調達した。今回の調達で株式による累計調達額は1億2,000万ドルを超えた。
2016年にナイジェリアで創業し、現在米国に本社を置くYellow Cardは、ステーブルコインを利用した国際送金や法定通貨との決済機能を提供している。企業向けのGlobal USD Accountsでは、企業が1つの口座で米ドルとステーブルコインの保有や交換ができ、50カ国超で現地通貨を受け取り、支払うことができる。
堅牢なAPI、法定通貨決済網との接続、セキュリティ水準、規制を優先するアプローチを導入している。米Visaと米Western Unionは顧客としてこのサービスを使用しており、米Mastercard、米Paypal、米Coinbaseと戦略的に提携している。Yellow Cardは100億ドル超の取引を処理した実績を持ち、北米、欧州、アフリカにまたがる22の法域で免許、認可、登録を取得している。
ステーブルコインは、従来型のコルレス銀行を介さずに企業が資金を移動できるインフラとして、注目を集めている。次の段階として、Yellow Cardは銀行そのものをステーブルコイン決済網につなぎ、ドルへのアクセスを拡大することを目指す。Sony Innovation Fundの参加は、アジア太平洋地域の足場を強化する助けとなる。
ナイジェリア発の配車アプリ向け車両金融のMooveが、UAEのアブダビ政府系投資会社Mubadala Investment Company、トヨタ自動車のグロースステージ向けベンチャーキャピタルWoven Capital、香港の投資会社Ion Pacificが共同主導するシリーズCラウンドで2億5,000万ドルを調達した。企業価値は21億ドルと評価された。
2020年にナイジェリアで創業し、現在はドバイに本社を置くMooveは、14カ国で4万2,000台の配車アプリ車両を保有、運営している。2023年には、この車両の所有と運営の経験を自動運転事業に応用するべく、自動運転によるタクシー、いわゆるロボタクシーを展開する米Waymoと提携した。今後、Waymoのロボタクシーを数十万台保有することを構想している。
今回の調達資金は、自動運転車両の保有数拡大、管理事業の拡大と、充電・メンテナンスをロボットで自動化する24時間稼働の拠点nestsの建設に使われる。今回のラウンドには、英BlueCrest Capital Management、英Sona Asset Management、米Raptor Groupといった新規投資家のほか、米BlackRockやUber、三菱UFJ銀行といった既存投資家も参加した。
ケニアで中古車個人間売買のマーケットプレイス事業を行う日系スタートアップPeach Cars(Cordia Directions)が、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫から合計6億円の融資を調達した。シリーズAとして2025年6月に調達した約15億円に続く調達となる。
2020年に創業した同社のマーケットプレイスには1,500台以上の車両が掲載されている。調達資金は、店舗・拠点数の拡大、車両検査・査定能力の向上、車両融資の提供などに用いる。
日本政策金融公庫からの融資は、新株予約権を取得するスタートアップ支援資金と、中小企業向けの海外展開・事業再編資金で構成されている。
住友ゴム工業の南アフリカ子会社Dunlop Tyres South Africaが、KwaZulu-Natal州の同社製造施設における3年間にわたる17億ランド(160億円)の投資を完了し、生産能力の拡大と新技術の導入を行った。
コンパウンドミキサー、トレッドライン、サイドウォールライン、加硫技術への投資が含まれ、現地市場および輸出市場向けのスポーツユーティリティービークルと軽トラック用タイヤの生産品質を改善する。車両効率の改善と排出量削減に寄与する超低転がり抵抗タイヤの製造にも対応できるようになる。
南アフリカ政府は、新エネルギー車への移行に備えた政策枠組みを整えるため、雇用、現地化、成長に関する2035年目標に照らして成果を検証し、South African Automotive Masterplanを見直す方針だ。今回の投資は、Dunlop Tyres South Africaの南アフリカと同国の産業の将来への長期的なコミットメントを示すものである。
※1ランド=9.9円(モーニングスター、8/16)
Zara、リーバイス、ギャップといったアパレルブランドのサプライヤーであるインドのPearl Globalが、北アフリカへの生産拠点設立を検討している。現地企業との提携を通じて進出する見込みという。米国市場への依存度を低め、欧州顧客向け供給を増やすため、欧州に近い製造拠点を設置する考えだ。グルーパルアパレルブランドは、複数の国で製造を行い、関税や戦争、物流の困難が影響を与えたときに生産拠点を調整できるサプライヤーを求めているという。
Pearl Globalの2021年売上高では米国市場向けが85%以上を占めていたものの、その後約50%にまで減少し、2026年3月期には欧州市場向けが約16~17%を占めたという。同社は現在、インド、バングラデシュ、ベトナム、インドネシア、グアテマラで製造を行っている。2026年3月期 の売上高は約5億2500万ドルだった。南アジアや東南アジアの生産拠点と比べ、北アフリカから欧州への輸送ルートは比較的短距離である。顧客に近い場所で製造を行うことで、配送時間を短縮できるほか、長距離の海上ルートで生じうる混乱の影響を抑えることが可能になる。
すでにアフリカで事業を展開している他のインドのサプライヤーは、欧州からの受注を増やしている。エチオピアで操業するRaymond Lifestyleは生産量を増やしており、ケニアとエチオピアで操業するGokaldas Exportsは2026年後半に生産能力を拡大する予定だ。
アフリカで事業を行うシンガポールの農業商社Olam Agriが、コートジボワールの天然ゴム加工会社Asia Africa Rubber Industry(ASAF)を買収した。買収により、年間加工能力を約352,000トンへとほぼ倍増させる。Olam Agriは2つの加工工場でそれぞれ年間88,000トンの生産能力を保有していた。
コートジボワールでは2026年1月に、天然ゴムの大手サプライヤーSociété africaine de plantations d’hévéas(SAPH)が農園を経営するSociété civile agricole du Sud-Ouestの買収を通じて2,871ヘクタールの農業譲渡地を取得し原材料へのアクセスを強化している。
コートジボワール政府は、ゴム農園から収集した生ラテックスを固形天然ゴムに加工する一次加工施設への投資を促進してきたが、すでに国内栽培分を処理できる水準に達したと判断し、2025年6月に一次加工工場の新規設置や拡大の許可停止を決定した。あわせて、タイヤ製造等のゴム製品の二次加工への投資誘導を進めている。
