アフリカにおける日本企業の動き(2024年10月)

アフリカにおける日本企業の動き(2024年10月)

(写真はAudiomackのサイトから)

毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。

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【南アフリカ】ソニーが出資する南アのゲームパブリッシャーCarry1stが、アフリカで音楽ストリーミングプラットフォームを提供するAudiomackと提携(10/1)

アフリカでゲームパブリッシング事業を展開するCarry1stが、アフリカで音楽ストリーミングプラットフォームを提供するAudiomackとの提携を発表した。Carry1stの決済機能を利用することで、Audiomackはモバイルマネー、デジタルウォレット、銀行振り込みといった幅広い種類の決済手段をユーザーに提供することが可能になる。Carry1stは現在、アフリカの約12カ国で現地通貨での支払いを受け入れている。

Carry1stは本拠を置く南アフリカに加え、ナイジェリア、ケニア、モロッコ、ガーナ、エジプト、アルジェリア、チュニジアを含むアフリカの主要なゲーム市場でゲームパブリッシング事業を展開している。Carry1stは2021年に600万ドルを調達し、2023年にはシリーズBラウンドで2,700万ドルを調達している。2024年1月には、ソニーがアフリカへの自社初の投資としてCarry1stに投資している。

Audiomackの有料ユーザーはサブスクリプション料金を支払うことで、プラットフォーム上で広告を非表示にできるほか、楽曲数の上限なしでダウンロードすることが可能になる。アフリカでは約5,000万人が音楽ストリーミングプラットフォームを利用している。

【南アフリカ】豊田通商子会社CFAOのヘルスケア部門CFAO Healthcareが、仏製薬大手Sanofiの南アフリカにおける一般医薬品製薬会社Opella Healthcare South Africaを買収。日本企業によるアフリカではじめての医薬品製造会社の過半数以上保有(10/2)

豊田通商子会社CFAOのヘルスケア部門CFAO Healthcareが、仏製薬大手Sanofi傘下企業であり南アフリカで一般医薬品の製薬と販売を行うOpella Healthcare South Africaの買収を発表した。CFAOにとって南アフリカのヘルスケア業界への初の投資となる。

CFAO Healthcareは28カ国に拠点を置き、アフリカで医薬品の製造、販売事業を展開している。Sanofiとは2021年以来提携しており、サブサハラアフリカの25カ国における医薬品とワクチンの販売を独占的に行ってきた。

Opella Healthcare South Africaは、Sanofiの南アフリカ子会社Sanofi South Africaの完全子会社となる。今回の買収は、Opella Healthcare South Africa が取り扱ってきたSanofiのコンシューマーヘルスケア(CHC)分野の医薬品ブランドが対象であり、南アフリカにおけるSanofiの医療用医薬品やワクチンは対象外となる。

【アフリカ全般】豊田通商が、アフリカをはじめとする海外顧客への中古車オークション情報の提供を開始(10/8)

豊田通商が、日本の中古車オークションの情報をアフリカをはじめとする海外顧客へ提供するサービスを開始する。

TOYOTA TSUSHO AUCTIONと名付けられたこのサービスでは、豊田通商の提携先が有する日本の中古車オークションにおける出品車両情報を、豊田通商のシステムを通じて、グループ会社で海外への中古車輸出を手掛けるカーペイディーエムのECサイトで提供する。これにより海外の購入希望者は、オークションに出品された際の車両の品質情報を自ら確認した上で、カーペイディーエムを通じて購入したり、オークションへの入札を依頼することができる。車両検査を受けた車両の車両状態票や車両画像を顧客に提供することで、品質情報の透明化を図り、品質に見合った価格の適正化を促す。

【南アフリカ】九州電力子会社キューデン・インターナショナルの出資先であり、南アフリカとインドでC&I顧客向けに太陽光発電システムの導入支援を行うCandi Solarが、新たに1,800万ドルの資金調達(10/10)

南アフリカとインドで商業・産業(C&I)顧客向けに太陽光発電システムの導入支援を提供するスイスのCandi Solarが、スイスのインパクト投資responsAbility Investmentsおよびベルギーの投資会社BIOの気候変動基金から計1,800万ドルを調達した。今回の調達を経て、Candi Solarの累計調達額は4,200万ドルに達した。Candi Solarへは、2024年6月に九州電力の子会社で海外事業を担うキューデン・インターナショナルが出資している。

Candi Solarは2018年に設立された。南アフリカとインドでこれまでに導入を支援した太陽光発電システムの出力容量は計110メガワットを超え、年間約10万4,436トンの二酸化炭素排出量の抑制に貢献している。
IEAの報告書によると、2030年に至るアフリカにおける再生可能エネルギー発電量の拡大は、主として南アフリカで起こり、新たな導入のほぼ40%が南アフリカで行われる見込みだという。

【エチオピア】日系Abalanceの子会社Toyoが6,000万ドルを投じ、エチオピア初の太陽電池工場を建設へ(10/14)

東証スタンダード上場企業Abalanceの子会社でありナスダック上場企業のToyoが、6,000万ドルを投じ、エチオピア初となる太陽電池(ソーラーセル)工場を建設する。Ethiopian Investment Commission (EIC)とMoUを締結した。製造した太陽電池は、米国で建設を予定している自社太陽光パネル工場向けに輸出する。

Hawassaの工業団地に建設するための投資許可も取得し、2025年第1四半期末までに月産1,550個の太陽電池の製造を開始する。Toyoは現在ベトナムで太陽電池を製造している。米国に建設予定で交渉の最終段階にある太陽光パネル工場向けに輸出する予定であったが、米国は10月、ベトナム、マレーシア、タイ、カンボジアからの太陽電池とパネルの輸入に暫定的に関税を導入した。エチオピアからは免税で輸出できるという。

【北アフリカ】ソニー・インタラクティブエンタテインメントが中東北アフリカでゲーム開発支援を行うインキュベーションプログラムを開始(10/21)

ソニーグループのゲーム子会社、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが、中東北アフリカのゲームソフト開発会社やクリエーターを発掘し支援するインキュベーションプログラム、MENA Hello Projectを開始する。プロジェクトベースの開発資金を貸与するほか、プレイステーション5向けのゲームエンジンや映像表現に関するメンターシップやトレーニングを提供する。

同プロジェクトは、2016年に中国を対象に開始し、2023年にはインドを対象に実施した。今回の中東北アフリカが3地域目となり、具体的にはエジプト、モロッコ、チュニジア、サウジアラビア、UAE、バーレーン、イラク、クウェート、オマーン、カタール、ヨルダンを対象とする。すでに中国では15作品以上、インドでは5作品が開発され、発表されている。

【エチオピア】武蔵精密工業の出資先でありエチオピアで電動バイクの組み立て・販売生産を行う日系スタートアップDodai Manufacturingと、エチオピアの政府系投資会社Ethiopian Investment HoldingsがEV普及に向け提携(10/22)

武蔵精密工業の出資先でありエチオピアで電動バイクの組み立て・販売を行う日系スタートアップDodai Manufacturingと、エチオピアの政府系投資会社Ethiopian Investment Holdings(EIH)が、EV普及に向け提携した。EIHは、エチオピア政府の気候変動とグリーン経済開発への取り組みと歩調を合わせ、投資のポートフォリオを代替エネルギーへと多様化する方針を示している。

Dodai Manufacturingは、今後1年以内にアディスアベバに100カ所のバッテリー交換ステーションを設立し、リアルタイムの使用データに基づきサービスを改善し、最適な効率性を実現する計画を明らかにした。バッテリー交換ステーションは3年以内に300カ所へと拡大するとしている。

【ケニア】ケニアの電気バススタートアップBasiGoが、シリーズAラウンドで計4,150万ドルを調達。豊田通商やSBIグループのCVCが投資(10/23)

豊田通商が出資するケニアの電気バススタートアップBasiGoが、シリーズAラウンドで2,400万ドルのエクイティーを調達した。デットで1,750万ドルも調達し、計4,150万ドルを調達したこととなる。エクイティーは汎アフリカのインフラ投資会社Africa50がリードインベスターを務め、豊田通商ケニア子会社CFAO Kenya、豊田通商のCVCであるMobility54、SBIグループのベンチャーキャピタルSBI Investments、SBIが出資するNovastar Venturesなどが投資した。デットは米国国際開発金融公社(DFC)がケニアの事業に対して1,000万ドル、英国の開発金融機関British International Investment(BII)がルワンダの事業に対して750万ドルを拠出した。

BasiGoは2021年に創業し、ケニアで電気バスを製造している。バス運行業者Super MetroやCiti Shuttle に従量課金制でバスを提供しており、2024年3月時点で累計400万人以上の乗客を輸送し、二酸化炭素排出量を計1,175トン抑制したという。現在ケニアとルワンダで119台が運行しているが、今回の調達資金を用いて今後3年間で累計1,000台の提供を目指す。電気バス組み立て生産ラインを拡大し、都市で普及しているマタツと呼ばれる500万ケニアシリング(550万円)強の小型のバスを導入する。BasiGoの電気バスE9 Kubwaモデルは750万ケニアシリング(820万円)となっている。ルワンダでの電気バスサービスの拡大にも取り組む。
※1ケニアシリング=1.1円(モーニングスター、10/24)

【ナイジェリア】ヤマハ発動機が出資するナイジェリアのバイク融資スタートアップMAXと英インパクト投資PASH Globalが、1,000万ドルを投じナイジェリア都市部の充電ステーションネットワークを拡大するため提携(10/23)

ヤマハ発動機の出資先であるナイジェリアのMAXと、英インパクト投資PASH Globalが、1,000万ドルを投じナイジェリアの充電ステーションネットワークを拡大するために提携した。都市部の広範なエリアに充電ステーションを設置する予定で、ナイジェリアの電気自動車への移行を加速させることが目的となる。充電ステーションの設置、運営、メンテナンスを通じた雇用創出効果も期待される。

MAXはナイジェリアで、バイクタクシーのドライバー向けに電動バイクを含む二輪への融資を提供している。本取り組みでは、二輪の他に、三輪車、四輪車も対象となる。再生可能エネルギーとインパクト投資を行うPASH Globalは、再生可能エネルギーと充電インフラに関する専門知識を活用し、充電ステーションの設置に必要な資金調達から設置までを担当し、MAXが融資する電動バイクに充電サービスを提供する。

【ケニア】JBICとみずほ銀行が、ケニアの地熱発電所向けに豊田通商が供給する地熱発電設備に1,440万ドルを協調融資(10/23)

国際協力銀行(JBIC)とみずほ銀行が、ケニアの地熱発電所向けに豊田通商が供給する地熱発電設備に対して融資を提供する。

英エネルギー企業で英開発機関BIIが主要株主であるGlobeleqが、ケニアのMenengaiに建設予定の35メガワットの地熱発電所に対して、豊田通商および同社ケニア法人CFAO Kenyaが供給する発電設備の購入資金として、1,440万ドルを融資する。協調融資に基づき、JBICは864万ドル、みずほ銀行は576万ドルを、地域開発金融である東部南部アフリカ貿易開発銀行(Eastern and Southern African Trade and Development Bank、TDB)に融資し、TDBは同資金をGlobeleqのケニア法人Globeleq Menengai Geothermalに転貸する。2019年5月に輸出クレジットラインを設定していた。

Globeleqは2023年6月に150億シリング(160億円)規模となる地熱発電所建設に着工し、2024年初めに建設を開始した。2025年半ばに完了する予定となっている。豊田通商およびCFAO Kenyaは設計・調達・建設を請け負い、富士電機が地熱蒸気タービンや発電機等の主要機器を供給する。
※1ケニアシリング=1.1円(モーニングスター、10/26)

【ケニア、ウガンダ】住友商事が出資する、ケニアでスマートフォンなどの割賦販売を行うM-Kopaが、自社で組み立てたケニア製スマートフォンをウガンダに輸出へ(10/24)

ケニアでスマートフォンなどの割賦販売を展開するM-Kopaが、自社で組み立てたケニア製スマートフォンをウガンダに輸出し販売する。正式参入を前に、2024年9月に約1,000台を試験的にウガンダに輸出した。現在M-Kopaがウガンダで販売しているのは中国から輸入したスマートフォンで関税の対象だが、ケニアで製造したスマートフォンは同じ東アフリカ共同体(EAC)加盟国であるウガンダでは輸入時の関税が免除される。これにより、ウガンダでのスマートフォンの販売価格を5~7%抑えることが可能だという。価格を下げれば、割賦販売で購入する消費者の債務不履行を削減することができる。

ケニアで、輸入スマートフォンに25%の関税に加えて10%の物品税が導入されたのをきっかけに、M-Kopaは2023年1月、ナイロビでのスマートフォン組み立て製造を開始した。ケニアではM-Kopaの他には、通信会社サファリコムなどが所有するEast Africa Device Assembly Kenyaのみがスマートフォンの製造を行っている。M-Kopaの製造能力は1日あたり約5,000台、月間に換算すると約12万台となり、これまでに約150万台を製造してきた。需要に製造が追い付いていないため、ナイロビ工場の従業員数を現在の300人から2025年1月までに少なくとも500人へと増やすという。

【モロッコ】フランスのマクロン大統領がモロッコを訪問し、三井物産とEDFによる風力発電所の拡張を含む、100億ユーロ相当となる22の投資協定を締結(10/28)

フランスのマクロン大統領がモロッコを訪問し、合計100億ユーロ相当となる22件の投資契約や協定に締結し、エネルギーやインフラを中心とした経済連携と協力を約束した。両国の戦略的パートナーシップに関する共同宣言への調印も行われた。

仏鉄道メーカーAlstomは、モロッコ国鉄との間で最大18両の高速列車を供給することで合意し、TangierとMarrakech間の高速鉄道の建設を支援するとした。仏エネルギーTotalEnergiesは、グリーン水素インフラを開発する。仏エネルギーEngieは、モロッコのリン酸・肥料メーカーOCPとの間で、グリーンアンモニア製造に関する協定を締結した。フランス開発庁(AFD)は、リン酸塩産業の脱炭素化に向けた取り組みを支援するため、3億5,000万ユーロを拠出する。

仏電力公社EDFは、傘下のEDF Renewableと三井物産のコンソーシアムによるTaza風力発電所の拡張を約束した。仏大手海運CMA-CGMは、モロッコの港湾運営Marsa Marocと合弁会社を設立し、今後25年間で2億8,000万ドルを投じ北部のNador West Med港を共同運営するとしてMoUを締結した。仏航空大手Safranは10億ユーロ以上投じて、2万5,000平方メートルのエンジンメンテナンス施設を2026年までに開業する。

【アフリカ全般】ヤマハがアフリカで音楽配信プラットフォームを展開する米Audiomackと協業(10/30)

ヤマハの米国子会社Yamaha Music Innovationsが、米国に本拠を置き主にアフリカ市場で事業を展開する音楽配信プラットフォームAudiomackとの協業を発表した。

Audiomackは、アフリカで1億人を超える登録会員数を持つ。音楽配信プラットフォームでは通常、楽曲をアップロードするアーティスト側にコンテンツの初期登録費用が発生するが、Audiomackでは不要であるため、アフリカのアーティストから支持を集めている。

ヤマハは、アフリカの音楽文化へ貢献するとともに、より深く知ることで電子楽器やコンテンツの開発につなげるため、Audiomackと協業する。最初の取り組みとして、アフリカの若手アーティストを対象に、ナイジェリア人歌手Zinoleeskyのヒット曲「Abanikanda」をリミックスしてAudiomackにアップロードする作品コンテストを実施する。受賞者にはヤマハのシンセサイザーやスピーカー、モニターヘッドフォンが贈られる。

【マダガスカル】住友商事が保有するマダガスカルでのニッケル生産プロジェクトで、生産が再開される(10/31)

住友商事が、マダガスカルのニッケル生産事業Ambatovyプロジェクトにおける生産を徐々に再開すると発表した。同プロジェクトでは生産の安定化と収益性の向上が課題となっており、住友商事は、生産の正常化を最優先としつつ、引き続きプロジェクトを維持するか、売却するかを検討するとしている。

住友商事は2005年に本プロジェクトを開始した。2024年4月から9月にかけて生産した約1万トンという量は、前年同期と比べて半分の生産量なる。住友商事は以前、2025年3月までの1年間のニッケル生産量を3万5,000トンと予想していた。2024年3月期の決算では、本プロジェクトの帳簿価額をゼロに減額し890億円の減損を計上した。今後追加資金が必要となり、回収不能となった場合はさらなる減損につながる可能性があるという。

住友商事の同プロジェクト会社に対する現在の株式保有率は54.2%で、残りは韓国の鉱山会社Korea Mine Rehabilitation and Mineral Resourcesが保有している。

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