
- アフリカのビジネス環境
(写真はザンビアの日立建機工場、 ABP撮影)
毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。
ロッテがブロックチェーンの技術を使ってガーナのカカオ農園で児童労働を監視する実証実験を三井物産などと始めたと発表した。
ロッテはカカオ豆の8割近くをガーナの農園から調達しており、 ガーナ政府が生産農家コミュニティーに割り当てているIDに、 児童労働をモニタリングする監視システム( CLMRS) のリスク情報を紐づける。 CLMRSは、 NPO団体International Cocoa Initiative( ICI) が開発したシステムで、 農家コミュニティー単位で児童労働リスクを把握する仕組み。
日本電気( NEC) と長崎大学熱帯医学研究所、 ケニア中央医学研究所が、 新生児のワクチン接種記録を管理するシステムを開発したと発表した。 2023 年3月まで実証実験を行い、 2023 年中の導入を目指す。
本人認証にあたっては、 新生児の4本の指の指紋と保護者の声という生体認証を用いる。 安定した指紋が取りづらい新生児の指紋認証は、 指紋画像から紋様情報のみを抽出して4本の指の紋様情報の組み合わせで認証する従来とは違う方法を開発した。 この新生児の指紋に保護者の声認証を組み合わせることで、 本人確認を確実にする。 声認証では保護者が自分と子どもの名前を名乗る5秒ほどの時間で認証が可能なため、 登録や認証にあたって保護者とスタッフともに負担が少なく、 医療機関側で特別な手順やスキルの習得を必要とせずに導入することができる。
このシステムが導入されれば、 出生から24カ月の間に推奨されるワクチンの接種記録を管理することができる。 ワクチンを打てていない子どもの数などを把握しフォローアップする仕組みを構築することにも資する。 NECによると、 出生時からのワクチン接種記録を生体認証を用いた本人確認によって管理するシステムは世界で初めてだという。
豊田通商が、 ケニアのNakuru郡のMenengai地熱発電所に関して、 英Globeleqとの間で建設工事請負契約( EPC) および長期保守契約( LTSA) を締結した。
Menengai地熱発電所の発電容量は35メガワット、 投資額は1億800万ドルとなる。 2023 年第1四半期に建設を開始し2025年から商業運転を行う。 2022 年12月に、 アフリカ開発銀行、 東部南部アフリカ貿易開発銀行、 フィンランド政府系投資会社Finnfundが融資に合意していた。
Globeleqは英国に拠点を置きアフリカで事業を展開する独立系発電事業者( IPP) で、 地熱発電所を運営するのは今回が初となる。 豊田通商がEPCとなり、 蒸気タービンや発電機は富士電機が供給する。 豊田通商は、 ケニアでOlkaria IおよびIV地熱発電所のEPCを実施した実績を持つ。 ケニアの地熱開発公社Geothermal Development Company( GDC) が蒸気の供給を担い、 発電された電力は国営送配電会社Kenya Powerに販売され、 全国の送電網へと供給される。
日立エナジーが、 エジプト送電公社( Egyptian Electricity Transmission Company、 EETC) 向けに送電線の電圧安定化を図り電力送電能力を向上させる装置であるSTATCOM( 自励式無効電力補償装置) を導入した。
200 メガボルトアンペアのSTATCOMを、 砂漠の農地化計画が進められているエジプト南西部のOwainatに所在する220キロボルトの変電所に接続する。 導入により、 電圧安定性が向上し、 異なるネットワーク条件下でもスムースな電圧プロファイルが提供されるため、 送電網の電力伝達能力を高めることができる。
エジプト政府は、 アフリカと欧州間の電力送電のハブとなることを目指しており、 安定した送電はその第一歩となる。 送電網の送電容量の拡大にもつながるため、 国内の砂漠や遠隔地の開発や人口急増への対応にも寄与する。
日立製作所の欧州子会社Hitachi Europeが、 ケニアの電気自動車製造スタートアップRoam( 旧Opibus) の電動バイクと電気バスの普及に協力する。 英国王室が設立した環境賞Earthshot PrizeでRoamがClean our Air部門のファイナリストに選ばれたことをきっかけに、 同賞を支援する日立製作所との提携が実現した。 日立製作所は都市部におけるモビリティーやクリーンエネルギーに技術的な強みを持つ。
Roamは2017年にスウェーデンの大学による研究プロジェクトとして発足した。 アフリカ向けに自社で設計した電動バイクと電気バスをケニアで組み立て、 手頃な価格で販売している。 累計調達額は750万ドル以上で、 アフリカで家庭向け太陽光発電キットを割賦販売するM - Kopaとのパイロット事業も成功裏に終えた。 2026 年までに電動バイクは15万台、 電気バスは800台まで年間生産台数を増やすことを目指している。
ケニアではRoam以外にも、 スタートアップのBasiGoが中国の電気自動車大手Build Your Dreams Automotive( BYD) 製の電気バスを組み立てている。 国営送配電会社Kenya Powerは、 自社で使う自動車とバイクを段階的に電気自動車に切り替えるとして、 4, 000 万ケニアシリング( 4, 000 万円) を投じてピックアップトラック2台と乗用車1台を購入する。 ケニアではこれまでに1, 000 台以上の電気自動車が購入されている。
日立建機の南アフリカ子会社Hitachi Construction Machinery Southern Africaが、 建設機械の部品再生事業を開始する。 20~ 120 トンクラスの中大型油圧ショベルや中型ホイールローダなどの建機を対象に、 油圧シリンダー、 油圧ポンプ、 旋回装置、 走行装置などの純正部品を回収して、 南アフリカの工場で分解や修理を行い、 新品同様の性能を持つ再生部品として提供する。
同社は2012年からザンビアで、 鉱山機械を対象に同様の事業を現地子会社Hitachi Construction Machinery Zambiaを通じて行っている。 今回、 対象を建設機械に拡大し、 まずは南アフリカで開始して、 将来的には南部アフリカに事業範囲を広げる。 顧客に対し保証付きの再生部品を販売できるとともに、 国内で再生された部品を供給できるためリードタイムと輸送コストを抑えることができる。 顧客にとっては機械のライフサイクルコストを削減させることができる。 部品の再生は二酸化炭素の排出量や産業廃棄物の削減にも繋がる。
部品再生工場はヨハネスブルグに所在し、 延床面積は1, 300 平方メートルである。
アステラス製薬が、 エジプトで慢性腎臓病に伴う貧血である腎性貧血の経口治療薬を発売した。 エジプトで腎性貧血患者向けの経口投与による治療薬が発売されるのは今回が初となる。
慢性腎臓病はエジプトにおける死因の上位であり、 慢性腎臓病の医療費は2009年から2019年にかけて36 % も増加した。 腎性貧血はその合併症で、 ヘモグロビン値の低下により起こる。 貧血は診断や治療時に過小評価される傾向があるだけでなく、 治療法も限られていることが多い。
今回発売された治療薬は、 赤血球の生成を促しヘモグロビン濃度を増加・ 維持する効果がある。 経口薬であり効果が高いことから、 従来の治療法と比べて費用対効果が高いことも特徴となる。