- アフリカのビジネス環境
アフリカにおける日本企業の動き(2022年6月)
(写真は豊田通商が取り扱うCASEのトラクター、ABP撮影)
毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。
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【セネガル】豊田通商が仏Eiffage Genie Civil、インドのVA Tech Wabagとともに、セネガルでの海水淡水化プラントの建設と設備運営を約1億4,600万ユーロで受注(6/1)
豊田通商は、セネガル国営水道公社(Société Nationale des Eaux du Sénégal、SONES)から、仏建設会社Eiffage Génie Civilおよびインドのエンジニアリング会社VA Tech Wabagとのコンソーシアムの一員として、首都ダカールのMamellesにおける海水淡水化プラントの建設と設備運営を受注した。
契約の総額は約1億4,600万ユーロで、西アフリカで最大規模となる日量5万立方メートルの飲料水を製造して100万人に飲料水を供給する。将来的に日量10万立方メートルまで拡張される可能性がある。本プロジェクトではダカールでの飲料水の供給を改善するため、少なくとも243kmの給水パイプの改修も行う。プラントは2025年の完成を予定しており、コンソーシアムはその後2年間の運営メンテナンスを行う。土地の確保と地形の問題から、逆浸透膜技術をベースにしたコンパクトなシステムを採用する予定という。
独立行政法人国際協力機構(JICA)が2億ユーロを円借款にて融資する。日本工営がプロジェクト管理を行う。セネガル政府は2035年までに飲料水への普遍的なアクセスを実現する国家計画le Plan Sénégal Émergent(PSE)を掲げており、本プロジェクトはその一部となる。
【ケニア】豊田通商のCVCであるMobility 54が、ケニアの自動車アフターサービスマーケットプレイスSparepapに投資(6/8)
豊田通商のCVCであるMobility 54が、ケニアの自動車アフターサービスマーケットプレイスSparepapに投資し業務提携を結んだ。
Sparepapは2019年にケニアで設立された。同社のアプリを使うと、Sparepapが認証した信頼できる販売業者が出店する自動車部品を比較検討の上購入し、配達を受けることができる。整備士を見つけたり、メンテナンスサービスを予約することもできる。今後は自動車の緊急事態に対応するための金融サービスや、他社との提携を通じたデジタル自動車保険の提供も予定している。
アフリカには多くの中古車が輸入されている一方で、自動車のアフターサービスはインフォーマル事業者を中心にオフラインで提供されることが一般的で、非効率やサービスの品質が課題となっている。
【エジプト】住友電工がエジプトに9番目となる同社世界最大規模の自動車用ワイヤーハーネス工場を設立へ(6/8)
住友電気工業のエジプト子会社Sumitomo Electrical Wiring Systems Egyptが、自動車用ケーブル工場設立に向けて、投資・フリーゾーン庁(General Authority for Free Zones and Investment、GAFI)とMoUを締結した。10th of Ramadan Cityの貿易特区において15万平方メートルの敷地に工場を設立する。住友電工にとって単一製品の製造工場として世界最大規模となる。
住友電工は、自動車用ケーブルをすでにエジプトの8つの工場で製造している。新工場への投資規模は1億~1億5,000万ドルで、稼働開始は2023年を予定しているという。製造した製品の全量が中東または欧州の自動車メーカー向けに輸出される。
【ナイジェリア】味の素が出資するナイジェリアの大手食品メーカープロマシドールが売却を検討と報じられる(6/10)
味の素が出資するナイジェリアの食品メーカーPromasidor Holdings(プロマシドール)が売却を検討していると報じられた。関係者によると、潜在的な買い手からの初期的な関心を測る初期の段階にあり、売却を見送る可能性もあるという。味の素は自社が保有するプロマシドール株に関して何も決定していないと述べており、プロマシドールはコメントを拒否している。
味の素は2016年にプロマシドールの株式33.3%を5億3,200万ドルで取得し、現在でも保持していると見られる。当時のプロマシドールの評価額は、EBITDAの16倍に当たる約16億ドルだった。
プロマシドールは1979年に設立された。アフリカ36カ国で、粉末飲料、風味調味料、粉状ミルク、シリアル等の製造、販売を行っている。
【タンザニア】電力事業を展開する日系スタートアップWasshaがシリーズCラウンドで11億4,000万円を調達(6/12)
タンザニアで電力事業を展開する日系スタートアップWasshaが、シリーズCラウンドで11億4,000万円を調達した。このラウンドには投資家として第一生命保険、ダイキン工業、ベンチャーキャピタルのMistletoe Japan、ヤマハ発動機、東京大学エッジキャピタルパートナーズが参加した。累積調達額は約35億円となった。
Wasshaは2013年に創業した。非電化地域の小規模小売店に太陽光パネルや充電池、LEDランタン、ラジオ、タブレットなどを供与し、店舗は住人にそれらを貸し出して充電時に課金する。これまで5,100店舗以上の小規模小売店と提携したという。
今回資金調達した投資家のうち、ダイキン工業とはシリーズBラウンドでの投資の後、2019年にジョイントベンチャーを立ち上げ、エアコンのサブスク事業を共同展開している。
【ケニア】ごみ焼却発電プラントを手掛ける日立造船子会社Hitachi Zosen Inovaがケニア進出へ(6/15)
日立造船の100%子会社で、ごみ焼却発電プラントの設計、建設、保守などを手がけるスイスのHitachi Zosen Inova(HZI)が、ケニアのエンジニアリング会社Sintmond Group(Sintmond)との提携を通じてケニアに進出した。
両社はケニアに廃棄物処理プラントを建設し、廃棄物を使った発電や燃料製造に取り組む。2030年までにナイロビの廃棄物をゼロにすることを目標とする。廃棄物処理プラントを建設する土地はすでに特定しており、実現可能性調査がまもなく完了する。
アフリカでは現在、廃棄物全体の4%しかリサイクルされていない。アフリカ連合は2023年までに都市で発生する廃棄物の少なくとも50%をリサイクルするという目標を掲げている。
首都ナイロビでは、現在1日あたり5,000トン以上の廃棄物が発生している。そのほとんどは、1975年に開設され2001年から満杯状態にあるDandoraにある投棄場に送られている。ケニアの国家環境管理局National Environmental Management Authority(NEMA)の統計によれば、ケニアでは推定で1日あたり2万2,000トン、年間800万トンの廃棄物が発生し、このうち40%は都市部で発生している。
都市化の進行により都市部では2030年までに年間550万トンの廃棄物が発生すると推定されている。ケニアの廃棄物のうち、生ゴミが60~70%、プラスチックが20%、紙が10%、金属が2%、医療廃棄物が1%を占めるとされる。
【モロッコ】三井物産がモロッコの養鶏最大手Zalar Holdingに追加出資、出資比率を4割へ引き上げ(6/16)
三井物産がモロッコの養鶏最大手Zalar Holdingに4,100万ドルを追加出資した。
三井物産は2018年に同社に約30億円を出資し、あわせて戦略的業務提携を締結した。2021年にはIFCの持ち分を買い取っており、今回で出資比率は4割程度の2番手株主となったとされる。これまで知見の共有などを行ってきたが、今回の増資により、さらなるシナジーの追求とセネガルやモーリタニアでの事業拡大を行う。
Zalar Holdingは1974年に設立された鶏肉生産会社。モロッコとセネガルで、穀物の輸入や飼料の製造、ブロイラーの育成と食肉加工までを一貫して行う垂直統合事業を行っている。現在の生産能力は年間で約6000万羽。
【ウガンダ】ウガンダでバイクタクシーへのリースやアセットファイナンスを提供するTugendeがプレシリーズBラウンドでの調達を完了。豊田通商のCVCであるMobility54も参加(6/20)
アセットファイナンス事業を展開するウガンダのスタートアップTugendeが、プレシリーズBラウンドでの調達完了を発表した。ベンチャーキャピタルPartech Africaがリードインベスターを務め、既存投資家からは豊田通商のCVCであるMobility 54、Enza、Global Partnershipsが投資し、新興国の女性向け金融サービスへの投融資を行うファンドWomen's World Banking Capital Partners II(WWBCP II)などの新規投資家も投資した。調達金額は公開されていない。
Tugendeは2020年後半から2021年初頭にかけて、シリーズAラウンドで合計990万ドルを調達している。Mobility 54とPartech Africaが共同でリードインベスターを務め、Global PartnershipsやEnza Capital、その他複数のエンジェル投資家が投資した。
Tugendeは2012年に設立された。バイクタクシー、三輪自動車、小型バス、自動車、冷蔵庫、ボートエンジンといった資産を使った事業を行うインフォーマル事業者に対して、事業の売上情報等をもとに算出したクレジットスコアに基づき融資を行っている。バイクタクシーのリース事業では医療保険や生命保険、安全装備、トレーニングも提供している。
これまでに同社は、ウガンダとケニアで5万5,000人以上にサービスを提供してきた。コロナ禍でのロックダウンを乗り越えて事業を成長させており、ウガンダに23カ所、ケニアに10カ所の支店を構え、900人以上の従業員を抱えている。
【アフリカ全般】アフリカでの展開を目指す伊藤忠商事が出資するドイツのドローンスタートアップWingcopterが、シリーズA拡張ラウンドで4,200万ドルを調達(6/21)
ドイツのドローンスタートアップWingcopterが、シリーズA拡張ラウンドで4,200万ドルを調達した。独小売大手REWE Groupや独Salvia、独XAI technologiesがリードインベスターを務め、伊藤忠商事や、独Futury Capitalや米Xplorer Capitalも投資した。今回の調達を経てWingcopterのエクイティによる調達額は累計6,000万ドルを超えた。
Wingcopterは、固定翼ドローンとeVTOL(電動垂直離着陸機)のメーカーで、あわせて医療用品、小包、機器のスペアパーツ、食料品などのラストマイル配送を行っている。2022年5月にはガーナのContinental Dronesを認定パートナーとして任命し、サブサハラアフリカで必需品を配送するため今後5年間で1万2,000機のドローンを配備する目標を発表した。伊藤忠商事は日本における認定パートナーにもなっている。
調達資金はアフリカや欧州、米国などでの事業拡大やドローンの増産に使用する。米国での展開に向けては、最近米国連邦航空局(FAA)の認可を取得した。ドイツに開設した同社の工場では、製造プロセスの一部を自動化して年間数千台のドローンの製造を行う計画となっている。2022年および2023年の受注をすでに確保しており、新製品を開発するための研究開発や、数カ月以内に雇用する計80人の従業員に資金を投じる。
【ナイジェリア】ナイジェリアの映画制作会社LaVida Studiosが、電通傘下のコンテンツ配給会社米The Story Labと10作品の制作と配給に関して独占的契約を締結(6/22)
ナイジェリアの映画制作会社LaVida Studiosが、ナイジェリアの投資銀行PAC Capitalから制作への投資5,000万ドルを調達し、電通傘下のコンテンツ配給会社である米The Story Labと10作品の配給に関して契約を締結した。今後3年間、アフリカを舞台とした10本の映画とテレビ番組をLaVida Studiosが独占的に制作する。
LaVida StudiosはナイジェリアのNollywood映画産業の中心地であるラゴスに所在する。LaVida Studiosと電通は、アフリカ国際映画祭(African International Film Festival、AFRIFF)と協力して合同イニシアチブの組成を計画している。このイニシアチブでは、世界中の視聴者を魅了するようなオリジナルの作品を創造できるアフリカの作家を採用し、支援する。
【アフリカ全般】SBIホールディングス傘下のSBIアフリカが、アフリカでコマツの建機を扱う現地正規販売代理店に対しアセットファイナンスを活用した建機の輸出を開始(6/24)
SBIホールディングス傘下のSBIアフリカが、小松製作所子会社の欧州コマツのアフリカ正規販売代理店に対して、アセットファイナンスを活用した建機の輸出を行う。まずはケニアから開始し、タンザニアやガーナへと拡大する。最大で年間100億円超の利益を見込む。
アフリカは金、銅の他、電気自動車のバッテリーに用いるコバルトなどレアメタルを豊富に保有するため、新規建設機械の需要が高まると判断したという。
【ケニア】米CASEの農機を取り扱う豊田通商子会社CFAO KenyaとCFAO Agriが、農機購入額の最大80%の融資を提供するべくケニアの金融機関Equity Groupと提携(6/27)
豊田通商子会社でケニアに拠点を置くCFAO KenyaとCFAO Agriは、ケニアの大手銀行Equity Groupと提携し、農家向けに農機の購入価格最大80%まで融資を提供する。また、融資の返済タイミングを農作業のタイミングに合わせて調整することを可能とした。
Equity Groupによると、ケニアのGDPの33%、雇用の40%を農業が占めている。雇用の40%は農村で、農業生産額の65%は外貨を得ているという。3社は、小規模農家の生産性を向上し、自給自足農業から商業農業への移行を支援することを目的に、農機と肥料およびそれらに対する融資の提供を行う。
【ケニア】JICAが出資するケニアの有機廃棄物リサイクルスタートアップSanergyが、英鉱山会社Anglo Americanから資金調達(6/28)
英鉱山会社Anglo Americanが、ケニアの有機廃棄物リサイクルスタートアップSanergyの最新の資金調達ラウンドにリードインベスターとして参加した。
Sanergyはケニアの首都ナイロビのスラム街に簡易トイレを設置し、トイレに溜まった人糞を回収して、有機肥料にしたり、人糞を餌に育てた昆虫を原材料に家畜飼料を製造して農家に販売している。2011年にパイロットサイトを立ち上げ、2021年から商業規模で事業を行っている。2つ目のリサイクル工場の建設を間もなく開始する予定となっている。
Anglo Americanは、Sanergyがアフリカ全体、南米、アジアなどへ事業を拡大する手助けをする。今回の投資額の一部は、Sanergyの事業を通じて削減される二酸化炭素排出量の検証にも使われる。Anglo Americanは2040年までに事業全体でのカーボンニュートラルの達成を目指しているため、カーボンクレジットを取得したい狙いがある。
【ナイジェリア】三菱UFJのCVCが出資するナイジェリアの自動車融資スタートアップMooveが、英開発金融British International Investmentから2,000万ドルを調達(6/30)
英開発金融British International Investment(BII、旧CDC Group)が、ナイジェリアの自動車融資スタートアップMooveに2,000万ドルを投資すると発表した。
Mooveは2020年から配車サービスのドライバー向けの自動車ローンを提供している。ドライバーの売上やパフォーマンスを分析する独自のクレジットスコアリングシステムで算出したスコアに基づき、車両を担保とした融資を提供している。ナイジェリアでの事業開始後、国内事業を拡大させるだけでなく、ガーナ、ケニア、ウガンダ、南アフリカといったアフリカ諸国や、欧州、中東、アジアにも進出してきた。
今回のBIIからの調達資金を使って、Mooveは燃費の優れた新車をナイジェリアのラゴスへと輸入しドライバーに供給する。
ナイジェリアはBIIにとってアフリカ最大の投資先で、2020年時点で43のファンドを通じて国内の100社以上を投資先に抱え、運用資産残高は5億7,000万ドル近くに達していた。