エチオピア

エチオピア進出: 経済近代化の入口に立つ、まさにフロンティア。「アフリカの中国」として国家主導の成長を目指す

エチオピア

経済・ビジネス指標

正式名称
エチオピア連邦民主共和国
人口
1億2,869万人(2023年、世銀)
アフリカ2位
宗教
キリスト教、イスラム教他(外務省)
使用言語
アムハラ語、オロモ語、英語等(外務省)
GDP
1,450億ドル(2024年予測値、IMF、名目ベース)
アフリカ6位
GDP成長率(経済成長率)
6.1%(2024年予測値、IMF、実質ベース)
アフリカ7位
一人当たりGDP
1,350ドル(2024年予測値、IMF、名目ベース)
アフリカ29位
GDP構成比
農業34.8%、工業21.6%、サービス43.6%(2017年予測値、CIA)
消費者物価上昇率
23.9%(2024年予測値、IMF、年平均)
政府債務残高GDP比率
33.6%(2024年予測値、IMF、年平均)
輸出額上位3品目
コーヒー(33%)、乾燥野菜(8%)、切り花(6%)(2023年、OEC)
輸出額上位3カ国
米国(12%)、中国(10%)、UAE(8%)(2023年、OEC)
輸入額上位3品目
精製石油(13%)、肥料原料(4%)、粗糖(3%)(2023年、OEC)
輸入額上位3カ国
中国(26%)、ジブチ(16%)、インド(7%)(2023年、OEC)
直接投資額(フロー)
32.6億ドル(2023年、UNCTAD)
工業競争力指数
世界143位(2021年、UNIDO)
都市人口・都市人口比率
2,446万人・21.7%(2020年予測値、国連)
アフリカ6位
中位年齢(人口の中央の年齢)
19歳(2023年、国連)
現地日系企業数
14社(2024年、アフリカビジネスパートナーズ)
アフリカ14位
中間層比率
28.0%(2015年、アフリカビジネスパートナーズ)
ジニ係数
35(2015年、世銀)
アフリカ9位
加盟経済共同体
COMESA(東・南アフリカ市場共同体)
IGAD(政府間開発機構)
Doing Business ランキング
世界159位、アフリカ34位(2020年、世銀)
腐敗指数
世界99位、アフリカ18位(2024年、世銀)
デモクラシー指数
世界116位、アフリカ28位(2024年、EIU)
リスク指数
カントリーリスクC、ビジネス環境D(2022年、coface)
携帯電話普及率
57%(2022年、ITU)
インターネット利用率
17%(2021年、ITU)
銀行口座普及率
35%(2017年、世銀)
モバイルマネー普及率
0.3%(2017年、世銀)
次回の大統領選挙年
2026年

※「中間層比率」はこちら、「現地日系企業数」はこちらにアフリカ各国のデータと算出根拠が説明されています。

経済構造と事業環境

巨大人口を抱える一党支配国、中国型の経済成長を目指す

日本の約3倍の国土に1億2,000万人の人口を抱えるエチオピアは、中国型の統制経済による発展を目指している。議会内閣制であるが議席の75%は与党が占め、実質的に一党支配で、電力、通信、金融、航空、物流などの主要産業は国有企業が支配している。中国がたどってきたように、政府主導で鉄道、電力、道路、工業団地、都市開発などのインフラ投資を急ピッチで進め、安価な労働力を活かした輸出型製造業立国を志向するなど、「アフリカの中国」となる道のりの端緒にある。

暦や言語、宗教などに独自の文化を持つ。貿易や人の動きでは中東諸国とのつながりが強い。

経済の開放は斬新的、それがゆえの製造業の厚みと自給自足経済

1991年に社会主義政権が倒れたあと、国家主導で斬新的に経済開放が行われてきた。輸入や外資の投資を制限してきたがゆえに、すべてのものを国内で製造してきた経緯があり、輸入品に圧迫される他のアフリカに比べると国産品が多く製造業に厚みがある。しかし一方で、外貨の参入を制限してきたことが、製造業をはじめとする産業の近代化を妨げてきたともいえる。2018年に就任した現首相は、経済開放を政策の柱とし、通信や金融への外資参入を認め、外資進出に関する規制の緩和を行った。2025年には証券取引所が発足、2026年にはWTO加盟を目指すなど、「普通の国」に向けて少しずつ歩を進めている。

内陸国と外貨不足が弱点

内陸国であり、長距離の鉄道や陸路でつながる隣国ジブチの港に海運を依存しており、貿易にコストがかかる。輸出型製造業を目指しているとはいえ、現状はコーヒーや食肉などに輸出品が限られ、外貨収入が少ない。前述の外資への規制も相まり、地政学的にも構造的にも外貨不足になりやすいところ、2020年の内戦やウクライナ紛争による世界的な金利高が拍車をかけ、2023年12月にデフォルトに陥った。

その後IMFによる融資や経済改革を経て、為替の変動や外貨不足は小康状態を保っている。かつては制度的に外貨保有ができず利益の本国還流が困難だったが、デフォルト後の経済改革によって、いずれも可能となった。このように状況は良くなっているといえ、物流と外貨は常に課題となる。

エチオピアの首都アディスアベバの町並み、ABP撮影

現地の代表的な企業

エチオピア航空は、アフリカ最大の航空会社であり、アディスアベバのボレ国際空港はアフリカと他の地域を結ぶ、重要なハブ空港となっている。130を超える国際線を飛ばしており、日本との間にも直行便がある。通信会社エチオテレコムは、近年とくに積極的なサービス展開を行っており、エチオピアにモバイルマネーを一気に普及させた。内陸国の物流を担うのはEthiopian Shipping and Logistics。これら企業はいずれも国有大企業である。

関連記事:携帯通信最後のフロンティア、エチオピアがモバイルマネーを開始

民間企業では、エチオピアとサウジアラビアにルーツを持つ財閥MIDROCは、石油販売、資源輸出、鉄鋼、セメント、建設、ホテル、不動産、食品、小売とあらゆる産業を抱える巨大財閥である。最近はスーパーマーケットのチェーン展開を開始し、エチオピアで進んでいなかった小売の近代化に一役買っている。Kerchansheもエチオピアでコーヒー農園から自動車販売まで行う財閥である。ナイジェリアのダンゴテ財閥はエチオピアでもセメント工場を展開する。

多国籍企業では、ユニリーバが石鹸や洗剤、調味料の製造を行うほか、ペプシコが食品の製造を行っている。インドミーはインスタントヌードルを製造し、ハイネケンと仏カステルがビールを、コカ・コーラとペプシが飲料を製造している。

エチオピアでは綿花が栽培されており、縫製工場が多く存在する。縫製専門の工業団地も多く存在し、人件費は相対的に安く、欧州への免税輸出も可能なことから、アパレル企業の進出も多い。

エチオピアに進出する日本企業

国有企業に独占されてきたからこそ競争相手が少ないことは、利点でもある。日本たばこ産業2016年、国営独占企業だったたばこ会社を買収し、エチオピア唯一のたばこメーカーとなった。住友商事2021年、エチオピア初の外資への通信ライセンス開放に伴い、ケニアSafaricom社、英Vodafoneらとともに通信事業に参入した。サファリコムエチオピアと名付けられた通信会社は、現在国営エチオテレコム以外の唯一の通信会社である。ケニアで培ったモバイルマネーを起点としたサービスをエチオピアでも展開する。

エチオテレコム(左)とサファリコムエチオピア(右)、ABP撮影

伊藤忠商事は、コーヒーやごまを日本に輸入するとともに、現地代理店を通じていすゞ車の組み立てと販売を行っている。エチオピアはコーヒーの発祥地であり、その豆は世界的にも品質が良く著名で、日本に輸出されカフェチェーンや喫茶店、コーヒー飲料に用いられている。日本へは、高地であることを活かした花卉も輸出されている。TOPPAN2023年、現地企業等と合弁企業を設立し、電子パスポートなどの製造を行うことで合意した。東証スタンダード上場企業Abalanceは、子会社を通じてエチオピア初となる太陽電池(ソーラーセル)工場を建設する。ベトナムで製造し米国向けに輸出していたが、関税措置が変更となったため、エチオピアへ製造拠点を移す。

日系スタートアップのDodaiは、電動バイクの製造と販売を行っている。andu ametは、エチオピアの特産品である羊皮を使った高級革製品を製造・販売している。

エチオピアに進出しているすべての日本企業については、「アフリカビジネスに関わる日本企業リスト」で紹介しています。

関連記事:アフリカの日系スタートアップ、注目すべき7社(下)Dodai-ガソリン自動車の輸入を禁止したクレイジーなエチオピアで、電動バイクを組み立て販売

関連記事:エチオピアにおける日本企業の動き(今月のアフリカにおける日本企業の動き

エチオピアの事業機会

エチオピアの市場・産業界は、近代化を進める黎明期にあり、あらゆる需要が満たされていない。とくに現地の製造業は近代化のための原料供給や投資、技術協力を求めており、業務提携や合弁の設立といった組み合わせが可能である。諸々の困難はあれど、日本たばこ産業のような長期的な視野に立った製造業投資もやる価値はある。すでにシェアや販路を広く持つものの、近代化でつまづいている現地製造業は多く存在している。

いわゆるリープフロッグにより、一気に進化が進むこともある。たとえばエチオテレコムとサファリコムエチオピアが展開するモバイルマネーは、このたった4年間で普及し、そのスピードはケニアでモバイルマネーが普及したときよりも早い。2024年に政府が、世界で始めてとなるガソリン車の輸入禁止を決めたことをきっかけにして、いまではアフリカでもっとも多くの電気自動車が路上を走り回っている。フロンティアとして事業をはじめるのにうってつけの状況にあるのがエチオピアである。

関連記事:世界に先駆けガソリン車輸入を禁止。エチオピアで電気自動車が驚くスピードで普及

エチオピア政府も製造業への投資や産業の近代化への取り組みについては積極的に誘致し、支援する姿勢にある。一方で、エチオピアでは「政府がルール」であり、その一存でものごとが決まることに留意が必要だ。とくに新しい事業を行う際は、政府と歩調をあわせながら進めることが望ましい。また、支援する姿勢はあっても、政策と運用や取り組み同士の整合性がとれていない場合がまだ多いのが課題である。

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