アフリカにおける日本企業の動き(2023年10月)

アフリカにおける日本企業の動き(2023年10月)

(写真はいすゞ自動車のエチオピア工場、Kakiウェブサイトより)

毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。

【南アフリカ】トヨタ自動車の南ア子会社が、第2世代新型MIRAIを用いた国産水素を燃料とするデモ走行を、石油化学大手Sasolと水素輸送Air Productsの南ア現地企業とともに実施(10/2)

トヨタ自動車の南アフリカ子会社Toyota South Africa Motors(TSAM)、南アフリカの石油化学大手Sasol、米産業ガスAir Productsの南アフリカ子会社の3社による、水素を燃料とする燃料電池車のデモ走行が行われた。トヨタ自動車の第2世代の新型MIRAIの乗用車に、Sasolが製造した水素が充填された。水素はAir Productsの移動式水素供給技術を使った水素チューブトレーラーを用いて輸送された。

3社は、グリーン水素を用いた輸送事業の商業化を目指しており、大型トラックなどによる長距離輸送や鉱山輸送、鉄鋼産業向けといった産業用途に主眼をおいている。これらの領域は、炭素排出量の削減が困難で、電化が難しい。加えて、MIRAI車両はわずか6.8kgの水素で650キロメートルを走行できるだけでなく、水素のエネルギー密度は出力や性能を損なうことなく大きな積載量を長距離輸送することが可能であるため、他の動力源と比べて水素を燃料として用いることに優位性がある。

南アフリカ政府は、グリーン水素の商業利用に関する戦略の策定を進めており、グリーン水素の輸出とともに、鉱山車両や長距離トラック輸送、鉄鋼、化学薬品、肥料の製造や持続可能な航空燃料(SAF)といった領域における国内利用に重点を置くものと見られており、3社の取り組みはこの戦略に沿うものとなる。

Sasolは、同社のグリーン水素戦略の一環として、主要な幹線道路で水素ステーションを建設するためにパートナーを探している。Air Productsは、アポロ計画でNASAに水素を供給するなど、水素に関して60年の経験を有する企業で、南アフリカ最大規模となる産業用水素パイプライン事業を運営している。

【南アフリカ】住友ゴム工業の南アフリカ子会社Sumitomo Rubber South Africaが、Dunlopタイヤを製造する工場に17億ランドを投じると発表(10/3)

住友ゴム工業の南アフリカ子会社Sumitomo Rubber South Africa(SRSA)が、南アフリカでDunlopブランドのタイヤを製造する既存工場に17億ランド(130億円)を新規投資する発表した。KwaZulu-Natal州のLadysmithに所在する工場へ設備投資を行い、乗用車用ラジアルタイヤの生産能力や生産効率を高めるほか、より幅広い種類のタイヤを製造できるようにする。工場から排出される廃棄物を60%削減し、電力消費量をさらに減らすことも可能になる。

SRSAは、南アフリカでDunlopのタイヤを製造し、SumitomoとFalkenブランドのタイヤを販売している。南アフリカの新車装着時タイヤ市場(OE市場)の20%は、今回の投資対象である工場で製造されており、同工場は、アフリカ最大のタイヤ工場であるという。
※1ランド=7.7円(モーニングスター、10/3)

【ケニア】ケニアで配車アプリドライバー向け融資を行う日系スタートアップHakki AfricaがシリーズBで15億8,000万円を調達(10/10)

ケニアで配車アプリドライバー向け中古車ファイナンスを行う日系スタートアップHakki Africaが、シリーズBのファーストクローズにおいて15億8,000万円の調達を行った。そのうち10億円は同社への直接融資となった。

融資は、匿名のメガバンクと北國銀行が担った。エクイティーはSBIホールディングスをリードインベスターとし、QR インベストメント(北國フィナンシャルイベストメント)、DEEPCORE、HAKOBUNE、ミュージックセキュリティーズが参加した。

Hakki Africaは2019年に設立された。2022年にシードラウンドで3,000万円、シリーズAラウンドでデット含め2億2,000万円を調達していた。

【南アフリカ、ケニア、ナイジェリア、ガーナ】ソニーグループが、アフリカのエンタメ関連アーリーステージスタートアップに特化したファンドSony Innovation Fund: Africaの立ち上げを発表(10/11)

ソニーグループがCVCのSony Ventures Corporation(SVC)を通じ、アフリカのエンターテイメント関連スタートアップに特化した投資ファンドSony Innovation Fund: Africa(SIF: AF)を立ち上げたと発表した。ゲーム、音楽、映画、コンテンツ配信などのアーリーステージのスタートアップに計1,000万ドルを投資する。アフリカのエンターテイメント・テクノロジー領域に焦点をあてるファンドの設立は珍しい。

1社あたり25万~100万ドルを投じる。南アフリカ、ケニア、ナイジェリア、ガーナでの投資から開始する。ファンドの運営ではIFC(国際金融公社)と提携する。

SVCは2016年に1号ファンドを組成して以来、4つのファンドを通じて、エンターテインメント、ロボット工学、AI、モビリティー、フィンテック、ヘルスケア、ロジスティクス、SaaSなどの様々なスタートアップ約160社に投資を行ってきた。日本、インド、イスラエル、欧州、米国にオフィスを置いている。

2022年には3号ファンドの最初の資金調達で2億1,500万ドルを調達している。投資先にはテクノロジーの提供やクリエイターとのコラボレーション、知財管理やコンテンツマーケティングの支援などを行う。SVCのこれまでの投資先企業の約40%がソニーグループと戦略的提携を結んでいる。

【エチオピア】エチオピアのいすゞ自動車組み立て工場が開所式。フル稼働時のトラックの生産台数は年間2,500台(10/16)

エチオピアにいすゞ自動車の自動車組み立て工場が開設された。アディスアベバ郊外に、組み立て生産、販売、アフターセールスを行う拠点が開かれ、開所式が行われた。いすゞ自動車の代理店を務めるKaki Motors Private Limited Companyが生産を行う。

Kaki Motorsによると、工場ではトラックを組み立てる。フル稼働時の組み立て可能台数は年間2,500台となるという。

【ルワンダ】ソフトバンクが、ルワンダで世界初のドローンによる成層圏通信基地局による5G通信試験に成功(10/17)

ソフトバンクが、世界で初めてドローンによる成層圏通信基地局による5G通信試験に成功したと発表した。同社は2020年にルワンダ情報通信技術革新省と実証試験のためのMoUを締結しており、同通信試験もルワンダ上空で実施された。

ソフトバンクが開発した通信機器(ペイロード)は、成層圏の高度最大16.9kmにおいて、約73分間連続して5Gの通信を提供することに成功した。

ソフトバンクはこれとは別に、2023年7月にはルワンダ教育省とエドテックサービスの提携に関する協定も締結している。

【南アフリカ】豊田通商やSBIホールディングスが投資する南アフリカ発のモビリティスタートアップWhereIsMyTransportが、資金調達の失敗により事業を終了(10/30)

南アフリカ発のモビリティスタートアップWhereIsMyTransportが、資金調達に失敗したことから事業を閉鎖したと発表した。2020年にシリーズAラウンドで豊田通商やGoogle、南アフリカの銀行Nedbank含む投資家から750万ドルを調達していた。2021年にはシリーズA拡張ラウンドでNaspers Foundryを含む投資家から1,450万ドルを調達し、累計調達額は2,700万ドルを超えたが、その後の資金調達が続かず、この度事業を終了するに至った。

WhereIsMyTransportは2015年に設立された。交通情報のビックデータプラットフォームとして、フォーマルおよびインフォーマルな公共交通ネットワークデータを収集して統合、地図マッピングを行い、オープンデータとして提供してきた。データを交通局など公的機関に提供したり、Google、世界銀行、コンサルティング会社などに対してデータを用いた調査を行うことで売上を上げていた。2019年時点ではアフリカ34都市に加えインドや東南アジア、中南米でもマッピングを行っており、メキシコに進出もしていた。

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