
アフリカにおける日本企業の認知率
ソニー、トヨタ、いすゞなどを含む、日本企業はアフリカでどの程度知られているのでしょうか。またどの国でよく知られているのでしょうか。30社を対象に6カ国で調査を実施しました。
(画像は富士フイルムの健診施設、同社サイトから)
毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。
ナイジェリアのコンテンツ制作業務管理プラットフォームFilmmakers Mart(FMM)が、ソニーのCVCであるSony Innovation Fund: Africaと国際金融基金(IFC)から資金を調達した。IFCにとっては、アフリカのオーディオビジュアル領域の初の投資となる。
2021年創業のFMMは、デジタル配信を主とするクリエイティブ産業を支援するため、ロケハン、ロジスティクス調整、ケータリング、撮影許可取得といった制作に重要な業務を一元化されたシステムで管理できるプラットフォームを提供している。AIを活用したツールと自動化されたワークフローを活用する。ナイジェリアのほか、ケニア、ガーナ、モロッコ、南アフリカで展開しており、今回の調達によりさらに市場を拡大する。あわせて制作後の業務ツールを導入し、クリエイターへのトレーニング提供することを計画している。
ソーシャルコマースプラットフォームを提供するケニアのTwivaが、ソニーのCVCであるSony Innovation Fund: Africaから資金を調達した。
アフリカでは、2億5,000万人以上の若者がデジタルプラットフォーム上で積極的に活動している。Twivaは2019年に創業し、インフルエンサーマーケティング、ソーシャルコマース、スキル開発、組み込み型金融のTwiva Pay、ライブストリーミングという5つの分野で、オンライン上のインフルエンサーやリセラーの収入機会の増加を支援している。
今回の調達資金を用いて、新たなアフリカ市場への進出、AIを活用したクリエイターツールを含む技術基盤の強化、Twiva Payの展開の加速を行い、今後5年間で100万人以上のデジタル雇用を創出することを目指す。
いすゞ自動車のケニア子会社Isuzu East Africaが、ケニアのAthi River近郊Lukenyaに31億ケニアシリング(34億円)を投じ、部品配送センターを建設する。
部品倉庫は現行の2,300平方メートルから10,544平方メートルに拡大され、48時間以内に最大99%の部品の供給が保証できるようになる。現地販売店を通じて純正部品供給できるようにすることで、ケニア国内外の顧客へのアフターセールスサービス提供を改善する戦略の一環である。部品配送センターの開設は2026年11月を予定している。
Isuzu East Africaは、電気自動車の販売も予定しており、2025年末までに1台の電気自動車トラックの試験を開始する。親会社のいすゞ自動車は2026年に電気自動車の量産を予定しており、2030年までに全カテゴリーでバッテリーまたは燃料電池駆動のオプションを提供することを目指している。
Isuzu East Africaは2025年上半期の新車販売シェアにおいて48.35%で首位を維持した。
※1ケニアシリング=1.1円(モーニングスター、8/10)
トヨタ自動車は2026年に南アフリカで3車種の完全電気自動車を投入する計画を明らかにした。同社は2024年時点で南アフリカのハイブリッドおよびプラグインハイブリッド車市場のシェア67%を占めているが、電気自動車は初投入となる。まずは輸入から開始し、将来的には現地生産を目指す。
南アフリカの電気自動車販売台数は現時点では非常に小さいものの、販売開始が相次いでいる。高いシェアを占めるのは、スウェーデンのVolvoであり、独BMWやMercedes-Benzが続いている。さらにBYD等の中国メーカーが米国や欧州向け輸出に制限がかかるなか新しい市場を求めて南アフリカ市場に参入しはじめている。トヨタ自動車は、内燃機関車両からハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車、燃料電池車、カーボンニュートラル内燃機関車など多様な展開を目指す。
同社はまた、南アフリカの自動車産業は生産台数の停滞、現地調達率の低下、輸入車販売の急増といった事態に直面しているとし、BMW、いすゞ自動車、Volkswagenら南アフリカの主要自動車メーカー7社とともに産業保護に向けた政策提案を政府に提出したと述べた。提案にはリベート制度の再構築も含まれている。
いすゞ自動車の南アフリカ子会社が、南アフリカを商用トラックのアフリカ生産拠点とするべく、生産台数と現地調達部品を強化することを明らかにした。日本本社と協議を進めているという。現地生産を行うための試験のいくつかは成功したという。
いすゞ自動車は南アフリカで、SUVは輸入しているものの、ピックアップトラック、中型および超大型商用トラックを組み立て生産している。トラック車体の一部は、中国や中東等から輸入されている。他のアフリカへの輸出は、トラックでは限定的だが、ピックアップトラックは30カ国以上に輸出されている。約6年前に15%だった南アフリカから他のアフリカへの輸出台数は、現在22%~23%で、今後45%まで引き上げることを目指すという。
アフリカ5カ国でソーラーLEDランタンのレンタルビジネスを展開する日系スタートアップWasshaが、商工中金から総額3億円の借り入れを実施した。
同社は2013年の創業以来、タンザニア、ウガンダ、モザンビーク、コンゴ民主共和国、ナイジェリアの5カ国で、小売店(キオスク)を活用してソーラーランタンを貸し出す事業を展開している。現在小売店のネットワークは約6,600店舗に達している。
調達資金は新規サービスの開発、既存事業の拡大、人材獲得による組織強化、現地人材の育成に用いる。
富士フイルムが南アフリカに健康診断を手掛ける施設を開設する。自社のCTやマンモグラフィー等を備え、定期健診の習慣を根付かせることで医療機器の販売につなげる。2025年中に南アフリカのケープタウンおよびUAEのドバイで開設する。開設されると、同社の同様の健診施設は世界で12拠点となる。2021年にはインドで開設した。
健診施設は南アフリカのヘルスケアプロバイダーであるThe InUversal Groupが運営し、がん健診や生活習慣病検査を提供する。約120分ですべての検査を終え結果のフィードバックを得られる。富士フイルムは医療機器のほか、AI技術を基盤とした医療ITシステムの導入によりスクリーニング検査や医師の診断業務を支援する。
アフリカではがんや虚血性心疾患といった非感染症疾患による死亡者数が年々増加しており、アフリカでは2019年から2048年の間に非感染性疾患による死亡者数が3倍以上に増加すると予測されている。早期発見と適切な治療・保健指導は死亡率や重症化リスクの低減につながるものの、健康診断の普及が進んでいないことや医療従事者の深刻な不足が課題となっている。WHOによると2030年までに世界の医療従事者不足の約70%が中東・アフリカに集中すると予測されている。
日本政府は、ケニアに対して、自動車・部品組立と電力供給の強化のため、7年間で最大250億円の円建て融資供与枠を提供することで基本合意した。2024年2月には5億ドルの円建てサムライ債の発行が発表されていたが、融資枠供与へと変更され、金額も下回った。
融資は日本の市中銀行が貸し出し、日本貿易保険(NEXI)が保険を付保する。ケニア政府による自動車産業育成のためのNational Automotive Policy(NAP)推進や送配電における電力損失率の低減のためのプロジェクト等に対して財政資金を支援する。ケニア政府は電気自動車の普及に役立てるとしている。
ケニア政府は、世界的なマーケットのボラティリティの高さと米国の金利上昇により、借り入れ手段の多様化を進めている。
日本はケニアにとって3番目に大きなODA供与国で、過去60年間で50億ドル以上を供与している。
国際協力銀行(JBIC)が、三井物産が出資するUAEの農業商社ETC Groupとの間で、1,400万ドルを上限とする貸付契約を締結した。三井住友銀行との協調融資で、融資総額は2,400万ドルとなる。
ETC Groupは1967年創業。融資は、同社のモーリシャスの100%子会社であるETG Energyを通じて、ザンビア、南アフリカ、モザンビーク、ウガンダで液化石油ガス(LPガス)事業を展開するために費やされる。4カ国はいずれもパリ協定に基づく国別削減目標(NDC)にて温室効果ガス(CHG)排出量削減目標を挙げており、木炭等からLPガスへの転換を具体的な取り組みとしている。LPガスは家庭用調理ガスとして利用される。
伊藤忠商事とUAEの港湾・物流企業DP Worldが、サブサハラアフリカ地域における協業についてMoUを締結した。
車両や物流関連サービス、サプライチェーンの最適化、日用品・食品卸事業等について具体的な取り組みを協議する。日本企業に対してDP Worldが持つ物流・港湾の強みを活かす橋渡しを行う。
DP Worldは2005年にドバイの港湾管理・運営事業を行う企業2社の合併により設立された。現在アフリカ48カ国で事業を展開しており、物流事業では2022年には南アフリカの物流会社Imperial Logisticsを買収した。港湾事業ではこれまで30億ドル以上の投資を実行し、今後3~5年でさらに30億ドルの投資を計画している。
豊田通商がモーリタニア水・衛生省とNouadhibouにおける再生可能エネルギーを用いた海水淡水化プラント建設に関するMoUに署名した。日量5万立方メートルのプラントで、2025年12月までに実現可能性調査を完了し、資金調達や技術パートナーを含む提案書が提出される予定である。増加する飲料水需要に対応しながら、二酸化炭素排出量を削減する。
Nouadhibouを含む周辺地域は、エネルギー転換の戦略的中心地に位置づけられている。すでに100メガワットの風力発電所が稼働し地域に電力を供給している。グリーン水素プロジェクトについても評価段階にあり、セルビアの投資会社CWP GlobalのAMANプロジェクトや、電力サービス・プロバーダー米Chariot Energyの子会社Chariot Green HydrogenとTotalEnergies H2が開発するNourプロジェクトなどが進捗している。この地域は世界クラスの風力資源と高い日射量に恵まれている。
三菱商事が出資する米国の鉱山探査スタートアップKoBold Metalsが、コンゴ民でリチウムなどを探査する7件の許可を取得したと発表した。大規模な探査プロジェクトの実施が可能になる。
新たな許可地はTanganyika州Manono地域に4件、Haut-Lomami州Malemba Nkulu地域に3件あり、リチウム、コルタン、レアアースなど十数種類の探査が可能となる。KoBold Metalsはリチウムに重点を置く方針で、世界最大級のリチウム鉱床とされるManonoの権益取得を目指す。ただし、現在同鉱床は、コンゴ民政府とオーストラリアのAVZ Mineralsとの紛争が発生しているため、その解決が前提となる。