アフリカにおける日本企業の動き(2025年7月)

アフリカにおける日本企業の動き(2025年7月)

(画像はソニーミュージックが提携するOrange Musique Talent、同社サイトから)

毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。

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【ザンビア】日立建機がザンビアの部品再生工場を2倍に拡張、鉱山機械の受注増に対応(7/2)

日立建機がザンビア子会社Hitachi Construction Machinery Zambiaの再生部品センターを拡張した。ザンビアや周辺国から大口の注文を受けたため、それに伴いメンテナンスと部品再生機能を拡大する。約25億円を投資し、2万平方メートルの土地を新たに確保して敷地面積を2倍とし、再生部品保管倉庫とエンジンの修理作業エリアを新たに設けた。銅やコバルトなど鉱物資源が豊富なザンビアでは、資源開発の進展により鉱山機械の需要が増加すると見込まれている。

同社はザンビアの大手銅鉱山を含む鉱山会社に対し、鉱山機械および建設機械のアフターサービスの提供と再生部品の販売を行っている。再生工場では油圧部品などの部品を分解・整備して再生品として販売している。新品と比べて安価であるため需要が大きい。

建設機械オペレーターの育成を目的とした政府と民間の共同プロジェクトへの参加を通じて、現地人材の育成にも積極的に取り組んでいる。超大型フルバッテリー式リジッドフレームダンプトラックの試験運用を進めるなど、技術革新も推進している。

【エジプト】豊田通商とユーラスエナジー、仏Engie等のコンソーシアムが、アフリカ最大となる654メガワットのスエズ湾風力発電所IIの商業運転を開始(7/2)

豊田通商と子会社ユーラスエナジー、仏Engie、エジプトのOrascom Constructionのコンソーシアムがエジプトで建設していた風力発電所、スエズ湾風力発電所II(Gulf of Suez Wind Farm II)が商業運転を開始した。発電容量は654メガワットとアフリカ最大の風力発電所となるという。

豊田通商が20%、ユーラスエナジーが20%、Engieが35%、Orascom Constructionが25%を出資した。同じ企業で構成されるコンソーシアムは、2019年に262.5メガワットのGulf of Suez Wind Farm Iの操業を開始している。豊田通商がアフリカで運営する風力発電所として2例目となる。

総事業費は約7億9,000万ドルで、国際協力銀行(JBIC)、欧州復興開発銀行(EBRD)、三井住友銀行、農林中央金庫、仏銀行Société Généraleが融資を提供している。
エジプト送電公社と25年間の電力購買契約を締結している。年間約145万トンの二酸化炭素排出量を削減する。

とから依存をリスクと捉え、米国やサウジアラビアの国々との関係構築に乗り出している。

【南アフリカ】NTTデータの南アフリカ傘下企業Britehouse MobilityがMBOを実行(7/10)

NTTデータのグループ企業である南アフリカのIT企業Britehouse Mobilityが、MBO(経営陣買収)を実施すると発表した。SAP、マイクロソフトソリューション、Salesforce、Data、AIに特化した企業向けアプリケーション事業は引き続きNTTデータの傘下に残る。

Britehouse Mobilityは2006年に、その後NTTデータに買収されるDimension DataのBEE(黒人経済強化政策)事業の一環として設立された。Dimension Dataの子会社である3fifteen、 Pebbletree Consulting、テクノロジー業界向け人材紹介Praconの3社を統合し、Dimention Dataが株式70%を保持した。2010年に旧NTTがDimension Dataを買収、2020年にはBritehouse MobilityがNTTのモビリティー部門を買収している。
Britehouse Mobilityは社名をBritehouseに変更し、高度なソフトウェアエンジニアリング、カスタマイズされたソリューション、AI統合に注力する。

【コートジボワール】ソニーミュージックが、通信事業者Orange Côte d’Ivoireが主催する現地の若手アーティスト発掘プロジェクトに提携(7/11)

ソニーミュージックが仏通信事業者Orangeの子会社Orange Côte d’Ivoireと、若手アーティスト発掘プロジェクトである「Orange Musique Talent」で提携した。Orangeが主催するこの選考で上位6名となったアーティストはプロとして支援を受けられ、最優秀者にはソニーのレーベルでEPの制作が約束される。取り組みを通じてコートジボワールの音楽産業を構築する。

コートジボワール政府は2024年5月に創設された10億CFAフラン(2.6億円)の基金を設立し、若者の才能を育成し、それを職業化するための支援を行っている。
全国4,000人の応募者から12名が選ばれており、2週間の集中指導を受ける。指導を経てファイナリスト6名が選出される。
※1CFAフラン=0.26円(モーニングスター、7/16)

【エジプト】東洋一通商が、エジプトの家電メーカーEl Arabyと合弁を立ち上げ建築用ガラスの製造を開始(7/14)

東洋一通商が、エジプトの家電メーカーEl Araby Groupと共同で出資したガラス工場を、エジプトのMonufeya県Quesnaに開所した。

二重ガラス、断熱ガラス、曲面ガラスといった建築外装用のガラスを製造する。年間製造能力は最大200万平方メートルで約300人を雇用、原料のシリカはすべて国内調達する。製造したガラスの50%を中東およびアフリカ市場に輸出する計画である。敷地面積は20,000平方メートルとなる。建築用のみならず、家電、自動車、鉄道用途の製造も予定している。
同じ工場団地内には、同じくEl Araby Groupとシャープとの提携により、総額1億800万ドルを投じて冷蔵庫とディープフリーザーの工場の建設が開始されたばかりである。年間製造能力は90万台が予定されている。

【コートジボワール】コートジボワールが初のサムライ債を発行、500億円を調達(7/17)

コートジボワールは、初のサムライ債(円建て外債)を発行し、500億円を調達した。10年債で利回りは2.3%の債権となり、国際協力銀行(JBIC)の保証を受けている。サブサハラアフリカでサムライ債を発行するのは現時点ではコートジボワールのみとなる。

コートジボワールは米S&PからBBの格付けを受けている。国際通貨基金(IMF)の財政改革支援により、2025年3月には17億5,000万ドル相当のユーロ債を発行し、予算と債務のための資金を調達した。今回のサムライ債の発行により資金調達先と投資家を多様化する。

IMFの予測では、コートジボワールの経済成長率は2024年の6%から2025年には6.3%に上昇し、債務残高の対GDP比が2024年の59.3%から58.1%に低下する見込みである。

【エジプト】ジョンソンコントロールズ日立空調がエジプトElsewedy Machineryと、エジプト高速鉄道の空調設備契約を獲得(7/18)

ジョンソンコントロールズ日立空調(2025年8月1日付けでRobert Boschに売却)の中東アフリカ子会社が、エジプトのElsewedy Electric GroupのElsewedy Machineryと共同で、エジプト高速鉄道(HSR)の空調設備契約を獲得した。ジョンソンコントロールズ日立空調はスペイン工場で製造される可変冷媒流(VRF)システム3,000台以上を供給する。総冷却能力1万1,000トンを超える設置となる。Elsewedy Machineryは、空調設備の供給、設置、銅配管ネットワーク、試運転、立ち上げ、アフターサービスを含むすべての工程を管理する。

エジプト高速鉄道は、Ain Sokhna、Alamein、カイロ、アレクサンドリア、6th of October Cityといった主要都市を結ぶ全長660kmの鉄道で、21駅にわたり1日あたり100万人以上の乗客と8,500トンの貨物を輸送する。

【モザンビーク】日揮がモザンビークで、伊Eni向けに浮体式液化天然ガス設備の先行業務契約をサムスン重工業、仏Technip Energiesとともに受注(7/22)

日揮ホールディングスが、グループ企業であるJGC Franceがアフリカで浮体式液化天然ガス(FLNG)設備に関する先行業務契約を受注したと発表した。受注額はジョイントベンチャー全体で約5億5,000万ドル相当という。
日揮は顧客やプロジェクト名を明らかにしていないものの、伊石油会社Eniがモザンビークで新たに開発しているCoral Norte鉱区向けと見られ、受注活動を行っていたサムスン重工業および仏Technip Energiesとのジョイントベンチャーによる受注と思われる。日揮は、2022年に稼働を開始したEniが運営するモザンビークのCoral Sul鉱区におけるFLNG設備についても、この3社で受注している。

今回の契約は、FLNG設備の設計、調達、建設にかかる先行業務を対象としており、次の段階では設計、機材調達、建設工事、据付および試運転を対象とするEPCIC契約の締結も予定されているという。Coral Norte鉱区は、年間350万トンの生産能力が期待されている。

【ケニア】豊田通商が出資するケニアの電気バススタートアップBasiGoが、都市間ルートでの乗合いミニバンの電気自動車化を実証試験(7/23)

ケニアの電気バススタートアップBasiGoが、乗合いミニバン(通称マタツ)を電気自動車に置き換えるべく実証試験を開始した。マタツを運営する2つのバス運行組合(Sacco)が、首都ナイロビから約100キロメートルから250キロメートルに至る3つの主要路線に1台ずつ電気ミニバンを走らせる。ナイロビの外の都市間ルートで初めて電気バスが走ることとなる。

新しい電気ミニバンは1回の充電で300キロメートルの走行が可能で、充電時間は90分である。2カ所に充電ステーションを設置した。高額な新車購入費用を負担できない運行組合でも導入が可能なように所有権移転型リースを取り入れる。運行組合は「Pay-As-You-Drive(走行距離に応じた支払い)」モデルに基づいてBasiGoに支払いを行う。

一方、マタツはディーゼル燃料への依存度が高く、インフォーマルセクターであるため規制を浸透させることが難しい。事業者は変化に懐疑的になることが多く、切り替え費用や新技術への信頼が欠如している。充電インフラも大都市以外では不足している。電気自動車が地方の整備されていない道路やピークの需要時にどの程度対応できるのかという疑問もある。これらを実証試験で検証する。

BasiGoは2021年に設立された。今後数年間で1,000台以上の電気ミニバンの導入を目指している。すでに国内で組み立てを行っている電気バスと同様、将来的に電気ミニバンも組み立てを予定している。同社は2024年に、ナイロビの組立ラインを拡張するために4,150万ドルを調達している。

【セネガル】豊田通商傘下CFAOが、セネガルで運営していたカルフール等スーパーマーケット全8店舗をセネガルの小売EDKに売却(7/25)

豊田通商傘下 CFAO Consumer Retailが、セネガルで展開するスーパーマーケットのカルフールとキャッシュアンドキャリー型店舗Supecoの全8店舗をセネガルの小売企業Group EDKに売却した。取引額は公表されていない。CFAOはSalyショッピングモールの経営は維持し、撤退ではなく再編だと説明している。

Group EDKは2012年に設立され、ガソリンスタンドをセネガル国内に約40運営するほか、EDK Low Priceブランドの食品スーパーを約50店舗展開している。2024年6月には国際金融公社(FIC)から2,500万ユーロの融資を受けており、そのうち1,000万ユーロを借り換えなどを含む資本構成の改善に充てると公表されている。

セネガルのスーパーマーケット市場は、2014年に進出し約60店舗を展開する仏Auchanがトップのシェアを占めている。

【エジプト】豊田通商、日本郵船、Africa Global Logisticsの合弁企業がエジプト初の完成車専用ターミナルSuez Canal Automotive Terminalを開業(7/25)

豊田通商が25%、日本郵船が25%、仏Africa Global Logistics(AGL)が50%を出資した合弁会社Suez Canal Automotive Terminal(SCAT)が、エジプト初となる完成車専用ターミナルをPort Said East港に開業した。完成車のエジプトへの輸入や積み替え需要の増加を見込む。

敷地面積は21.2ヘクタールで、2隻の大型自動車専用船が同時に着岸が可能であり、貨物の積み替え機能も備える。車両の初期収容能力は2,550台であり、将来的には1万台に拡張予定である。運営予定期間は30年となる。
AGLはスイスMSC(Mediterranean Shipping Company)のグループ企業で、アフリカ全域で物流事業を展開している。

【ナイジェリア】大原薬品工業が出資するナイジェリアの製薬会社Fidson Healthcareが、製造規模拡大と国際展開のため、今後3年間で5,000万ドルを調達すると発表(7/29)

ナイジェリアの製薬会社Fidson Healthcareが、今後3年間で5,000万ドルを調達し、国内生産規模の拡大と他国への進出を図る計画を発表した。生産能力を拡大し、グローバル競争力を獲得し、サプライチェーン効率性を向上する。
ナイジェリア政府は、国内で消費される医薬品の最大70%を国内製造で賄うという目標を掲げている。10社がそれに応じて製造能力を拡大しており、現在50%~60%に達しているという。ナイジェリアが大統領令にて、2年間の期間限定で医薬品の原料と包装資材に対する輸入関税とVATを免除していることも製造を後押ししている。

Fidson Healthcareの2025年第1四半期の業績は、売上が前年同期比85.42%増の350億ナイラ(31億円)、税引前利益は48億ナイラ(4億3,000万円)で前年同期比213.49%増だった。売上のうち処方薬が229億ナイラ(206億円)で、OTC医薬品が100億4,000万ナイラ(90億円)だった。
※1ナイラ=0.09円(モーニングスター、7/31)

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