
アフリカの日系スタートアップ、注目すべき7社
2024年時点で累計1億円以上を調達した、日系のアフリカスタートアップ7社をとりあげています。
(画像はリベリアのFirestoneのゴム農園、同社サイトから)
毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。
ウルグアイ発のナスダック上場企業dLocalが、アフリカ事業拡大のため、英決済企業Aza Financeを買収する。買収額は非公開だが、Aza Financeの評価額は約1億5,000万ドルと報じられた。
Aza Financeは2013年にケニアで創業され、かつてはBit Pesaという企業名でビットコインとブロックチェーン技術を活用した、迅速かつ費用対効果が高いアフリカと諸外国の間のクロスボーダー送金を事業としていた。2019年に包括的なデジタル外国為替および決済プラットフォームへの進化を反映するためにBit PesaからAza Financeへとリブランドした。南アフリカのDevelopment Bank of Southern Africaから1,500万ドルのデットファイナンスを調達している。買収による拡大も行っており、2018年のスペインの送金会社TransferZeroや2021年の南アフリカのクロスボーダー決済会社Exchange4Freeなどの買収も行なっている。
買収するdLocalは、企業間決済プラットフォームを運営しており、中国格安eコマースTemuやラテンアメリカのスーパーアプリRappiといった多国籍で事業を行う企業を顧客としている。ラテンアメリカ市場の大部分を獲得した後、アジアとアフリカの一部への進出を進めており、ラテンアメリカ以外での買収は今回が初めてとなる。Aza Financeはアフリカの17カ国で事業を展開していた。この買収でdLocalは新たにボツワナ、モザンビーク、ギニア市場へ進出することになる。
九州電力の子会社であるキューデン・インターナショナルが、UAEのAMEA Powerと再生可能エネルギーやグリーン水素分野での協業に関して覚書を締結した。
AMEA Powerのクリーンエネルギーに関する大規模プロジェクト開発における経験と、キューデン・インターナショナルの技術力で協力する。
AMEA Powerは、稼働中または建設中の発電設備を世界中で2,600メガワット以上保有し、6ギガワットを超えるプロジェクトの計画がある。直近ではエジプトで500メガワットの風力発電所が稼働している。
ブリヂストン傘下のファイアストンのリベリア子会社Firestone Liberiaは、リベリア政府が農家へのゴム支払価格を引き上げたことを受け、購入を停止した。この購入停止は、米国および欧州におけるブリヂストンのタイヤ生産に影響を与える可能性がある。Firestone Liberiaは、リベリアに世界最大規模となる4万8,154エーカーの天然ゴム農園を保有した上で、さらに供給量を補うために、リベリア国内の約6万の小規模農家から毎年3万トン超の天然ゴムを購入している。
価格を決定する委員会The Liberia National Rubber Pricing Committeeは、前月の1日平均取引価格に基づき、カップランプまたはスラブ1トンあたりの価格を574.06ドルに設定した。これはFirestone Liberiaが現在支払っている金額よりも15.3%高い。Firestone Liberiaは、教育、住宅、医療、地域開発、小規模農家への支援、インフラ維持といった社会的責任への追加コストを負担しており、単一価格を一律にすべての企業に課すこの統一価格モデルではその負担が考慮されていないと主張している。Firestone Liberiaは今後委員会と協議する意向である。
ゴムはリベリアの主要な換金作物であり、2024年の輸出額の33.5%を占めている。
南アフリカにおいてグリーン水素インフラの開発・建設・運営を促進するために組成された官民ファンドであるSA-H2ファンドが、最初の投資先として、伊藤忠商事が包括的な協業覚書を締結したHive Hydrogen South Africaが東ケープ州Coegaで計画する、総工費59億ドルの大規模グリーンアンモニア製造施設の開発段階に対して最大2,000万ドルを拠出する契約を締結した。建設段階にも最大2億ドルを出資するオプションを含んでいる。
このグリーンアンモニア製造施設は、3.6ギガワットの再生可能エネルギー発電と1.2ギガワットの電解装置、淡水化技術、空気分離装置、バルクアンモニア貯蔵庫、輸出インフラが統合された施設で、年間100万トンのグリーンアンモニア製造を目標としている。年間260万トンの炭素排出量を削減し、2万人以上の雇用を創出すると見込まれている。また、最大20ギガワットの再生可能エネルギーが国営電力網に接続される。商業運転開始は2029年を計画している。
SA-H2ファンドは、南アフリカの保険会社Sanlamとオランダの開発銀行FMOの合弁企業であるClimate Fund Managers(CFM)とオランダの開発金融機関であるInvest Internationalによって運営されている。南アフリカの政府系資産運用機関Public Investment Corporation(PIC)、南アフリカの開発金融機関Development Bank of Southern Africa(DBSA)とIndustrial Development Corporation of South Africa(IDC)の3機関が合計3,700万ドルを拠出することも発表された。3,700万ドルの内訳は、PICが1,700万ドル、DBSAとIDCがそれぞれ1,000万ドル。
南アフリカではさらに4つの水素プロジェクトが閣議承認のために提出される見込みである。
大日本印刷は、アフリカなどの新興国政府向けに生体情報を用いたデジタルID認証機器などを製造するLaxton Groupの株式75%を取得する契約を締結した。買収額は非公開。
オランダに本社を置き、ケイマンの持株会社Rubiconの傘下にあるLaxton Groupは、アフリカ、アジア、南米など新興国を中心に約50カ国の政府機関向けに、生体情報を用いた国民IDや有権者登録の登録や認証を行うための端末や機器といったハードウェアとソフトウェアを提供している。Laxtonは2004年に南アフリカで創業され、ポルトガルと中国に工場がある。これまでは入札にあたって印刷や素材を行う外部パートナーが必要だったが、今回の買収により単独で世界大手企業と競争できるようになる。Laxtonは2022年に米Enlightenment Capitalの出資を受けており、米国にも進出する計画である。
大日本印刷は、セキュア印刷、カードプリンターやカードの製造、偽造防止用のホログラムといった、セキュア印刷の印刷技術と素材技術を持つ。72の工場を運営し、30カ国以上向けに提供している。海外政府向けID認証サービス事業で、2030年までに累計売上1,400億円を目指している。
豊田通商が、英レアアース開発会社Pensanaとの間で、Pensanaが権益を持つアンゴラのLongonjo鉱山から、年間最大2万トンの混合レアアース炭酸塩(MREC)を5年間にわたり購買するための覚書を締結した。
両社は、豊田通商の完全子会社であるToyotsu Rare Earth Indiaが運営するインドの処理施設の活用でも協力し、レアアース材料の独立したサプライチェーンを構築する。豊田通商はこのインドの処理施設を2013年から運営しており、日本の磁石メーカーからの需要増加に対応するため拡大を続けている。
2025年5月に建設工事が開始された。MRECの第1段階の生産量は年間2万トンとなる見込みで、第2段階の拡張では年間4万トンに増加する予定という。
ケニアで中古車の個人間取引仲介プラットフォームPeach Carsを運営する日系スタートアップCordia Directionsが、シリーズAラウンドで1,100万ドルを調達した。スズキのコーポレートキャピタルファンドSuzuki Global Venturesがリードし、国際協力銀行(JBIC)、山陰合同銀行のごうぎんキャピタルが加わり、既存投資家の東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)も追加投資を行った。
ケニア子会社Peach Techは2020年に設立された。独自の車両検査システムを用いて車両の状態や品質をリアルタイムで査定し、中古車が透明性の高い価格で取引されることを可能にするプラットフォームを提供している。ケニアでの中古車取引は、品質チェックなしに不透明な価格設定で取引され、安定した支払い方法や消費者保護が存在しないことが多い。
ケニアに輸入される中古車の80%が日本車であることに鑑み、同社は日本の自動車品質管理システムを一部モデルにし、225項目の検査を行うシステムを開発した。さらに信用スコアリングと融資ツールを組み込むことで、同社が事前に融資可否を承認して在庫回転率を向上させている。今回の投資を経て、ナイロビ以外のケニア主要都市および東アフリカへと事業を拡大し、検査・サービスセンターの基準を引き上げ、人員を増強する。
スズキは2022年に米国シリコンバレーにSuzuki Global Venturesを設立した。インド乗用車市場の40%を占めるスズキにとって、今回の投資はアフリカでの市場拡大の入口となる。ラウンドに参加したJBICにとっては、アフリカのスタートアップへの初の直接投資となる。
ユニ・チャーム、豊田通商および豊田通商子会社CFAO Kenyaが、ケニアに合弁企業を設立すると発表した。ユニ・チャームが75%、豊田通商が17.5%、CFAO Kenyaが7.5%を出資し、資本員額は20億ケニアシリング(22億円)となる。2025年12月を目処に設立する。
ユニ・チャームは、2023年に高価格帯生理用ナプキンの同社エジプト工場からの輸出販売をCFAO Kenyaとともに開始した。2025年1月からはケニア企業に製造を委託し、価格を抑えた生理用ナプキンの販売を開始している。合弁会社ではこれまでの販売と流通だけでなく、開発、製造、販売、マーケティング、人材育成までを行うことを目的として立ち上げる。自社工場の設立も視野に入れる。将来的には生理用ナプキンに加え紙おむつの取り扱いや、ケニア以外の東アフリカでの販売も目指す。
報道によると、現在のケニアでの売上は1億ケニアシリング(1億1,000万円)程度で、2030年までに20億~30億ケニアシリング(22億~33億円)の売上を計画しているという。
※1ケニアシリング=1.1円(ブルームバーグ、6/18)
住友商事とUAEの再生可能エネルギー開発AMEA Powerが出資する特別目的会社が、エジプトのAmunet風力発電所の稼働を予定より約2.5カ月早く開始した。約500メガワットを発電する。
住友商事が40%、AMEA Powerが60%を出資している。年間約2,500ギガワット時の電力を発電し、年間140万トンの二酸化炭素排出量を相殺する。送電公社Egyptian Electricity Transmission Companyと締結した長期売電契約に基づき約25年間にわたって電力を販売する。
AMEA Powerは2024年12月にエジプトで500メガワットの太陽光発電所を稼働しており、この6カ月で1ギガワットの稼働開始済み発電容量を追加したことになる。
このプロジェクトには、国際協力銀行(JBIC)、国際金融公社(IFC)、三井住友銀行、三井住友信託銀行、Standard Chartered銀行を含む国際金融機関によるコンソーシアムが融資を提供している。
日本などからケニアに輸出する中古車などの船積み前検査機関としてケニア基準局(Kenya Bureau of Standards、KEBS)から指定を受けている日本の車両検査会社EAAが、ケニアでの公共契約入札禁止処分を受けた。Public Procurement Regulatory Authority (PPRA)による入札資格の剥奪となり、2025年3月18日から3年間の禁止となる。
EAAは、2011年、2014年、2019年に虚偽文書をKEBSに提出して応札しようとしたとして、2021年12月に3年間の資格停止を命じられていた。同社は最高裁判所に禁止命令の取り消しを求めたが却下され、訴訟を取り下げた。事業再開から1年足らずで再び禁止処分を受けたことになる。