
アフリカスタートアップ白書
アフリカのスタートアップについての包括的なレポートです。アフリカで活躍する日系スタートアップについても記載されています
(画像はモロッコで売られているみかん類、ABP撮影)
毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。
住友商事がマダガスカルとモザンビークでカーボンクレジット事業に参入した。マングローブ植林由来のブルーカーボンクレジットを調達し、日本企業を中心に販売する。
マダガスカルでは、マングローブの植林を行うシンガポールのValue Network Venturesと現地企業Bondyの合弁会社が行うマングローブ植林事業に対して出資し、ブルーカーボンクレジットを調達する。マングローブの成長にあわせて21年間にわたり約80万トンのカーボンクレジットを取得する。Value Network Venturesとは2023年にカーボンクレジット事業の共同検討に関する覚書を締結している。
モザンビークでは、仏Removallと合弁会社Summit Removallを設立して、案件形成と投資を行う。40年間にわたり累計約250万トンのブルーカーボンクレジットを創出する計画のZambezia州のマングローブ植林プロジェクトを開始する。
将来的にはそれぞれの国の植林面積を4万ヘクタールまで拡張し、マダガスカルで1,400万トン、モザンビークで2,000万トンのカーボンクレジットを創出することを目指す。
ウガンダで井戸水の料金回収システムの製造・販売を行う日系スタートアップSunda Technology Globalが、2023年10月のシードラウンドで調達した5,000万円に続くエクステンションラウンドで5,000万円を調達し、総額1億円を調達した。
Sunda Technology Global は2020年に創業した。水の計量や決済ができるシステムを製造し、井戸のポンプに設置している。水の利用者はIDタグに料金をあらかじめチャージし、利用時に水の利用量に応じた金額をIDタグから払う。井戸の利用料を回収することで、井戸の修理などの維持管理費に充てることができるようになる。
同社はこれまで300の井戸にシステムを設置したという。公共水栓への設置も開始した。今後は公共水栓向けの量産モデルを開発し、年間3,000基の製造が可能な製造拠点の整備を行う。
検体検査機器や試薬の販売を行うシスメックスが、ケニアに現地法人を設立した。現地法人を通じて東アフリカ9カ国での販売とカスタマーサービスを強化する。
新法人は、シスメックスの子会社Sysmex Europeを通じて設立する。2025年末までに19名の体制まで増やす。
アフリカでドローン事業を行う日系スタートアップSora Technologyが、プレシリーズAラウンドのファーストクローズでエクイティーとデットをあわせて5億4,000万円を調達した。ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、Drone Fund、Central Japan Seed Fund、レオス・キャピタルワークスが出資した。累計調達額は6億7,000万円となった。
Sora Technologyは2020年に創業した。ドローンとAIを活用したマラリア対策や感染症予測システムを開発している。アフリカにおいてはガーナ、シエラレオネ、ベナン、コンゴ民、セネガル、ケニアの6カ国で事業を行っている。ドローンで撮影した水たまりの画像を分析し、蚊の幼虫がいる可能性の高い水たまりをAIで特定することで、効率的に殺虫剤を使用して蚊の発生を防ぐ。今後はAIの改良に取り組み、水たまりの特定精度を高める。
日本ペイントのケニア子会社Nipsea Paint Kenyaは、ケニアのモンバサ郡で製造を開始する。同社は2024年にケニアに現地法人を設立していた。
ケニア国家環境管理公社(National Environmental Management Authority、NEMA)へ提出されたEnvironmental and Social Impact Assessment Study Reportから判明した。計画には、樹脂、溶剤、充填剤、顔料、添加剤といった塗料原料用の倉庫と製造ユニットの設置、品質管理試験室や在庫を保管するスペースの設置が記載されている。
中国資本のテック企業Operaが、Opera傘下のナイジェリアのフィンテック企業OPay株の評価額が大幅に増加したと発表した。2024年末時点で9.4%の持分が2億5,830万ドルと評価されたといい、これに基づくとOPay全体の評価額は約27億5,000万ドルだったと推定される。
あわせてOperaは、過去2年でOPayへの投資に関して9,480万ドルの含み益を計上したことを明らかにしている。2023年は8,980万ドル、2024年にはこれに500万ドルを追加した。
2018年創業のOPayは、ナイジェリアとエジプトで急成長したことで、フィンテックの主要なプレーヤーとなった。ナイジェリアで2023年に起こった紙幣不足によりデジタル化が進んだことで、OPayの顧客基盤は4倍となったという。
Operaは2023年にOPayへの出資比率を6.4%から9.4%に高めている。同社は、OPayの売上が2023年から2030年の間に年率35%で成長するとの見方を示している。
ケニアで配車ドライバー向けに中古車融資を提供する日系スタートアップHakki Africaが、シリーズCラウンドで27億1,000万円を調達した。2025年2月のファーストクローズで19億7,000万円を調達したところ、今回グロービスキャピタルパートナーズ、SBIグループ、TISインテックグループから約6億円のエクイティー、ファルスからデットで1億3,800万円を借り入れ、あわせて7億3,800万円を追加した。累計調達額は49億円となる。
Hakki Africaは2019年に創業し、2020年から現在の事業を開始した。配車アプリやタクシーのドライバーの与信審査を機械的に行うことができるクレジットスコアリングシステムを構築することで、コストとリスクを抑えた車両融資を提供する。連結の経常利益ベースで3期連続の黒字を達成しているという。
調達資金はIPO手続きに向けた採用に充てる。2025年は南アフリカとインドに事業を拡大する。
セイコーエプソンのUAE子会社の南アフリカ支店が、ヨハネスブルグのイノベーションセンターとオフィスを開設した。
イノベーションセンターは530平方メートルの広さで、企業向けから小規模事業や家庭向けまでのプリンターが展示される。こういった施設はアフリカでは初めての開設となる。
モロッコの農産物の輸出促進機関Morocco Foodexの発表によると、モロッコ産柑橘類の日本への最初の輸出が行われた。コンテナひとつが正式に陸揚げされた。
日本はモロッコにとって13番目に大きな農産物および食品の輸出先であり、品質とトレーサビリティにおいて高い基準を持つ市場で知られる。モロッコの柑橘類のうち、特に高級品種のNadorcottは日本で人気である。鮮度と旬を重視する食文化を持つ日本は、生鮮果実の消費量が多く、モロッコ産柑橘の重要な販路となりえる。モロッコにとって、日本の厳格な検疫基準を満たし、市場の好みに合わせた品種を輸出することは、今後の輸出多様化への道を開くものである。
2023年におけるモロッコの日本への農産物・食品の輸出量は1万8,000トンで、金額ベースでは140億円相当に達している。