国別情報 ナイジェリア
新しい港が稼働を開始し、日本企業が出資する電力スタートアップも存在するナイジェリア。どのような事業環境の国なのでしょうか。解説しています。
(写真はナイジェリアで稼働を開始したLekki Port、同サイトから)
毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。
トヨタ自動車やフォードの南アフリカ工場向けにCNC 旋盤加工部品やフライス加工部品を製造している南アフリカのWekabaが、2,500万ランド(2億1,000万円)を投じて工場を開設した。
新工場には100台以上のマシニングセンタが導入されており、ティア1および2の自動車メーカー向けにサスペンションなどを大量かつ継続的に製造する能力を備えている。工場の開設により、約40人の正規雇用を生む効果が見込まれる。
Wekabaは1981年に設立された。自動車、鉱業、鉄道、建設といった業界の大手企業を顧客としている。今回の工場は同社によると「世界クラス」であり、南アフリカの自動車業界が南アフリカ自動車マスタープラン(SAAM2035)に基づき目指している、国内調達率60%という目標の達成に資するものであるという。
※1ランド=8.7円(モーニングスター、11/5)
住居やビルなどの電力使用者向けに電力管理プラットフォームを提供するナイジェリアのスタートアップShyft Power Solutionsが、アフリカで電力販売側に収益管理のためのスマートメーターを提供する英SteamaCoと合併した。気候変動に特化した英Equator VC、英Praetura Ventures、ケニアKawiSafi Venturesが新たな投資を行う。
両者はともにIoTを用いた電力計測を行っている。SteamaCoはアフリカ20カ国で10年以上、電力会社に対して送電監視を改善し、損失を検出し、電力供給を最適化するサービスを提供してきた。Shyft Power Solutionsはクラウドベースの分散型エネルギー管理システムを提供している。電力提供側と使用側の両方をカバーし、両者の技術を組み合わせることで、電力供給の課題に対処する。
Shyft Power Solutionsは2021年に、ソフトバンクビジョンファンドのEmerge Programや仏TotalEnergiesの気候変動に特化したTotal Carbon Neutrality Venturesにより310万ドルを調達し、シードであわせて380万ドルを調達していた。同社はこの資金により、AIとデータ分析機能の拡大に注力し、データ駆動型アルゴリズムの開発に成功したことで、電力使用者が電源を監視、自動化、最適化できるようにし、場合によってはコストを最大57%削減させることに成功している。
アフリカの配電会社向けにソフトウェアを提供するナイジェリアのBeacon Power Services(BPS)が、東アフリカと南部アフリカでのサービス拡大に向け、シリーズAラウンドで金額非公開の資金調達を行った。Partechがリードインベスターを務め、FinnFund、Gaia Impact、Proparco Group、Kaleo Ventures、Seedstars Africa Ventures、Clermount、Global Brain、Global BrainがGPである日揮グループのCVCファンドJGC MIRAI Innovation Fund、On Capitalなどが投資した。
BPSは2013年に設立された。アフリカの配電会社が配電ネットワークを効率的に管理するためのAI搭載のソフトウェアを提供している。配電設備と顧客側の機器からデータを収集し管理できるCustomer and Asset Information Management System(CAIMS)と、リアルタイムでの配電状況の追跡と管理が行えるAdoraの2種類のソフトウェアがある。BPSはガーナにおいて、電力公社Electricity Company of Ghana(ECG)を通じて500万人以上への電力供給に関わり、ECGの売上を2年で2倍にしたという。ケニア、ザンビア、米国でも事業を行っている。
日本郵船、商船三井、川崎汽船の出資により設立されたOcean Network Express(ONE)を含む海運3社が、ナイジェリアの深海港Lekki Deep Sea Portへ隔週で寄港する。商業運用開始から18カ月経ってようやく、同港の稼働が開始することとなる。
他の2社は中国COSCO SHIPPING Lines(COSCO)とイスラエルZIMで、11月8日にCOSCOのコンテナ船がLekki Deep Sea Portに入港したことでサービス開始が明らかになった。
Lekki Deep Sea Portは、港湾の開発・運営会社Lekki Port LFTZ Enterprise(LPLEL)とターミナル運営会社Lekki Freeport Terminalおよびフリーゾーン運営会社Lagos Free Zone(LFZ)が経営している。
ケニアの発電公社Kenya Electricity Generating Company(KenGen)が、地熱や水力、風力といった再生可能エネルギー発電により発行されたカーボンクレジット460万トン分を、カナデビア(旧名日立造船)の子会社でスイスHitachi Zosen Inovaが出資するケニアの廃棄物管理会社Sintmond Groupへ販売する。1トンあたり約6.94ドルで取引され、計3,205万ドルが販売される。カーボンクレジットの種類のうち、京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)を通じて発行される認証排出削減量(CER)の販売となる。
KenGenは計6件のプロジェクトを通じてカーボンクレジットを得ている。そのうち地熱発電はOlkaria Iのユニット4および5、Olkaria IIおよびOlkaria IVの3件で、他には水力発電がTana Hydro Power Stationの再開発およびKiambere Hydro Power Project最適化の2件、風力発電を行うNgong Windの1件で構成されている。販売後、KenGenのカーボンクレジット残高は184万トン分になる。
スイスの廃棄物管理会社Hitachi Zosen Inovaは、2022年に出資先であるSintmond Groupを通じたケニアへの進出を発表している。
※1ケニアシリング=1.2円(モーニングスター、11/15)
アフリカ輸出入銀行(Afreximbank)が、同行初のサムライ債を発行し813億円を調達した。サムライ債とは、日本国外の発行体が日本の投資家向けに円建てで発行する債権を指す。アフリカの多国間開発金融機関がサムライ債を発行するのは、アフリカ開発銀行に続く2行目となる。過去にはエジプト、ガーナ、南アフリカ、チュニジア、モロッコなどのアフリカ政府がサムライ債を発行しており、資金調達源の多様化のため、ケニアとナイジェリアが発行を検討している。
アフリカ輸出入銀行は2017年から円建ての融資、いわゆるサムライローンでの資金調達を行っていた。機関投資家向けの販売では150件近くの注文を集め、これはアフリカの発行体によるサムライ債の発行で最も多い注文件数となった。発行総額813億円のうち672億円は機関投資家向けで、それぞれ2年、3年、5年、7年、10年を満期とする固定金利の5つのトランシェで構成された。注文先は、資産運用会社が34%、国内口座が21%、地方銀行が18%、オフショア口座が16%、生命保険会社が6%、中央共同組合が5%となった。個人投資家向けの販売も行い、固定金利の3年債で141億円を調達した。SMBC日興証券が主幹事を務め、日本格付研究所は今回のサムライ債にA-の格付けを与えた。
三井物産が、カナダFirst Quantum minesがザンビアに所有する銅・ニッケル鉱山の権益獲得に向けた入札において、最高額で入札したと報じられている。同じく入札したサウジアラビア政府系のManara Minerals Investmentよりも高い金額を提示した模様だ。
対象となっている2つの鉱山の約20%の権益で、三井物産は約20億ドルで入札したと報じられている。First Quantum minesと取引条件の交渉をすすめており、協議を経て決定する。
銅は、電気自動車や再生可能エネルギーに不可欠な資源である一方、新たな鉱山の開発が進んでいないため、投資家から注目を集めている。ザンビアの銅生産量と売上高は、2023年のFirst Quantum minesの決算において約半分を占めており、4億5,000万ドル以上の営業利益を生み出した。
豊田通商が出資するエジプトの風力発電所プロジェクトRed Sea Wind Energyが、発電容量を150メガワット増設する。この増設に対し、国際協力銀行(JBIC)との間で5,100万ドルを上限とするプロジェクトファイナンスによる貸付契約を締結した。協調融資先の欧州復興開発銀行(EBRD)、三井住友銀行、農林中央金庫、仏銀行Société Généraleからの融資額は1億600万ドルで、あわせて1億5,700万ドルの融資を確保した。
Red Sea Wind Energyは、豊田通商が20%、豊田通商子会社ユーラスエナジーホールディングスが20%、仏資源会社Engieが35%、エジプトの建設・資源会社Orascom Constructionが25%を出資する企業で、カイロから南東に200キロメートルとなるスエズ湾沿いのRas Gharebで発電容量504メガワットの陸上風力発電所を建設している。今回の融資は、150メガワットの発電所を増設することへの融資となる。Red Sea Wind Energyはすでにエジプトの国営送電会社Egyptian Electricity Transmission Companyと25年間の電力購入契約(PPA)を締結している。
JBICは2023年3月に、同風力発電プロジェクトに対して2億4,000万ドルを上限とする融資契約を締結している。今回と同じ協調融資元が総額5億100万ドルの協調融資に合意していた。
欧州復興開発銀行(EBRD)は今回の融資とあわせてエジプトに対し、再生可能エネルギーや水、輸送、インフラ、産業、農業、サービスなどの分野で合計約125億ユーロを投資している。再生可能エネルギーに対してはこれまで25億ドル以上を動員しており、それによる総発電容量は4.7ギガワットに及んでいる。