アフリカの自動車生産国と日本メーカーの動向
アフリカでは、トヨタ、スズキ、いすゞ、ホンダ、日産、三菱、日野といった日本企業が組み立て生産を行っています。国別の新車生産台数とあわせてまとめました。
(写真は南アフリカで販売されているスズキ車、ABP撮影)
毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。
農業分野に特化した投資会社であり農業商社であるUAEのInvictus Investment Companyが、モロッコの養鶏大手Zalar Holdingから、モロッコの大手穀物商社Gradercoの株式60%を取得し買収した。
Gradercoはその子会社とともに、モロッコ全体の穀物輸入量の25%に相当する年間約300万トンの穀物を輸入している。モロッコ国内の4つの港湾と6つのターミナルを利用して、小麦やとうもろこしといった穀物を輸入し、売上高は2023年に15億エミラティディルハム(610億円)を超える。
Zalar Holdingsは、養鶏、飼料原料穀物の輸入と製造販売、食肉加工を一貫して行っている。創業一家が51%、三井物産が37.8%、米Seaboardが11.2%を保有する。2021年の売上高は80億モロッコディルハム(1,200億円)、EBITAは4億モロッコディルハム(60億円)だった。ZalarにとってGradercoは収益の柱のひとつであり、川上から川下に至る事業統合戦略の要を占めていた。同社の株式を売却することでGradercoのみならずGradercoの子会社である飼料用穀物原料輸入や貯蔵事業の支配権も譲り渡すこととなる。
Invictus Investment CompanyはUAEに本拠を置き、中東、アフリカ、アジアの70カ国で農業食品分野の企業に投資している。2014年以来子会社のInvictus Tradingを通じて、農産物や消費財の流通を行ってきた。2023年の売上高は81億エミラティディルハム(3,300億円)で、穀物の取扱量は530万トンに達している。2023年にモロッコ、タンザニア、モザンビーク、マラウイ、ブルンジ、ルワンダといったアフリカ諸国やトルコを含む新市場に進出したほか、既存市場であるアルジェリアとエジプトでの事業を強化した。総合農業グループを目指す長期戦略に基づき、今回の買収によりアフリカ事業の地理的拡大とともに、川下の事業を強化する。
※1エミラティディルハム=41円(モーニングスター、4/4)
※1モロッコディエルハム=15円(モーニングスター、4/4)
豊田通商が、アフリカの再生可能エネルギー事業に特化した子会社Aeolus(エオラス)をフランスに設立した。どちらも豊田通商の100%子会社である仏CFAOと日本最大の風力発電事業者であるユーラスエナジーホールディングスが50%ずつ出資した。資本金は1,500万ユーロとなる。
これまでは、3社がそれぞれ再生可能エネルギー事業を展開していた。今後はアフリカにおける再生エネルギー事業は新会社に集約し、2030年までに発電容量を現在の4倍弱となる1ギガワットまで伸ばす。再生可能エネルギーのIPP事業をコア事業として、太陽光や風力発電の開発プロジェクトにも関与し、将来的には再生可能エネルギーを活用したソリューションの提供や新規事業開発にも取り組む。豊田通商は再生可能エネルギーを重点分野に位置づけており、2030年までに約7,000億円を投じる計画となっている。
商船三井がアフリカに特化したベンチャーキャピタルであるNovastar Venturesの第3号ファンドへの出資を決定した。
Novastarは2014年に設立された。今回の第3号ファンドでは調達総額2億ドルを目指している。
スズキの南アフリカ子会社Suzuki Auto South Africa(Suzuki SA)の新車販売台数が、同社初となる年間5万台を突破した。2023年4月から2024年3月までの会計年度における販売台数が5万1,969台となった。前会計年度は4万9,576台であった。
南アフリカの新車販売台数は落ち込んでおり、たとえば2024年3月の販売台数は前年同月比で11.3%減少し、8カ月連続の減少となっている。このような状況下でスズキは販売台数やシェアを伸ばしている。
スズキは2023年4月にGrand Vitaraのハイブリッドモデルを発売し、南アフリカでのハイブリッド車の販売を開始した。同じ4月にパネルバンEeco、8月にはSUVであるFronxとXL6、11月にはジムニーの5ドアモデルを発売した。
米国の自動車用電子部品メーカーVisteonが、チュニジアに新工場を開設した。自動車用の電子部品を日量2万個製造する予定で、その多くは欧州と日本に輸出する。投資額は6,500万ドルで、そのうち工場建屋の建設に1,500万ドルを費やし、残り5,000万ドルは工場内に設置する設備に費やした。Visteonはすでに、チュニジアのBir-el-Beyに工場を保有している。
新工場は首都チュニスから南に30キロメートルの地点に所在する、Ben Arous県のテクノロジーパークParc scientifique et technologique de Borj Cédriaに建設された。工場では2024年に400人、2028年までに1,000人の新規雇用を創出することが見込まれる。
新工場が所在するテクノロジーパークは、高い技術力を持つ企業が工場を設立するのに適しており、事務手続きが簡単であることや、科学技術分野の複数の研究機関とのコネクションを持つことも特徴となる。
北国銀行が、ケニアのヘルスケアスタートアップVitality Health Solutions(Vital Ray)に融資したと発表した。直接融資となる。融資額は非公開。
Vitality Rayは2014年に設立された。MRIやCTスキャンを用いた高度画像検査センターや、がん治療、血液検査向けの臨床ラボ事業を行っている。同社は子会社のCCイノベーションズを通じて、ケニアに現地法人を設立する準備を進めている。
ナイジェリアで配車ドライバー向けの車両融資を行うMetro Africa Express(MAX)が、ガーナの電動バイクスタートアップKofa Technologies(Kofa)と電動バイクへの融資で協業するため提携した。MAXが配車ドライバー向けに、Kofaが中国の電動バイクメーカーTailG Group(TailG)と共同開発した電動バイク2,000台以上に対して融資を提供する。
MAXはナイジェリアに拠点を置き、配車サービスのドライバー向けにサブスクリプション形式の融資で車両を提供している。融資完済後、ドライバーは車両を所有することもできる。融資の対象には電動バイクも含まれる。
Kofaはガーナに拠点を置き、電動バイク向けバッテリー交換ステーションの配備を行っている。2023年10月には電動バイクの発売に向けTailGとの提携を結んでいる。
住友商事の出資先でありアフリカでスマートフォンや電動バイクの割賦販売を行うケニアのM-Kopaが、電動バイクの拡販に向け、ケニアで事業を行うエストニア発の配車・フードデリバリーアプリ大手Boltと提携した。両社は今後3年間で、ケニアのBoltのドライバーに5,000台以上の電動バイクを割賦販売することを目指す。
M-Kopaは、既存提携先でありアフリカで電動バイクの組み立て生産を行うケニアのROAMおよびルワンダのAmpersandから電動バイクを調達し、市場価格よりも割引いた価格かつ割賦で販売する。ガソリンバイクを保有する総コストと比べて約40%を削減できる見込みである。利用者はBoltの配車アプリのみに登録することが条件で、返済後にバイクを所有できる。
M-Kopaは2010年に設立された。太陽光発電キットから始め、現在ではスマートフォンと電動バイクの割賦販売(PAYG)を行うほか、オンラインで利用できる小口融資や医療保険も提供している。ケニア、ウガンダ、ナイジェリア、ガーナで事業を展開し、合わせて400万人の顧客に累計10億ドル以上の商品を割賦で販売してきた。ケニアでは電動バイク向け融資で約3分の2のシェアを占めている。
Boltは2019年以来、アフリカで自然環境に配慮した取り組みを進めてきた。ケニアのナイロビでは2021年に、ハイブリッド車や電気自動車を用いた配車サービスBolt Greenを開始している。
ケニア政府は電動バイク含む電気自動車の普及に積極的で、最近ではケニア国内での電気自動車の組み立て生産を促進する政策National E-mobility Policyの草案を発表している。
南アフリカの小売最大手Shopriteが、同社の小売衣料チェーンUNIQの20店舗目をヨハネスブルグの中心地Sandton City Mallに開店した。2023年4月にプレミアム食料品チェーンCheckers傘下のアパレルブランド店舗として立ち上げ、1年で20店舗まで増やしたことになる。さらに追加で2024年内に20店舗の開設を目指している。
UNIQは、南部アフリカ開発共同体(SADC)のメンバー国から衣料品を調達しているが、南アフリカ国内からの調達を目指しており、すでに協力工場を特定したという。
近年Shopriteは、ペット用品、ベビー用品、アウトドア用品といった事業分野を伸ばすべく、専門店舗を展開している。UNIQは2023年に競合のPick n PayやMassmartがファストファッションを扱うのに対し、UNIQは1着369ランド(2,900円)のジャンパーなど、価格がやや高めのプレミアムベーシック衣料を販売している。
※1ランド=8.1円(モーニングスター、4/26)
愛知ダイハツなどが出資するJumbo Africa Auto Auction SEZ(Jumbo AAA)が、ケニアで中古車オークション事業を開始する。Naivashaの経済特区Naivasha Special Economic Zoneにオークション会場を開設した。
オークションでは、乗用車、バイク、トラック、機械、およびこれらの部品を取り扱う。会場だけでなくオンラインプラットフォームでも入札を受け付け、現地通貨ケニアシリングでの決済を受け入れる。
Naivasha経済特区は、広さは1,000エーカーで、今後の拡張に備え5,000エーカーが確保されている。工業団地用地やコンテナデポが整備されており、鉄道との接続が可能である。税制優遇措置や整備されたインフラ、簡略な手続きや規制緩和といったメリットが享受できる。オルカリア地熱発電所に近いため電気代が安いことも特徴となる。