- アフリカのビジネス環境
アフリカにおける日本企業の動き(2024年3月)
(写真はチュニジアでさかんなまぐろの養殖、The fish siteより)
毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。
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【セネガル】三菱商事が出資するシンガポールの農業商社Olam Group傘下のOlam Agriが、セネガルの大手飼料メーカーAvisenの全株式を1,700万ユーロで買収(3/4)
シンガポールの農業商社Olam Group傘下のOlam Agriが、セネガルの大手飼料メーカーAvisenの全株式を1,700万ユーロで買収した。今回の買収により西アフリカでの鶏肉飼料の生産能力を拡大する。
Olam Agriは、食品、飼料、繊維を事業対象とする企業で、セネガルでは約10年に渡り小麦製粉事業を展開している。ナイジェリアにおいては、飼料の製造とひなの生産を行っている。
Avisenは2000年に2人の獣医師によって設立された。養鶏用飼料ではセネガルで2番目に大きく、Rufisqueに所在する工場で年間10万トン以上を製造している。
【南アフリカ】エーザイが南アフリカの診察予約スタートアップRecoMedに投資(3/7)
製薬会社エーザイが、南アフリカのスタートアップで診察予約プラットフォームを営むRecoMedに投資した。調達金額は公開されていないものの、RecoMed による資金調達としては過去最高額であるとされることから、2021年にVunani Fintech Fundから調達した150万ドルを上回ることが確認されている。今回の調達により、乳がんの検診や診察を対象とするサービスを開始する。
RecoMedは2013年に設立された。地域の家庭医や開業医、歯医者の診察予約をオンラインで行うことができる。医療提供側にとっては、検索や保険会社など様々なチャネルからもたらされてきた患者予約を統合することができる。医療提供者側に診察毎に手数料を請求することで売上を得ている。3,000人以上の医療提供者に利用されており、月間25万人以上の患者がプラットフォームを閲覧し、月間10万件以上の予約が行われているという。2023年の売上は前年比150%の増加を記録している。
エーザイはアフリカ市場に参入したばかりであり、患者に向けたデジタルプラットフォームとテクノロジーを用いるサービスの活用を目標としている。
【南アフリカ】計量・包装機大手のイシダが、南アフリカの食品向け包装機National Packaging Systemsを買収(3/8)
計量・包装機大手のイシダが、英国子会社を通じて、南アフリカの食品向け包装機 National Packaging Systemsを買収した。
【エチオピア】エチオピアの日系電動バイクスタートアップDodaiが、これが初のアフリカ案件となるニッセイ・キャピタルならびに武蔵精密工業等からシリーズAラウンドで300万ドルを調達(3/15)
エチオピアで事業を展開する日系電動バイクスタートアップDodaiが、シリーズAラウドで300万ドルを調達した。日本生命のベンチャーキャピタル部門であるニッセイ・キャピタルと、自動車部品サプライヤーである武蔵精密工業などが投資した。ニッセイ・キャピタルがアフリカの企業に投資するのは初めてとなる。
Dodaiは米国に本社を置き、2023年にエチオピアに現地法人を設立した。首都アディスアベバで、電動バイクを組み立て、配送を行う商業ライダー向けに販売している。電動バイクにはリチウムイオンを搭載し、現地のマイクロファイナンス機関Vision Fundと提携して融資も提供している。今回の調達資金の80%は部品とリチウム電池の輸入に費やし、残りは事業費とバッテリー交換システムのソフトウエア開発に充てる。
【ナイジェリア】三菱UFJのCVCが出資するナイジェリア発の自動車融資スタートアップMooveが、Uber率いるシリーズBラウンドで1億ドルを調達。評価額は7億5,000万ドル(3/19)
ナイジェリア発の自動車融資スタートアップMooveが、シリーズBラウンドで1億ドルを調達した。配車サービス世界大手の米Uberがリードインベスターを務め、UAEの政府系投資ファンドMubadala Investment Company、UAEのThe Latest Ventures、AfricInvest、Palm Drive Capital、Triatlum Advisors、Future Africaが投資した。Mooveの評価額は、2023年8月の調達時点では5億5,000万ドルであったところ、今回の調達を経て7億5,000万ドルとなった。
Mooveは2020年にナイジェリアで設立された。配車サービスのドライバー向けに、独自のクレジットスコアリングシステムで算出したスコアに基づく自動車ローンを提供している。ドライバーは毎週の売上の一定割合を返済に充てる。現在はUAEに本拠を置き、ナイジェリア、南アフリカ、ガーナ、英国、インド、UAEの計13都市で事業を展開し、各国でUberの車両供給パートナーを務めている。これまでに2万人以上のドライバーに自動車ローンが提供され、Mooveが融資した車両で3,000万回以上の運行が行われてきた。ARRは1億1,500万ドルに達している。
今回の調達資金は、Uberのドライバーに追加で4万5,000台を供給するために使われる。Mooveは今後数カ月以内に東南アジアや南米に進出する予定で、事業実施国を現在の6カ国から2025年末までに16カ国まで増やすことを目指している。UAEと英国では電気自動車への自動車ローンを開始しており、今後インドにも水平展開して、Uberのドライバーに計2万台超の電気自動車を供給する予定としている。
【ケニア】東芝エネルギーシステムズが、ケニアのオルカリア第一地熱発電所3か所の改修に向け蒸気タービンと発電機の供給契約を締結(3/19)
東芝エネルギーシステムズが、ケニアのオルカリア第一地熱発電所の1号機、2号機、3号機の改修工事向け発電設備の供給契約を締結した。改修工事のEPC契約者である中国山東電力建設第三工程有限公司(SEPCO III Electric Power Construction)から受注した。東芝エネルギーシステムズは蒸気タービンと発電機を供給する。
ケニアで最も古い1981年から順次運転を開始してきた1~3号機は、改修により3機あわせて45メガワットである現在の発電量を63メガワットまで拡大し、ケニア発電会社(Kenya Electricity Generating Company、KenGen)の発電量拡大目標に資する。ケニアは2030年までに発電の100%をグリーンエネルギーへ移行することを目指している。
東芝エネルギーシステムズは2025年12月までに納入する。改修工事は2026年12月までに完了する予定である。
【ナミビア】伊藤忠商事が覚書を締結したナミビアのグリーン水素製造Hyphen Hydrogen Energyに対して、ドイツ政府が戦略的海外プロジェクトとして資金提供の意向(3/22)
英Nicholas Holdingsと独Enertragの合弁企業であり、ナミビア初の大規模グリーン水素プロジェクトを主導するナミビア企業Hyphen Hydrogen Energy(Hyphen)に対して、ドイツ政府から新たな資金提供を行う意向を表明した。Enertragがドイツ政府から、戦略的海外プロジェクトとして、対外貿易促進手段を通じて通常以上の支援を追加で提供することの妥当性を確認する意向表明書(LOI)を受け取った。
Hyphenは総額100億ユーロを投じてグリーン水素を製造する予定で、その水素を用いたグリーンアンモニアの製造までを行う。製造したグリーンアンモニアは主に輸出する予定で、生産能力は2027年までに100万トン、2029年に200万トンまで拡大することを目指す。
Hyphenは2021年にナミビア政府から本プロジェクトを落札した。工場の建設地として4,000平方メートルの用地を確保しており、2025年1月に着工し2026年末までの稼働を開始することを目指している。工場の動力源として再生可能エネルギーで7ギガワットを発電し、3ギガワットの電解設備容量を持つ電解層を用いてグリーン水素を製造する。化石燃料を用いる場合と比較して、二酸化炭素の排出量を年間500万~600万トン削減することが可能になる。
【南アフリカ】トヨタ自動車が南アフリカで生産するハイブリッド車の車種を拡大。ハイラックスとフォーチュナーを追加(3/22)
トヨタ自動車の南アフリカ子会社Toyota South Africa Motors(TSAM)が、ハイブリッド車の生産車種を拡大した。これまで南アフリカではハイブリッド車ではカローラクロスのみを生産していたところ、ハイラックスおよびフォーチュナーのハイブリッド車を、同社のダーバン工場の生産ラインに追加した。
ハイラックスもフォーチュナーも南アフリカで高いシェアを占めている。ハイラックスは南アフリカで最も売れている車種であり、フォーチュナーは、南アフリカの中型SUVセグメントでトップとなる40%のシェアを占め、月間販売台数は平均800台を超えている。
【ケニア、ルワンダ】豊田通商がケニアの電気バススタートアップBasiGoに300万ドルを追加投資、ケニアとルワンダでの組み立てを拡大(3/26)
ケニアの電気バススタートアップBasiGoが、エクイティで300万ドルを調達した。豊田通商の子会社であるCFAOのケニア法人CFAO Kenya、豊田通商がCFAOと共同で設立したコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるMobility54の2社が投資した。
BasiGoは今回の調達により、ケニアとルワンダにおける電気バスの組み立てを拡大する。同社によると、すでにナイロビのバス会社から500台、キガリのバス会社から100台の予約を受けていることから、部品輸入のスピードアップを図るという。
BasiGoは2022年、ケニアの自動車組立請負会社Kenya Vehicle Manufacturers(KVM)との提携により電気バスの製造を開始し、2024年2月に初回ロットを完成させている。現在ナイロビで少なくとも19台を民間企業向けにリース販売しており、今後3年間でケニア、ウガンダ、タンザニアで1,000台まで増やすことを目指している。
豊田通商は2024年2月、ケニア政府との間で同国のカーボンニュートラル達成に向けた戦略的合意に調印した。Mobility54は、2022年11月にBasiGoが660万ドルを調達したラウンドに参加している。アフリカ全土で自動車流通を手掛けるCFAOは、2024年1月にルワンダで東アフリカ初となる中国のBYDの電気自動車販売店を開設している。今回の調達を機に、CFAOはBasiGoのリースモデルを電気バス以外の車種にも拡大することを共同で検討する。
【チュニジア】日産自動車が、モロッコ、エジプトに続き、チュニジアで日産独自の電動パワートレインe-power搭載の電気自動車を発売へ(3/27)
日産自動車が、チュニジアで日産独自の電動パワートレインe-power搭載の電気自動車を発売すると発表した。アフリカでの電気自動車への需要をテストする取り組みの一環であり、2023年にはモロッコで小型クロスオーバーSUVのQashqai、2024年2月にはエジプトでミドルサイズSUVのX-Trailを対象に、e-power搭載の電気自動車バージョンを発売している。チュニジアではQashqaiを対象とする。
日産自動車はアフリカで60年以上に渡って事業を展開しており、南アフリカとエジプトに組立工場を持つ。2024年には、南アフリカで生産しているピックアップトラックのナバラを、新たにアルジェリア、リビア、スーダン、チュニジア、エジプトへと輸出することを目指している。
アフリカは自動車の所有率が低いため、自動車メーカーにとっての最後のフロンティアとされている。日産自動車によれば、1,000人あたり自動車保有台数の世界平均が182台であるのに対し、アフリカではわずか42台に留まっている。世界の他地域同様に、電気自動車はアフリカのほとんどの消費者にとっては手が届かない価格となっている。
【エジプト】武田薬品工業のエジプト法人とエジプト保健医療庁(EHA)が、がん治療向上にむけた治療部門の設立や研修プログラムの開発に関するMoUを締結(3/28)
武田薬品工業のエジプト法人Takeda Pharmaceuticals Egyptとエジプト保健医療庁(Egypt Healthcare Authority、EHA)が、がん患者に対する医療体制構築を支援する戦略的パートナーシップに関するMoUを締結した。
MoUに基づき武田薬品工業は、エジプトのがん患者に対して世界標準の医療を提供し、がん治療を充実させるために、官民パートナーシップや国際機関との連携を用いながら、がん治療のための包括的な診療部門の設立を目指すエジプト保健医療庁に協力する。さらに、国際基準に沿ったがん治療の成果を測定するための指標を策定し、がん患者に関する研究や分析調査を行うとともに、同庁の医療従事者に対して最新の医療運営管理手法に関する研修プログラムを開発する。
【アフリカ全般】ニッスイがアフリカの水産・食品市場の開拓に向け、アフリカに特化したプライベートエクイティAmethisの2つのファンドに出資(3/29)
大手水産会社ニッスイのヨーロッパ子会社Nissui Europeが、アフリカに特化したプライベートエクイティAmethisの2つのファンドに出資することを発表した。出資ファンドは、アフリカの農林水産業・食品を含む多様な産業において、中小企業を対象に投資するファンドとなる。
ニッスイは2022年に策定した長期ビジョンにおいて、グローバル展開を進めることを決めている。長期的な海外事業の成長に向けた布石として、アフリカ諸国の水産・食品市場に着目する。
Amethisは2011年に設立された投資会社で、フランス、ルクセンブルグに拠点を置く。コートジボワール、モロッコ、ケニア、エジプトなどにおいて投資活動を行っている。