- アフリカのビジネス環境
アフリカにおける日本企業の動き(2023年8月)
(写真はコンゴ民の道路を走る日本の中古車バス、ABP撮影)
毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。
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【ザンビア、コンゴ民、ナミビア】JOGMECが鉱物資源の調達を目的に、アフリカ3カ国と覚書や作業計画で合意(8/1)
日本政府は、電気自動車の電池に欠かせないコバルトなどの重要鉱物の調達を目的に、ザンビア、コンゴ民、ナミビアの3カ国と共同探査などの取り組みを行う。JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)が3カ国と覚書を締結または締結済み覚書を具体化した作業計画で合意する。
ザンビアとは、銅、コバルト、ニッケルを対象に、衛星を用いたリモートセンシングによる鉱山探査、官民会議の開催で合意する。コンゴ民とは、銅、コバルト、リチウムを対象に衛星技術を活用した探査技術の提供を行うことで合意する。ナミビアとは、銅、亜鉛鉱物、ウランの供給網整備のための調査を行い、国営鉱山企業Epangelo Mining Companyとレアアースの供給網強化に向けた作業計画で合意する。
【ルワンダ、ベナン、トーゴ】ベナンの電動バイクメーカーSpiroが、割賦販売を提供する英Bboxxと提携し電動バイクを拡販へ。仏銀行Société Généraleからは6,000万ドルの融資獲得(8/1)
アフリカで太陽光発電キットやスマートフォンの割賦販売を行う英Bboxxが、ベナンの電動バイクメーカーSpiro(旧M Auto)と提携した。提携によりSpiroは、Bboxxが太陽光発電キットの割賦販売において使用しているプラットフォームを活用し、顧客に少額融資を提供し、顧客のオンボーディングや代金回収を含むオペレーションを効率的に管理することが可能になる。ルワンダにあるBboxxの流通ネットワークを利用することで販売台数を伸ばしたり、Bboxxの販売店舗や配送センターを電動バイク用バッテリーの交換拠点として活用することも可能になる。
Spiroは2019年に設立された。電動バイクを組み立てて販売しており、そのバッテリーは交換ステーションで充電を待たずに交換できる。ベナン、トーゴ、ルワンダで事業を展開しており、3カ国合わせてアフリカの電動バイク会社として最大規模となる累計9,200台を販売した。延べ8,000万キロメートルの走行が行われ、バッテリーの交換回数は累計200万回を超え、発売初年度だけで計4,000万トンの二酸化炭素の排出が抑制されたという。
電動バイクは、従来のエンジンによるバイクのように高騰する燃料やメンテナンスのコストが不要であるため、ライニングコストが安い。Spiroによると、商用二輪ライダーは、電動バイクに乗り換えることで年間360ドルが節約できるという。一方で、購入価格は従来のバイクより高いため、BBOXXの融資プラットフォームが顧客の拡大につながる。
提携とは別にSpiroは、電動バイク拡販のための資金として仏銀行Société Généraleから6,000万ドルの融資を獲得した。同社のこの資金を元に、電動バイクのリースを拡大する。ベナンでは商用二輪が燃料として使っていた無許可ガソリンの価格が上昇したため、販売機会が生じている。Spiroにとっては、UAEの投資会社Africa Transformation and Industrialisation Fundから2,000万ドルを調達したのに続き、2023年に入って2回目の調達となる。
【アンゴラ】日本政府がアンゴラと投資協定の締結で合意(8/9)
日本政府がアンゴラと投資協定の締結で合意した。協定は、双方が国内手続を完了しそれを相手方に通告した後30日目に効力を生じる。
2010年に交渉を開始し、23年3月に実質合意していた。企業に対する技術移転の要求の禁止や、土地などの財産を正当な補償なく国有化するのを禁ずることなどが盛り込まれている。
アフリカとの投資協定の締結は、1978年に発効したエジプト、2014年のモザンビーク、2017年のケニア、2021年のコートジボワール、2022年のモロッコに次いで、アンゴラで6カ国目となる。
【ケニア】日本企業が出資するケニアの物流スタートアップSendyが、運転資金の枯渇により事業売却へ(8/9)
ケニアの物流スタートアップSendyが事業の売却を進めている。同社CEOが、事業売却のプロセスの渦中にあることを明らかにし、売却先などの詳細は2週間後を目処に正式に発表すると述べた。複数の関係者によると、この1年はコスト削減を進めてきたものの、2カ月前に運転資金が底をついたという。
Sendyは2015年に設立された。荷主とドライバーをマッチングするプラットフォームを運営している。2022年7月には従業員の10%の削減を発表し、10月には54人の解雇とともに、FMCGメーカーの商品を小売店に販売・配送するB2Beコマースサービスを終了した。2023年2月にはナイジェリアでのフルフィラメントサービスから撤退している。Sendyの事業売却は、資金調達を行い企業価値を高めたものの、事業コスト高や単価引き上げの限界に直面しているB2Beコマーススタートアップにおける最初の撤退事例となる。
Sendyはこれまで、豊田通商のCVCであるMobility54やAtlantica Ventures、VestedWorld、Keppel Capital、Enza Capital、AAICA Investment、Sunu Capital、Goodwill Investmentsなどから累計で2,650万ドルの資金を調達してきた。2022年には1億ドルを目標とする調達を進めていたが、商船三井のCVCであるMol Plusから一部を調達したに留まった。今年に入ってからの評価額は4,000万ドル~6,000万ドルまで下がっていたという。
【ケニア、ウガンダ】豊田通商のCVCが出資する二輪向け車両リーススタートアップTugendeが、分散型金融レンディングの米Goldfinchから調達した500万ドルが債務不履行に(8/10)
暗号資産の分散型金融による金融取引を提供する米Goldfinchが、同社プラットフォームを通じてモーリシャスに本社を置くTugendeのケニア子会社Tugende Kenyaに融資した500万ドルが債務不履行になったと発表した。Tugende Kenyaが融資の特約条項に反して、ウガンダ子会社であるTugende Ugandaに500万ドルのうち190万ドルを融通していたことが2022年12月に発覚した後、Tugende Kenyaが債務超過に陥っており返済余力がないことが明らかになったという。
Tugendeは、商用二輪ドライバー向けに車両リースを提供するスタートアップで、ウガンダとケニアで事業を行っている。ケニアのTugendeは、2021年に年利11.7%の固定金利、返済期間24カ月の条件でGoldfinchから500万ドルを調達した。その後同社は、ウガンダのTugendeが、マクロ環境と2022年に行った積極的な人員拡大が仇となりバランスシートが悪化した際に、190万ドルをケニアからウガンダに融通したという。しかしGoldfinchの調査によると、ケニアのTugendeも、この9カ月間で貸出先の規模と質が縮小していることから、Goldfinchへ返済するだけの資本を保有していない。融資の満期は2023年の10月であるものの、GoldfinchはTugendeが返済不可能であることは確実であるとしている。
Goldfinchは、返済を最大化するべく融資の再編を目指している。Tugendeは、既存の投資家と資本再編について協議を行っていると述べている。このニュースを受け、GoldfinchのGFIトークンは20%近く下落している。
【ナイジェリア】三菱UFJのCVCが出資するナイジェリア発の配車アプリ向け自動車融資スタートアップMoove Africaが、エクイティーとデットで計7,600万ドルを調達(8/10)
ナイジェリア発の自動車融資スタートアップMoove Africaが、エクイティーとデットで計7,600万ドルを調達したと発表した。UAEのアブダビ政府系投資会社Mubadala Investment Companyをリードインベスターとする新規および既存の投資家によるエクイティー出資が2,800万ドル、米投資会社BlackRock率いる複数の投資家によるデットが1,000万ドル、直近12カ月間に非公開で調達した3,800万ドルの合計となる。今回の調達を経て、Moove Africaの評価額は5億5,000万ドルに達した。同社は2021年にシリーズAラウンドで2,300万ドルを調達し、2022年にはシリーズA2ラウンドでエクイティーとデット合わせて1億500万ドルを調達していた。
Moove Africaは2020年にナイジェリアで設立された。配車サービスのドライバー向けに、独自のクレジットスコアリングシステムで算出したスコアに基づく自動車ローンを提供している。返済期間は12~48カ月、金利は8~13%で、ドライバーは毎週の売上の一定割合を返済に充てる。アフリカ、欧州、中東、アジアの13都市で事業を展開しており、事業実施国にはナイジェリア、エジプト、南アフリカ、ガーナ、ケニア、英国、インド、UAEが含まれ、同社はEMEA(欧州、中東、アフリカ)地域におけるUberの最大の車両供給パートナーである。
これまでにMoove Africaが融資した車両で1万5,000人のドライバーにより2,200万回以上の運行が行われた。売上高は2021年時点から17倍に増加しており、年間経常収益(Annual Recurring Revenue、ARR)は9,000万ドルに達したという。Uber以外にも、アフリカでも事業を展開するスペイン発の配車アプリGlovo、ナイジェリアの物流プラットフォームKobo360、エジプト発の乗り合いバススタートアップSwvlのドライバーにも自動車ローンを提供している。
今回の調達資金は、既存市場での事業拡大、カスタマーエクスペリエンスの改善、製品開発の強化に投じられる。
【ベナン】豊田通商がベナンで25メガワットの太陽光発電所の建設を受注(8/10)
豊田通商がベナン発電公社(Société béninoise d'énergie électrique、Sbee)から、25メガワットの太陽光発電所の建設工事を受注した。同社はこれまでケニアの地熱発電やエジプトの風力発電といった再生可能エネルギー案件に携わってきたが、西アフリカで再生可能エネルギー発電所を建設するのは初めてとなる。
この太陽光発電所は、仏コンソーシアムEiffage RMTによるプロジェクトで、EUやAFDの融資を得てPobè市に設立される。年間35ギガワット時の電力をベナン発電公社の送電網に25年間供給する。
【南アフリカ】南アフリカにおけるスズキ車の累計販売台数が20万台を突破。南アフリカでの月間販売台数シェアは10.05%(8/11)
スズキの南アフリカ子会社Suzuki Auto South Africa(Suzuki SA)の販売台数が、2008年からの累計で20万台を突破した。生活費が高騰する中で、人々はよりコンパクトでより燃費の良い車種を選ぶか、見合った価格を提案する自動車ブランドを探し歩いており、スズキ車はこの両方のニーズに応えているのだという。
Suzuki SAは、2008年に南アフリカで最初のディーラーを開設し、現在全土に100のディーラーを抱えている。2023年7月に4,361台を販売したことで、南アフリカでの累計販売台数は20万1,417台に達した。販売ペースは時間とともに加速しており、最初の5万台の販売には9年余りを要したが、次の5万台は4年、その次の5万台は17カ月、その次の5万台は12カ月程で販売した。
南アフリカの新車販売台数に占めるスズキ車のシェアは拡大しており、2023年5月には3,709台を販売して8.61%だったシェアは、6月には4,335台が売れて9.26%、7月には4,361台が売れて10.05%と伸びている。
【エチオピア】住友商事が出資するSafaricom Ethiopiaが、エチオピアでモバイルマネーM-Pesaの提供を開始(8/16)
ケニアのサファリコムや住友商事が出資するSafaricom Ethiopiaが、エチオピアでモバイルマネーM-Pesaの提供を正式に開始した。モバイルマネーのライセンスは5月に取得していた。Safaricom Ethiopiaは2022年10月にエチオピアでの事業を開始し、200万人のアクティブユーザーを抱えている。
競合となる国営通信会社エチオテレコムは、すでに2021年にモバイルマネーTelebirrの提供を開始しており、利用者数は3,430万人、取引金額は累計123億ドルに達している。小口融資や少額貯蓄サービスも提供しており、これまでに240万人に対し、累計7,440万ドルの融資を提供し36億ドル以上の貯蓄を支援してきた。Safaricom Ethiopiaはエチオテレコムとの競争に直面することになる。
M-PESAは、ケニアで2007年にサービスを開始した。いまでは成人人口の90%が使用するようになり、金融包摂を実現した。タンザニア、エジプト、ガーナ、コンゴ民、レソト、モザンビークを加えたアフリカ7カ国に展開し、5,100万人以上に利用されている。
【コンゴ民】いすゞ自動車子会社UDトラックスが、コンゴ民主共和国に組み立て工場を設立する計画(8/24)
いすゞ自動車の子会社である商用車メーカーUDトラックスが、コンゴ民主共和国にトラックの組み立て工場を設立することを計画している。同国の産業大臣が発表した。
大臣はまた、UDトラックスに対し、国内に3カ所ある経済特区のうちの一つに工場を設立するよう提案していることも明らかにした。経済特区に設置することで、輸入における免税などの優遇措置を享受することができる。
【ナミビア】伊藤忠商事が、ナミビアでHyphen Hydrogen Energyが主導する大規模グリーン水素プロジェクトへの参画を検討するための覚書を締結(8/25)
伊藤忠商事が、ナミビアのグリーン水素開発会社Hyphen Hydrogen Energyとの間で、ナミビアにおける大規模グリーン水素プロジェクトの参画を検討するため、覚書を締結した。
欧州のNicholas Holdingsと独Enertragの合弁企業Hyphen Hydrogen Energyは、主導するナミビアのグリーン水素プロジェクトに今後数年間で94億ドルを投資する予定である。まずは太陽光と風力による2,000メガワットの発電に44億ドルを投資する。2030年までに水素電解能力を5,000メガワットまで増やし、2027年までには年間100万トンのグリーンアンモニアを生産する。伊藤忠商事は、グリーンアンモニアを調達して日本やアジアにおける産業用途や将来のエネルギー利用に用いて脱炭素化を進めることを目指しているという。Hyphen Hydrogen Energyは、日本が世界有数のグリーンアンモニア需要地なると見込んでいると述べている。