アフリカにおける日本企業の動き(2024年9月)

アフリカにおける日本企業の動き(2024年9月)

(写真はケニアを走るARC Rideの電動バイク、ABP撮影)

毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。

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【エジプト】日立レール等のコンソーシアムが、エジプトで投資額8億ユーロの地下鉄改修プロジェクトを受注(9/2)

日立製作所のグループ会社である日立レール、エジプトの大手建設会社Orascom Construction、英鉄道建設会社Colas Railからなるコンソーシアムが、エジプト政府との間で、投資額8億ユーロの地下鉄改修プロジェクトを受注した。Orascom ConstructionとColas Railが35%、日立レールが本プロジェクトの29%を受注する。

カイロ地下鉄1号線の改修で、同路線は全長44キロメートルで35駅を結ぶ路線であり、毎日150万人以上の乗客を運んでいる。10月に改修作業が始まる見込みで、64カ月かけて完了する。日立レールは、信号、制御機器、通信インフラなどの重要な機器の改修を担当し、地下鉄システムの安全性と効率性を向上させる。Orascom ConstructionとColas Railは、駅、トンネル、電力供給機器、架線、鉄道電気システムの改修をリードする。地下鉄の通常運行を中断させることなくこれらの大規模な改修を行う。

本プロジェクトには、欧州復興開発銀行(EBRD)、欧州投資銀行(EIB)、フランス開発庁(AFD)などの著名な国際金融機関が融資を提供している。

【エジプト】三菱グループ率いる日本のコンソーシアムが、エジプトで9,000万ユーロを投じて建設される20メガワットのHurghada太陽光発電所を受注したと報じられる(9/4)

三菱グループ率いるコンソーシアムが、エジプトのHurghadaに9,000万ユーロを投じて建設される20メガワットの太陽光発電所を受注したと報じられた。エジプト初の蓄電用バッテリーを備えた太陽光発電所となる予定で、コンソーシアムには、三菱グループ以外に社名非公開の日本企業2社が参加しているという。エジプトは今後5~7年間で、再生可能エネルギーによる発電容量を28ギガワット増やすことを目指している。

コンソーシアムは今後、発電所の設計、建設、運営、保守を担うエジプト企業を選定する見込みで、2026年の稼働開始を予定している。現在はエジプト政府との最終交渉を進めており、2024年第4四半期中の締結を目指している。
この発電所は2016年に計画が発表され2019年の稼働開始を予定していたが、国際協力機構(JICA)からエジプトの新・再生可能エネルギー庁(NREA)への1億600万ドルの融資が合意に至らず遅延していた。

【ナイジェリア】ナイジェリアが、日揮が基本役務設計を受注している同国初の浮体式LNGプラント建設に向けてライセンスを供与(9/7)

ナイジェリア政府が、同国初となる浮体式LNGプラントの建設ライセンスを、ナイジェリアの特別目的会社UTM Offshoreに対し承認した。UTM Offshoreは、日揮ホールディングスの海外EPC事業会社日揮グローバルらのコンソーシアムとの間で、基本設計役務契約を締結している。

プラントは、ナイジェリア南部Akwa Ibom州沖合の米ExxonMobilのガス田に建設する。日量324百万立法フィートの天然ガスを処理し、年間280万トンの輸出向け液化天然ガス(LNG)と、国内向けLP(液化石油)ガスおよびコンデンセートを製造する。2028年までに建設を終え、2029年第1四半期に稼働を開始する予定である。正確な投資額は明かされていないが、アフリカ輸出入銀行は建設の第1段階に21億ドル、第2段階に30億ドルの提供を約束している。UTM Offshoreは、2023年にナイジェリアの石油会社NNPCが20%取得することに合意している。世界大手石油商社Vitol Groupとは、プラントで製造するLNGのオフテイク契約を締結した。

ナイジェリアの推定200兆立法フィートもの天然ガス埋蔵量を誇るが、採取された天然ガスの多くはフレアリング(燃焼処理)またはガス田に再注入されている。今回のガス田からもフレアガスを採取する。フレアガスフレアリングによる機会損失は年間10億ドル以上であるという。ナイジェリアは石油依存から脱するため、ほぼ未開発である国内ガス田への投資を奨励している。

【ケニア】武蔵精密工業が出資するケニアの電動バイクスタートアップARC Rideが、ケニアの保険会社GA Insuranceと保険スタートアップM-TIBAと提携し自動車保険を導入(9/16)

ケニアの保険会社GA Insuranceは、武蔵精密工業が出資するケニアの電動バイク組み立てARC Rideとケニアの保険スタートアップM-TIBAと提携し、電動バイクのドライバー向けに自動車保険を提供する。SwapCareというサービス名で提供されるこの保険では、事故によるドライバーの怪我や収入減を対象とし、ARC Rideのバッテリー交換サービスを利用する際に自動で保険が有効化される仕組みを導入した。

ドライバーは事故にあった場合自己負担なしで入院できるほか、入院に伴う収入の減少を現金で補填してもらえる。ドライバーが死亡した場合には葬儀費用が支払われる。M-TIBAの高度な保険プラットフォームを活用することで管理費を大幅に抑えるという。

医療保険の場合、ケニアにおける加入率は全人口のわずか26%にとどまっており、加入者は富裕層に集中している。SwapCareは、既存の保険商品を十分に利用できないバイクのドライバーに対して、経済的な保護を提供する役割が期待される。

【ケニア】豊田通商が出資する自動車売買プラットフォームAutochekとケニアの保険APIスタートアップTuracoが、ケニアで月払いの包括的な自動車保険を提供するため提携(9/17)

ナイジェリアの自動車売買プラットフォームAutochekのケニア子会社Autochek Kenyaが、顧客に月払いの包括的な自動車保険を提供するため、ケニアの保険APIスタートアップTuracoと提携した。ケニアで自動車融資、保険、車両の追跡、メンテナンスを組み合わせたサービスを提供する。従来の年間保険料ではなく月払いとすることで、手頃な価格に抑え管理もしやすくする。

Autochekは、車両の検査と金融機関の査定を経て、融資付きで自動車を売買するプラットフォームを運営している。ナイジェリアで事業を開始し、現在はアフリカ9カ国で事業を展開している。
Turacoは、組み込み型保険向けのAPIを提供している。低所得者層向けのシンプルかつ手頃な価格の医療保険および生命保険を対象としている。

【エジプト】日立製作所が白物家電の合弁を設立したトルコの家電メーカーアルチェリクが、子会社Bekoを通じてエジプトに白物家電工場を設立。日立ブランドの家電もエジプトで製造へ(9/18)

日立製作所と白物家電の合弁会社を設立したトルコの家電メーカーアルチェリクが、子会社であるトルコBekoを通じて、エジプトに白物家電工場を開設した。1億1,000万ドルを投じ、冷蔵冷凍庫、オーブン、食器洗い機を製造する。アルチェリク傘下のBeko、Whirlpool、Ariston、Indesitといった家電ブランドに加え、日立ブランドの家電も製造する。

工場は10th of Ramadan Cityの工業団地内に位置し、敷地面積は1万4,000平方メートルとなる。高度なロボットや無人搬送車(AGV)などの最新技術と、効率を最大限高めるためのデジタル製造技術を用いる。生産能力は年間150万台を予定しており、約2,000人を雇用する。

Bekoは、エジプトの国家戦略に合致する投資を行う場合に手続きを迅速化する「ゴールデンライセンス」を得たため、2022年7月に土地を取得し2023年に工場を開設することができた。政府戦略に沿って、部品の50%はエジプト国内で調達し、製造した家電の60%を中東、アフリカ、欧州に輸出し、年間輸出額が最大2億5,000万ドルに達することを目指す。

【東アフリカ】トヨタ自動車のベンチャーキャピタルToyota Venturesが、東アフリカで電動バイク販売予定の米スタートアップZenoの950万ドルのシードラウンドで投資。家庭用バッテリーとしても使え太陽光充電も可能なバッテリーを導入へ(9/24)

トヨタ自動車がシリコンバレーに設立したベンチャーキャピタルToyota Venturesは、米電動バイクスタートアップZenoが東アフリカへの進出に先立ち行ったシードラウンドの調達に、リードインベスターとして投資を行った。Zenoはこのラウンドで950万ドルを調達した。米ベンチャーキャピタルLowercarbon CapitalがToyota Venturesと共同でリードインベスターを務め、4DX Ventures、Active Impact、Advantedge、MCJ、RedBlueが投資した。

Zenoは2025年に東アフリカとインドで電動バイクの販売を開始する。アフリカの悪路で数人の乗客と荷物を載せて走行できる耐久性の高い車両をインドのメーカーと共同で開発したという。車両は購入するかリースするかを選択でき、バッテリーは従量課金制またはサブスクリプションによりリースするか、購入するか選ぶことができる。バッテリーは、スワップステーションで充電するか、別売りする太陽光パネルも備えた家庭用充電ドックを使って、送電線の電力か太陽光発電により自宅で充電することもできる。バッテリーは電動バイクに用いるだけでなく、携帯電話や家電、調理機器やウォーターポンプに使えるようにする。車両とバッテリーのサブスクリプションの初回費用の合計額が、ガソリンモデルのバイク車両を購入する価格を下回ることを目指す。

Zenoは2022年にテスラの元従業員によって設立された。バイク1台につき、2キロワットアワーの容量を持つリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを2個搭載する。東アフリカで電動バイク向けバッテリー交換サービスを提供する競合のスタートアップには、Ampersand、Arc Ride、Roam、Spiro、Zemboなどがいる。

【モザンビーク】日揮グローバルが、モザンビークで米ExxonMobilらが建設を目指すLNGプラントの基本設計(FEED)および設計・調達・建設工事(EPC)に係る見積役務を受注(9/26)

日揮ホールディングスの海外EPC事業を担う日揮グローバルが、仏Technip Energiesと共同で、モザンビークで米ExxonMobilらが建設を目指しているLNGプラントの基本設計(FEED)および設計・調達・建設工事(EPC)に係る見積役務を受注した。受注金額は明かされていない。

ExxonMobilが伊Eniおよび中国CNPCとの合弁会社Mozambique Rovuma Ventureを通じて取り組んでいるプロジェクトで、150万トンのトレインを12基設置し、LNGを年間1,800万トン生産する。日揮グローバルは、天然ガスを圧縮するコンプレッサーの駆動に電動モーターを採用することで、従来のガスタービンよりもプラント稼働時の二酸化炭素排出量を抑える計画を提案した。モザンビークでの組み立てが可能なモジュール式トレインを採用することで、コストを抑え納期の確実性も担保する。

【ナイジェリア】大原薬品工業が出資するナイジェリアの製薬会社Fidson Healthcareが、中国企業らとの合弁で約1億ドルを投じ、抗HIV薬を製造する工場を建設へ(9/28)

ナイジェリア最大の製薬会社Fidson Healthcareが、中国企業らとの合弁会社を通じて約1億ドルを投じ、抗HIV薬を製造する医薬品工場の建設を目指す。経済特区Lekki Free Trade Zoneで今後30カ月以内に建設することを予定している。

Fidson Healthcareは9月に行われた中国アフリカ協力フォーラムにて、今回の合弁相手である中国の製薬メーカーJiangsu Aidea PharmaとNanjing PharmaBlockおよびChina-Africa Development Fundと工場の設立について覚書を締結していた。Fidson Healthcareは2023年6月以来、16種類以上の新製品を発売している。かつては英製薬大手GSK向けに市販薬を製造していた。

ナイジェリアには200万人のHIV感染者がいると推定されている。2023年の発表によれば、ナイジェリアでは毎週新たに約1,400人がHIVに感染しており、約120万人のHIV孤児がいるという。
ナイジェリアでは近年、インフレ率の上昇と為替レートの変動を背景にグローバルメーカーの撤退が続いており、その穴を埋めるべくナイジェリア企業や中国企業が生産能力の拡大に取り組んでいる。

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