アフリカスタートアップ白書
今週のニュースで登場したHakki AfricaやDegasは、アフリカで何を行い、どれくらい調達しているのでしょうか。アフリカにはどのようなスタートアップが存在しているのでしょうか。2012年からの10年間に渡ってアフリカスタートアップへの投資案件をすべて記録した「アフリカスタートアップ白書」はこちらからダウンロードできます
(写真はサントリー食品インターナショナルがケニアで販売していた飲料、ABP撮影)
毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。
日野自動車の南アフリカ法人Hino South Africaが、同社の超大型トラックカテゴリーの販売台数が増加していることを明らかにした。2023年6月までの1年で239台だったところ、2024年6月までの1年では513台へと増加した。
同社によると、超大型カテゴリーの700シリーズが全面的にモデルチェンジされたことが顧客の好評を博し、売上を伸ばしたという。2023年6月までの1年の販売台数の大半は500シリーズの上位モデルで700シリーズは24台のみだったが、2024年までの1年では513台中295台が700シリーズだったという。
日本郵船、商船三井、川崎汽船が出資して設立されたコンテナ定期船事業を行うオーシャンネットワーク エクスプレス ジャパン(ONE)が、同社のシンガポール子会社とモロッコのUniversal Shippingとの合弁で、9月にモロッコに現地法人を立ち上げる。
カサブランカとタンジェの2カ所に拠点を置く。カサブランカはモロッコ経済の中心地あり、タンジェは主要な積み替え港である。ONEの進出により、モロッコの海運サービスの効率性と信頼性の向上が期待できるという。
豊田通商が設立したアフリカの再生可能エネルギー事業に特化する子会社Aeolus(エオラス)が、チュニジアで太陽光発電所を建設、所有、運営するIPP事業を行うと発表した。50メガワットの発電所を2カ所に建設する。総事業費は約7,900万ユーロで、エオラスが49%、ノルウェーの再生可能エネルギー企業Scatecが51%を出資する。チュニジア政府と20年間の固定価格による売買契約を締結する。
チュニジアの発電容量は、輸入燃料による火力発電に占められており、政府は2030年までに総発電量の35%を再生可能エネルギーへ転換することを目指している。
サントリー食品インターナショナルのケニア事業を担うSuntory Beverage & Food Kenya(Suntory Kenya)が、ケニアの消費財メーカーBidco Africaの飲料合弁会社Bidcoro Africaに全株式を売却する。ケニア競争当局が買収を承認した。Suntory Kenyaはケニアで、果汁飲料RibenaやエナジードリンクLucozadeといったソフトドリンクを販売している。
Bidcoro Africaは、ケニアの大手消費財メーカーBidco Africaとデンマークの飲料メーカーCo-Ro Foodの合弁会社で、ソフトドリンクやアイスキャンディーを製造、販売している。同社のブランドにはSuntopやSunquick、Suncolaなどがある。2020年には250万ドルを投じ、Sunquickブランドの濃縮ジュースを製造する工場を開設したが、ケニアのソフトドリンク市場における同社のシェアは1%に満たなかった。Suntory Kenyaは1.8%のシェアを占めており、買収によりBidcoro Africaはシェア拡大を目論む。ケニアのソフトドリンク市場はコカ・コーラ社が65%のシェアを占めている。
ケニアで配車アプリドライバー向けに自動車融資を提供する日系スタートアップHakki Africaが、ケニアで事業を展開する配車アプリ大手Boltと契約を締結した。Boltに登録しているドライバーに対して、Hakki Africaの融資を通常より安い頭金で提供する。Boltでのドライバー業務のパフォーマンスによってインセンティブも提供する。
計1,500台に1年半かけて融資を設定する。ドライバーは3年半かけて返済した後、車両を所有できる。ドライバーは自身の車両を所有することで、売上を増やし運用コストを削減できる。アフリカの配車アプリドライバーは自身の車両を所有していないことが多く、配車プラットフォームへの手数料に加え車両のレンタル料も支払う必要があるため、ドライバーの手元に残る金額は少なくなる傾向がある。さらにケニアのような途上国では、信用不足のため融資が利用できない人が多く、銀行の自動車融資の基準を満たせ人は少数に留まる。Hakki Africaの信用スコアリングシステムを用いると、これまで融資を利用できなかったドライバーでも融資を受けることが可能になる。
豊田通商のグループ会社Toyota Tsusho Africaと自動車部品メーカーオギハラのグループ会社Ogihara Thailandが、南アフリカで合弁会社Ogihara South Africaを設立し、新工場の建設を開始している。自動車用プレス部品を製造し、トヨタ自動車の南アフリカ工場に納入する。合弁会社の出資比率は、Ogihara Thailandが51%、Toyota Tsusho Africaが49%となる。
Toyota Tsusho Africaは南アフリカでトヨタ工場を運営するToyota South Africa Motors(TSAM)向けの調達を担ってきた。これまでOgihara Thailandから輸入していた部品を現地製造に切り替えることとなる。オギハラにとっては初めてのアフリカ事業となる。工場の建設資金は、TSAMが5億4,500万ランド(44億円)、合弁会社が6億3,000万ランド(51億円)を投じる。南アフリカ国内から年間2万5,000トンの鋼板を調達し、小型および中型の車体部品を製造し、ハイラックス、フォーチュナー、カローラに使用する。2026年1月の製造開始を予定しており、TSAM の工場と同じダーバンにある3万2,000平方メートルの敷地に建設される。
南アフリカでは、自動車産業政策において自動車メーカーに対し、部品の現地調達率を60%まで高めることが求められている。今回の工場設立により、TSAMが部品現地調達に費やす金額は年間7億ランド(56億円)増加する見込みである。
※1ランド=8.1円(モーニングスター、8/27)
住友商事が、ベルギーに本社を置き主にアフリカで建設・鉱山機械の代理店事業を営むBIA Groupと、少数株式の出資を含む戦略的資本提携を締結した。
BIA Groupは1902年設立で、西アフリカ、中部アフリカおよびベネルクス3カ国において、コマツ製品をはじめとした建機等を独占的に販売している。住友商事は北米、欧州、アジアでコマツ製品の代理店事業やレンタル事業を行ってきたことから、BIA Groupと提携することで、アフリカへと地理的な拡大を行う。住友商事のグローバルネットワークやコマツ製品の販売経験を共有することで、アフリカにおけるコマツ製品の販売を強化する。
住友商事が過半数を出資する、マダガスカルのアンバトビーニッケル・コバルトプロジェクトが債務再編に取り組む。住友商事がそれぞれ54.17%を出資するプロジェクト構成会社である、採掘会社Ambatovy Mineralsおよび精錬会社Dynatec Madagascarが、英国の裁判所に債務再編計画を提出した。
住友商事は、今回の債務再編の目的は事業の清算ではなく、プラント設備の不具合を修繕しニッケルの生産量を通常のレベルまで戻すことであると述べている。2024年4~6月のニッケル生産量は約8,000トンで、前年同期の約1万トンから減少している。2025年3月期の年間生産量は約3万5,000トンを見込んでいる。住友商事は同プロジェクトに2005年に初めて出資し、現在は韓国鉱害鉱業公団(Korea Mine Rehabilitation and Mineral Resources、KOMIR)が残りの株式を保有している。住友商事は2024年3月期に、当該プロジェクトに関連して890億円の減損を計上している。累計では4,100億円の損失をもたらしており、2,655億円の減損を計上してきた。
ニッケルは電気自動車のバッテリーに使用され需要は高いものの、インドネシア産の安価なニッケルによる供給過剰が発生しており、2022年後半から価格は半減している。豪BHPはオーストラリアのニッケル事業を少なくとも2027年まで閉鎖すると発表しており、英アングロ・アメリカンはニッケル事業の閉鎖か売却を検討している。グレンコアはニューカレドニアでの採掘事業の停止に動いている。
双日がガーナで農業事業を行う日系スタートアップDegasに出資した。あわせて、Degasが開発した収穫量の予想等ができる生成AI基盤モデルを、双日がタイで手掛けるキャッサバ農家向けアグリプラットフォーム事業に活用するべく、業務提携契約を締結した。
Degasは2018年に創業し、ガーナで小規模農家向けに肥料などの農業資材を提供し、収穫で返済を受ける農業ファイナンス事業を展開している。これまで6万5,000農家が登録したという。新しく開発した生成AI基盤モデルを用いると、森林や農地などの衛星画像を用いて土壌成分や収穫量等のデータをAIに学習させることで、収穫量を予想したり病害を検知することができる。
双日はさくらインターネットが提供するクラウドサービスと業務提携を締結しており、このクラウドサービスを用いてタイのプロジェクトにDegasの基盤モデルを用いる。
今週のニュースで登場したHakki AfricaやDegasは、アフリカで何を行い、どれくらい調達しているのでしょうか。アフリカにはどのようなスタートアップが存在しているのでしょうか。2012年からの10年間に渡ってアフリカスタートアップへの投資案件をすべて記録した「アフリカスタートアップ白書」はこちらからダウンロードできます
先月の「アフリカにおける日本企業の動き」。日本信号、豊田通商、日産自動車、ソニー・ミュージックソリューションズ、アノマリー、三菱ふそうトラック・バス、日本たばこ産業、豊田自動織機、シャープを取り上げました。
週刊アフリカビジネスの内容、費用、ご購読企業名はこちらからご覧ください