アフリカにおける日本企業の動き(2023年11月)

アフリカにおける日本企業の動き(2023年11月)

(写真はカメルーンの町並み、ABP撮影)

毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。

【ケニア】カテーテル治療用医療機器を製造販売する朝日インテックが、ケニアの私立病院Eldoret Hospitalと合弁設立で合意(11/1)

カテーテル治療用の医療機器を製造販売する朝日インテックが、ケニアのエルドレッドに所在する私立病院であるEldoret Hospitalと、カテーテル検査、治療の専門病院の開設を目的とした合弁会社を設立することで合意したと発表した。朝日インテックが45%、Eldoret Hospitalが55%を出資する。資本金は2億8,600万円。

Eldoret Hospitalの病院内にカテーテル治療ができる手術室を開設する。医療従事者へ、難易度が高い慢性完全閉塞治療のための手技なども含めたトレーニングを行う。

【アフリカ全般】SBIホールディングスが、汎アフリカベンチャーキャピタルNovastar Venturesと資本提携。あわせてNovastarの新ファンドに4,000万ドルを投じることをコミットし、同額の投資を日本企業から募る計画(11/2)

金融企業であるSBIホールディングスが、英国の汎アフリカベンチャーキャピタルNovastar Ventures(Novastar)への出資を発表した。過半に満たない株式を取得し非常勤役員を1名就任させる。加えて今後Novestarが運用する2本のファンドにアンカーインベスターとして計4,000万ドルを投じ、さらに同額の出資を日本の政府系機関や大手商社から募る方針であることを発表した。

Novastarは現在、3つ目のファンドであり農業や気候変動関連の事業に投資するAfrica People + Planet Fundを組成し2億ドル超を目標に資金調達を進めており、このファンドへのSBIホールディングスの出資が計画されている。このファンドでは、農業の市場へのアクセスや気候変動からの回復力に関するサービス、生物多様性や土壌回復、炭素回収といった気候変動関連のサービスを提供するスタートアップへの投資を行う。

Novastarは、最初に立ち上げた1億800万ドルのAfrica Fund IIや、15社に投資する8,000万ドルのファンドEast Africa Fundを通じて、ナイジェリアのB2Beコマース
TradeDepot、ケニアの保険APIスタートアップTuraco、ナイジェリアのエージェントバンキングスタートアップMoniepoint(旧社名TeamApt)、ガーナの医薬品流通スタートアップmPharma、ケニアの家具製造スタートアップMoKo、ケニアの農業資材B2B販売スタートアップiProcureなどへ投資してきた。

SBIホールディングスは子会社SBI Investmentを通じ、これまでアフリカのスタートアップに投資してきた。ケニアの小規模農家向けプラットフォームApollo Agriculture、ナイジェリアの銀行APIであるMono、南アフリカ発の公共交通データ提供WhereIsMyTransport(2023年10月に事業閉鎖)、ケニアで配車サービスドライバー向けに自動車融資を提供する日系スタートアップHakki Africaが投資先となる。

【ルワンダ】豊田通商などが出資するケニアの電気バススタートアップBasiGoがルワンダ進出(11/7)

ケニアの電気バススタートアップBasiGoが、米国国際開発庁(USAID)から150万ドルを得てルワンダに進出する。同社は2020年にシードラウンドで430万ドルを調達しており、2022年には660万ドルを追加で調達している。

BasiGoは2021年に設立された。ケニアの民間バス運行会社に電気バスを、走行距離に応じて課金するリースモデルで提供している。これまで累計19台を提供し、延べ100万人超の乗客にサービスを提供してきた。

ルワンダにおいても同様のモデルを導入し、2025年までに200台の電気バスを提供することを目指す。統計によれば、ルワンダでは公共交通向けに追加で700台のバスが必要とされている。ルワンダ政府は首都キガリの公共交通を急ピッチで拡大する計画を発表しており、2030年までに公共バスの20%を電気バスにする目標を掲げている。

BasiGoは、11月から路上運行試験を開始しKigali Bus Service、Royal Express、Volcanoに対してリースを行う予定である。2023年6月には、ルワンダのほとんどのバスに導入されている非接触型料金支払カードを運営するAC Mobilityと提携し、電気バスの料金徴収システムを統合している。
※1ケニアシリング=1.0円(モーニングスター、11/10)

【ケニア】住友商事がケニアのサファリコムと提携しスタートアップ支援を開始。サファリコムはシードステージ向けのファンドを新たに設立へ(11/8)

ケニアの通信会社サファリコムは、住友商事、サファリコムのモバイルマネーサービスを管理するM-Pesa Africaと提携し、アーリーステージのスタートアップを対象とするSpark Acceleratorプログラムを開始すると発表した。有望なスタートアップを発掘し、資金提供、メンターシップ、市場参入といった支援を行う。

2023年中に対象スタートアップを選定し、2024年前半を目処に支援を開始する。M-Pesaの決済機能との連携、活動拠点の提供、サービス開発や法務分野での支援、資金調達イベントなどを実施することを予定している。

サファリコムは2023年7月、2015年に設立したアクセラレータープログラムSpark Fundを再編し、シードステージに投資するファンドを設立することについて株主の承認を得ている。ファンドの投資額は明らかにされていない。

【エジプト】三井物産が、エジプトで養鶏事業を行うWadi Poultryへの出資を発表(11/16)

三井物産が、エジプトのWadi Group傘下で養鶏事業を行うWadi Poultryに、UAEに所在する持株会社を通じて出資することで合意し契約を締結したと発表した。出資額や取得比率は明らかにしていないが、Wadi Poultryは三井物産の持分法適用会社となる。

Wadi Groupは、1984年設立の家族経営企業で、農業・食品加工、養鶏、飼料の3つの領域で事業を行っている。養鶏事業においては、ブロイラーや種鶏、初生ひなの飼育、繁殖、孵化、販売を行っている。農業・食品加工では、オリーブオイル、オリーブなどを製造する。同社サイトによると、Wadi Groupの売上高は3億5,000万ドルで、2,600人を雇用している。
三井物産は、2018年にモロッコで養鶏と飼料事業を営むZalar Holdingsに出資している。

【カメルーン】カメルーンの遠隔医療スタートアップWaspitoが、シード拡張ラウンドで250万ドルを調達。豊田通商の子会社CFAOが設立したHealth54などが投資(11/22)

カメルーンの遠隔医療スタートアップWaspitoが、シード拡張ラウンドで250万ドルを調達した。豊田通商の子会社CFAOが運営するアフリカのヘルスケアスタートアップに投資に特化したファンドHealth54が投資したほか、ドバイの港湾管理会社DP WorldがNewtown Partnersを通じて投資し、他にもSaviu Ventures、AAIC Investment、Axian Venturesが投資した。今回の調達資金は、セネガル、ガボンといった仏語圏アフリカへの進出に費やす。Waspitoは2022年にシードラウンドで270万ドルを調達している。

Waspitoは2020年にカメルーンで設立された。スマートフォンのビデオ通話で患者と医師を繋ぐ遠隔医療サービスを提供している。類似サービスと違い、事前の予約をせずとも、オンライン状態にある医師を選ぶことで診察を受けられる。診察の結果検査が必要になると、提携先のラボが患者を訪問してサンプルを採取する。詳しい検査や入院が必要となれば、最寄りの提携先の病院がサポートする。自分にあった治療を探すために匿名でディスカッションフォーラムに参加し、医師に直接質問することもできる。治療に関わる様々なプロセスをオンラインでつないでワンストップで提供しようとしている。

同社は2023年初めにコートジボワールに進出した。同社によると、これまでカメルーンとコートジボワールで65万人の顧客を獲得し、950人の医師と提携して、6万件の診察を提供してきたという。コートジボワールでは、スマートフォンを購入したりインターネットを利用する余裕がない層にリーチすることを目的に、オンラインとオフラインのハイブリッドでサービスを提供しようと小規模なクリニックの設立を進めている。2024年第1四半期末には、カメルーンとセネガルでも同様のハイブリッドモデルを導入する。

【ケニア、南アフリカ】スマートフォンなどの割賦販売を行う住友商事などが出資するM-KOPAが、南アフリカのソウェトで太陽光発電キット割賦販売のパイロットを開始(11/22)

アフリカで家庭用太陽光発電キットやスマートフォンなどの割賦販売を行うケニアのM-KOPAが、南アフリカでパイロット事業を開始した。低所得世帯に対して太陽光発電キットを提供する。南アフリカでは近年停電が頻繁に発生しており、安定した電源の確保が課題となっている。

M-KOPAは2010年に設立された。太陽光発電キットから始め、現在ではスマートフォンや電動バイクの割賦販売(PAYG)を行っている。これまでにケニア、ウガンダ、ナイジェリア、ガーナで事業を展開し、合わせて300万人以上の顧客に累計10億ドルの商品を割賦で販売してきた。同社は2022年に、アフリカのより多くの国に進出し顧客数を1,000万人超まで伸ばしたいとの意向を表明していた。その資金として、2023年5月にはエクイティーとデットで合わせて2億5,000万ドル超を調達している。

南アフリカでは、ソウェトのタウンシップでパイロットを行う。低所得から中所得層を対象とする同社の製品ラインナップとソウェトの人口動態が一致するとの考えからである。同社の割賦販売では、担保や保証、収入証明を必要とせず、身分証明と保証金が用意できれば製品の使用を開始できる。支払いが滞っても違約金が課されることなく、使用を再開することができ、製品の返品や保証金の返金もいつでも可能である。

【タンザニア、モーリシャス、ルワンダ】東アフリカで人工透析センターを運営するAfrica Healthcare Networkが、Africa 50や大原薬品工業などから計2,000万ドルを調達(11/23)

東アフリカで人工透析サービスを提供するAfrica Healthcare Network(AHN)が、エクイティーおよびデットで計2,000万ドルを調達した。エクイティーでの投資はモロッコの投資会社African50が主導し、大原薬品工業が投資した。デットは、アフリカへの投資に特化したチュニジアのプライベートエクイティーAfricInvestがTransform Health Fundを通じて提供した。

AHNは2015年に設立された。タンザニア、ルワンダ、モーリシャスに拠点を置き、人工透析センターを計45施設運営している。

【ケニア】ジェクテクトが自動車部品や軸受の市販を目的にケニアに支店を設立(11/28)

トヨタグループの機械メーカーであるジェイテクトが、東アフリカでの販売網強化を目的に、ケニアのナイロビに支店を設立した。販売拠点としてはアフリカで初めての拠点となる。自動車部品や軸受などの製品を、自動車や産業機械のアフターマーケット向けに市販する。

従来は、中東の代理店を通じて販売を行っていた。2021年4月には、市販ビジネスを強化するため、アフターマーケット事業本部を立ち上げていた。同事業本部の売上高は2022年度実績で751億円で、2030年度には1,400億円まで増やす方針である。

【南アフリカ、東アフリカ】関西ペイントがアフリカ事業の売却を取りやめ事業を継続すると発表(11/29)

関西ペイントは、アフリカ事業の売却と撤退を取りやめ、事業を継続すると発表した。
同社は2022年に、アフリカに保有する南アフリカとモーリシャスに拠点を置く2つの子会社を、世界塗料大手アクゾノーベルに売却することで合意していた。しかし、南アフリカにおいて競争法審査の承認が得られなかったことで、両社合意のもと株式譲渡契約を解除した。

【南アフリカ】テルモが南アフリカの支店を現地法人に格上げ、カテーテルなどの販売を強化(11/30)

テルモが南アフリカに現地法人を設立した。
テルモは南アフリカで、1970年代から血液バックなどを販売してきた。2007年に駐在員事務所を設立し、2018年にはテルモヨーロッパが南アフリカ支店を設立していた。この支店が販売代理店を通じて販売を行ってきたところ、支店を現地法人化して販売を強化する。主力製品であるカテーテルなど血管内治療製品については、現地法人からの直接販売に移行することで、提案力と価格競争力を高める。

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