アフリカにおける日本企業の動き(2023年9月)

アフリカにおける日本企業の動き(2023年9月)

(写真はケニアのモンバサ港、MEAACT PHOTO撮影)

毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。

【エジプト】国営企業の民営化を進めるエジプトで、最大手たばこメーカーEastern Companyが株式30%をUAEの投資会社Global Investment Holdingに6億2,500万ドルで売却。日本たばこ産業子会社JTI含め交渉継続中との報道(9/4)

エジプト最大のたばこメーカーEastern Companyの株式30%を、UAEの投資会社Global Investment Holdingが6億2,500万ドルで取得することで合意した。Eastern Companyの50.95%を保有する国営Holding Company for Chemical Industriesの持株比率は20.95%まで低下することとなり、エジプト政府が進めている民営化への後押しとなる。Global Investment Holdingは、製造に必要な原料を購入するために1億5,000万ドルを提供する。

エジプト政府は、Eastern Companyの株式売却に関して、2024年上半期までに完了すると述べていた。情報筋によると、Holding Company for Chemical Industriesは引き続き売却先の検討を行っているとされ、日本たばこ産業の子会社JTインターナショナル(JTI)や、フィリップモリスの子会社であるUAEのUnited Tobacco Company、アラブ湾岸諸国の投資家などが候補となっているという。JTIとUnited Tabacco Companyの提案額は約7億ドルであったという。

Eastern Companyの2022年第3四半期の売上高は146億エジプトポンド(680億円)と前期比14%の成長だった。
※1エジプトポンド=4.7円(モーニングスター、9/8)

【ケニア】ソフトバンクが出資するUAEの再生可能エネルギー開発会社Amea Powerが、ケニアのモンバサ港に地熱を用いたグリーン水素製造施設の建設を計画(9/7)

ソフトバンクが出資するUAEの再生可能エネルギー開発会社Amea Powerが、ケニアのモンバサ港にグリーン水素製造施設を建設する計画を明らかにした。同社会長がナイロビで開催されたアフリカ気候サミットで語った。ソフトバンクのAmea Powerへの出資額は7,500万ドルで、その比率は9%となる。

気候サミットにおいて、来るCOP28の議長国であるUAEはアフリカの気候変動対策に45億ドルを提供すると発表しており、その計画の一環となる。Amea Powerは5ギガワット分の再生可能エネルギー発電に資金提供する。これは、出資の場合は10億ドル、プロジェクトファイナンスの場合は40億ドルの資金額に該当する。

グリーン水素はケニアの地熱発電を用いて製造し、まずは1ギガワット規模の製造から開始する。輸出をすることも視野にいれて製造施設をモンバサ港に設置する。Amea Powerはジブチにも、太陽光か風力を用いたグリーン水素製造施設の建設を検討しているという。

【エチオピア】凸版印刷の香港子会社Toppan Gravityがエチオピアに進出し印刷事業を開始へ。政府系ファンドEthiopian Investment Holdingsとのジョイントベンチャー設立(9/8)

凸版印刷の子会社である香港に拠点を置くToppan Gravityが、エチオピア法人Toppan Gravity Ethiopiaを設立し印刷事業を開始する。エチオピアの政府系ファンドEthiopian Investment Holdingsとの間でジョイントベンチャーを設立するべく、株主間契約を締結した。

Toppan Gravity Ethiopiaは、新会社で印刷を営む見込みで、エチオピアをアフリカにおける製造拠点のハブと位置づける。印刷を国内で賄い、偽造文書を削減するための政府の取り組みに貢献することとなる。

【ナイジェリア】ナイジェリアの自動車修理スタートアップMecho Autotechが、日本のベンチャーキャピタルらからプレシリーズAラウンドで240万ドルを調達。部品の卸売事業へ進出(9/14)

ナイジェリアの自動車修理スタートアップMecho Autotechが、プレシリーズAラウンドで240万ドルを調達した。日本のベンチャーキャピタルであるグローバルブレインやUncovered FundならびにナイジェリアのVentures Platformが投資した。今回の調達資金はスペアパーツの卸売の強化に投じる。

Mecho Autotechは2021年に設立された。車両所有者と自動車の修理やメンテナンスを行う業者をオンラインで繋いでいる。ナイジェリアで登録されている1,200万台以上の車両の大半は中古車で、90%が定期的なメンテンナンスを必要としている。多くの車両所有者は、純正品を提供するメーカー整備工場ではなく、修理業者やロードサイドの修理工のサービスを受けているが、その質は低い。Mecho Autotechは修理工場を認定し、110以上設定しており、創業以来6,000台以上の車両が修理を受けてきた。

その過程で課題として挙がったのが質の高い部品の入手であり、2022年より調達資金の一部をスペアパーツのサプライチェーンの整備に充ててきた。ナイジェリアの自動車アフターマーケットの修理、部品産業の市場規模は80億ドルと推定されており、その80%は部品が占める。部品調達に関わる企業の95%以上が小規模なインフォーマル企業であり、サプライチェーンは分散しているため、効率的でない。

Mecho Autotechは今回の投資を受けて、タイヤ、サスペンション、ブレーキ、バッテリーといった需要の高い部品を輸入し、150以上の部品販売業者に販売する卸売事業を開始する。2023年第4四半期からは、キャッシュフローの課題を抱える部品販売業者向けの在庫ファイナンスをアプリで提供する。運転資金の融資も開始し、最大1,000万ナイラ(190万円)の融資が利用できるようにするという。

車両保有者向けのアプリを通じては、メンテナンスへの融資を提供し、メンテナンス情報を管理できるようにする。車両修理の手数料とメンテンナンス契約による副収入を主な収入源とする。融資のための財源として、ある一つの金融機関から6億5,000万ナイラ(1億2,000万円)の融資枠を確保していると語っている。
※1ナイラ=0.19円(モーニングスター、9/20)

【ケニア】武蔵精密工業が出資するケニアの電動バイク組み立て会社ARC Rideが、バイク向け融資のWatu Creditから資金調達、2024年末までに1,000台の販売を目指す(9/21)

ケニアの電動バイクメーカーARC Rideが、ケニアで二輪向けアセットファイナンスを提供するWatu Creditから金額非公開の資金調達を行った。ARC Rideは、2024年末までに少なくとも1,000台の電動バイクをケニアで販売することを目指している。部品は、既存投資家でありサプライヤーである武蔵精密工業から調達する。

ARC Rideは2020年に設立された。ケニアで電動の二輪および三輪の組み立て販売を行っている。すでに76のバッテリー交換所を設置しており、今後ナイロビ周辺に300以上を設置する予定である。
Watu Creditは、二輪車へのアセットファイナンスを提供するケニア企業で、近年は電動バイクの組み立て業者および販売会社への融資も提供している。インドTVSのバイクや建機の販売を行うケニア企業Car & General(C&G)が29%を出資している。

調査会社Mordor Intelligenceによれば、アフリカの電動モビリティーの市場規模は2021年時点で119億4,000万ドルに達しており、10.2%のCAGR(年平均成長率)で成長し、2027年までに213億9,000万ドルに達すると予想されている。特にケニアと南アフリカが成長を牽引しているという。

【ケニア】ケニアの物流スタートアップSendy、買い手が見つからず破産手続きを開始(9/26)

ケニアの物流スタートアップSendyが破産手続きを開始した。すでに破産管財人が選定されており、債務の整理に入る。債権者との交渉がうまくいかなかった場合は清算を余儀なくされる可能性がある。

Sendyは2014年、荷主とドライバーをマッチングするプラットフォームから事業を開始した。2018年にシリーズAで200万ドルを調達し、2022年にはシリーズBで2,000万ドルを調達している。コロナウイルス感染拡大による混乱した外部環境のなか、Sendyもコスト削減とビジネスモデルの調整を迫られ、フルフィラメント事業に重点を移した。2022年には従業員の20%を削減したほか、2023年に入ってからはナイジェリアでの事業を停止した。2022年後半に商船三井のCVCであるMOL Plusから投資を受けたものの、毎月の支出額は100万ドルに達し、高いバーンレートはキャッシュを消費し、調達した2,200万ドルの資金を使い果たした。

Sendyは、ケニアでB2Beコマースを展開するSabiやWasokoへ売却する選択肢を模索していたが、情報筋によると、これら買い手候補はSendyの負債を引き受けることに懸念を示し買収を断念したという。

【南アフリカ】NTTの南アフリカ子会社Dimension Dataが、NTTが進める海外事業の統合戦略に則り、ISP子会社Mwebを同じく南アISPのWebafricaに売却(9/26)

NTTの南アフリカ子会社Dimension Dataが、子会社のインターネットサービスプロバイダー(ISP)Mwebの持分すべてを、南アフリカでLTE・光ファイバー通信サービスを提供するWebafricanに売却することに合意した。NTTは、傘下グループ企業の法人向け海外事業の統合を進めており、今回の売却は、NTTが海外事業で目指す法人の顧客基盤をベースに総合サービスを提供するという戦略に沿ったものとなる。取引の詳細は明かされていない。
Mwebは1997年にサービスを開始した、古くから南アフリカでサービスを提供してきたISPで、光ファイバー回線業者や移動体通信事業者(MNO)と協業し、インターネット接続サービスを提供している。Dimension Dataは2017年に、南アフリカの投資会社Naspersから約1億3,000万ランド(9億8,000万円)で買収した。

Webafricaは1997年に設立された。加入者数は25万人で、500人の従業員を抱えている。同社も2019年に売りに出されたことがあり、その際の企業価値は約3億ランド(22億円)だった。
※1ランド=7.6円(モーニングスター、10/6)

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