アフリカにおける日本企業の動き(2023年7月)

アフリカにおける日本企業の動き(2023年7月)

(写真はみずほ銀行と伊藤忠商事が契約を締結したケニアKOKO Networksのコンロがナイロビの家庭で使われている様子、ABP撮影)

毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。

【ケニア】三井物産が出資するケニアのB2BeコマースKyosk Digital Servicesが、ケニアの農産物B2BプラットフォームKwikBasketを買収し、農業サプライチェーン事業に参入(7/4)

三井物産が出資するケニアのB2BeコマースKyosk Digital Services(Kyosk)が、ケニアの農産物B2B調達プラットフォームKwikBasketを、ケニアのデジタルサービスプロバイダーTechnoBrainから買収した。買収によりKyoskは、農産物のサプライチェーン事業に参入し、小売店への販売商品のラインナップに農産物を加える。

Kyoskは2019年に設立された。インフォーマルな小売店からプラットフォームを通じて日用消費財の発注を受け、配送する。2020年にケニア全土への拡大を開始し、2021年までにウガンダ、タンザニア、ナイジェリアに進出した。4カ国の42の地域に25万以上の小売店を抱え、毎日1万1,000件の配送を行っている。農業事業としては、農家の生産性を向上するために、農業インプットや地域の情報、市場情報を提供するulimaプラットフォームを展開してきた。

KwikBasketは2020年に設立された。小規模農家が生産した農産物をプラットフォームを通じてホテルや飲食店などの業務用顧客に届けている。これまでに5,000人以上の農家にサービスを提供してきた。

Kyoskは今後、ulimaサービスをKyoskFarmとリブランドし、ケニア以外にも拡大する。KwikBasketのサプライチェーン事業を引き継ぐKyoskFreshというサービスを開始する。KyoskFreshでは、農家から業務用キッチン、ローカルの飲食店、小売店へ農産物を届ける。

【ナイジェリア、ガーナ】ナイジェリアの配車アプリ向け自動車融資スタートアップMooveが、ガーナで組み立てられるスズキ車の扱いを大幅に増やすため、南アフリカの銀行Absa CIBから800万ドルの融資を獲得(7/6)

三菱UFJのCVCが出資し、豊田通商傘下CFAO Motorsやスズキ、三菱UFJ銀行が提携するナイジェリアの自動車融資スタートアップMoove Africaが、南アフリカの銀行Absa Corporate and Investment Banking(Absa CIB)から800万ドルの融資を獲得した。

同社は2022年6月にも、南アフリカでの事業拡大のためAbsa CIBからの初の融資として2,000万ドルを確保している。今回の調達資金はガーナでの車両の調達に投じ、ガーナで組み立てられるスズキ車の取り扱いを大幅に増やす。

Moove Africaは2020年にナイジェリアで設立された。Uberなどの配車サービスのドライバー向けに、独自のクレジットスコアリングシステムで算出したスコアに基づいて自動車ローンを提供している。ナイジェリアのラゴスとイバダン、ガーナのアクラ、ケニアのナイロビ、南アフリカのケープタウン、UAE、英国、インドで事業を展開している。EMEA(欧州、中東、アフリカ)地域におけるUberの最大の車両供給パートナーであり、これまでにMoove Africaが融資した車両で2,100万回以上の運行が行われた。ガーナでは270万回以上の運行を完了しており、顧客やその扶養家族3,000人以上に健康保険や生命保険を提供している。

【アフリカ全般】ソフトバンクグループが、アフリカで再生可能エネルギー発電開発を行うUAEのAMEA Powerに7,500万ドルを出資(7/11)

アフリカで事業を展開するUAEのエネルギー開発会社Amea Powerが、ソフトバンクグループからエクイティーで7,500万ドルを調達することで合意した。これまで創業株主であるAlNowais Investmentsからの私的調達で事業資金を賄ってきたAmea Powerにとって、外部からの資金調達は今回が初めてとなる。

Amea Powerは2016年に設立された。主にアフリカで再生可能エネルギー案件の開発を展開している。南アフリカでは2022年12月、1億2,000万ドルの投資額となる120メガワットの太陽光発電所建設プロジェクトを主要な出資者として受注し、国営電力会社Eskomと20年間の電力購買契約を締結した。

2022年11月にはエジプトで、日本やオランダの企業と協力して太陽光および風力で1,000メガワットを発電し、その電力を用いてグリーン水素、グリーンアンモニアを製造するための契約をエジプト政府と結んだ。トーゴでは50メガワットの太陽光発電所を建設しており、2023年末までに70メガワットまで増強することを予定している。

Amea Powerのポートフォリオにある稼働開始済みと建設中の施設を合わせた発電容量は約1.45ギガワットで、パイプライン上に計15カ国における6ギガワット近くの発電容量となるグリーンエネルギー案件を保有している。世界のエネルギー展開に対応するべく、風力、太陽光、エネルギー貯蔵、グリーン水素、海水淡水化への投資を増やしてきた。今後、地理的には中東、東南アジア、カザフスタン、ウズベキスタン、アゼルバイジャンなどでの事業拡大を目指しているという。

【ルワンダ】ソフトバンクグループがルワンダで、衛星通信を活用したエドテックサービスを導入へ(7/21)

ソフトバンクグループがルワンダ教育省と、ルワンダにおいて非地上系ネットワークを活用したエドテックサービスを提供することを目的とした協業契約を締結した。

ソフトバンクグループの株式会社サイバー大学が提供するeラーニングプラットフォームCloud Campusを導入する。衛生通信を用いることで、通信環境が整っていない学校にもこのプラットフォームの導入が可能となる。質の高いコンテンツを学校に提供することで、生徒の学習能力を向上させるとともに、教師のスキルアップにも役立てる。

ソフトバンクは、アフリカ38カ国と企業が加盟しアフリカのデジタル課題をテーマとした団体Smart Africaのメンバーであり、今回のルワンダでの取り組みにおいてもSmart Africaと協業する。

【ルワンダ】南ア通信会社MTN Groupと、三菱商事が出資するスマートフォンの割賦販売を行うBboxxが、ルワンダにおけるスマートフォンの販売促進で提携(7/17)

南アフリカの通信会社MTN Groupのルワンダ子会社MTN Rwandaが、ルワンダ国内のスマートフォン普及率を向上させるため、アフリカで家庭用太陽光発電キットやスマートフォンなどの割賦販売を行う英Bboxxと提携した。ルワンダは通信インフラのカバレッジは99%に達している一方、スマートフォン普及率はわずか23.5%に留まっている。

MTN Rwandaは、Bboxxからスマートフォンを購入するすべての顧客に毎月1ギガバイトの通信量を3カ月間に渡り無償で提供する。Bboxxが提供するIoT対応家電製品はMTNの通信サービスに接続される。BboxxはMTN Rwandaの広範なリーチを生かして顧客を拡大する。

ルワンダ政府はConnect Rwanda構想のもと、スマートフォンをすべての世帯に行き渡らせることを目指しており、MTN Rwandaと提携している。

【エジプト】酉島製作所が、500万ドルを投じエジプトに産業向け大型ポンプ製造・メンテナンス工場を設立へ(7/25)

産業用ポンプメーカーである酉島製作所が、エジプトのスエズ運河経済特区(Suez Canal Economic Zone、SCZONE)内のIndustria Sokhnaに、ウォーターポンプ製造工場を建設するため、工業団地開発を手掛けるエジプトの電気設備大手Elsewedy Electricの子会社Elsewedy Industrial Developmentと契約を締結した。

酉島製作所は500万ドルを投資する。敷地面積が3万平方メートルとなる工場で、下水処理や淡水化プラントなどに使われる産業・公共向けの大型ウォーターポンプの製造、メンテナンスを行う。エジプト国内のスペアパーツ産業の確立にも取り組む。上下水道、灌漑、電力分野の顧客獲得を見込む。

Elsewedy Industrial DevelopmentはエジプトのTenth of Ramadan Cityや6th of October CityおよびSadatなどに計2,700平方メートルの土地を所有し、工業団地の開発を行っている。

【エジプト】日本企業の参画を得て、エジプトで初となる血液バッグ製造工場の設立が検討される(7/26)

エジプト政府が、同国初となる血液バッグ製造工場の設立を検討している。血液バックの他、血栓の生成を防ぐ抗凝固薬や輸血時に使用する医療消耗品も製造する。日本企業からの技術移転を受けるとされるが、企業名は明かされていない。

エジプト政府の調達機関Unified Procurement Authority(UPA)やエジプトの製薬メーカーHoldipharma、その他2社の民間企業が参加する。製造した製品はエジプト国内で販売するだけでなく、近隣のアフリカおよびアラブ諸国に輸出する。エジプト国内の血液バッグへの需要は年間250万個に達している。

【ケニア、ルワンダ】豊田通商が出資するケニアの電気バススタートアップBasiGoがルワンダに進出、リースモデルを導入へ(7/26)

ケニアの電気バススタートアップBasiGoが、ルワンダの電気バスサービスに進出する。ルワンダの公共交通機関で運賃の自動回収サービスを運営するAC Mobilityと提携し、ルワンダ法人BasiGo Rwandaを設立した。

BasiGoとAC Mobilityは、ルワンダのバス運行会社Kigali Bus Service、Royal Express、Volcano Expressとともに、従量課金制モデルによる電気バス運行実証実験を行う。ルワンダ政府は、2030年までに公共バスの20%を電動化するというイニシアチブを発表している。

2021年設立のBasiGoは、ケニアの公共交通機関の電動化における先駆者で、これまでに19台の電気バスをナイロビの民間バス運行会社に販売してきた。100台以上の予約を確保しているという。BasiGoは電気バス専用の急速充電ステーションも整備している。電気バスの走行距離に応じて課金するリースモデルを提供することで、バス運行会社が購入しやすくしている。ルワンダにおいても同様のモデルを導入し、2024年末までに200台の電気バスを販売することを目標としている。

【ケニア】みずほ銀行と伊藤忠商事が、ケニアのKOKO Networksとカーボンクレジットに関する契約を締結(7/28)

ケニアで家庭向けに調理用燃料転換によるカーボンクレジット創出事業を手掛けるKOKO Networksとの間で、みずほ銀行が戦略的パートナーシップの構築を目的とするMoUを締結した。また、伊藤忠商事が同じくKOKO Networksとの間で、長期オフテイク契約および共同販売に関する契約を締結した。

伊藤忠商事は、KOKO Networksのカーボンクレジット創出事業に対し一部ファイナンスを行い、そのファイナンスにより創出されたカーボンクレジットを買い取る。みずほ銀行は、カーボンクレジットの取得機会と環境貢献型新規ビジネス創出の機会を同社の顧客に提供する。

KOKO Networksは、調理用燃料としてバイオエタノール燃料をケニアの8都市で約100万世帯に販売している。調理に木炭を使用するのに比べて森林破壊を防ぐことができるため、炭素排出量を削減するとしてカーボンクレジットの販売が可能となる。伊藤忠商事によると、KOKO Networksのカーボン創出事業は、ケニア政府から相当調整の認証取得に向けた支援が得られる見通しだという。

【ケニア】豊田通商がケニアでトヨタ車フォーチュナーの組立生産を開始(7/30)

豊田通商傘下のCFAO Motors Kenyaが、1億2,000万ケニアシリング(1億2,000万円)を投資して、ケニアにおいて同社初のSUV車生産を開始した。ケニアでの生産委託先であるAssociated Vehicle Assemblers(AVA)の工場内に、トヨタ自動車のSUVブランドであるフォーチュナーのセミノックダウンの生産ラインを立ち上げた。

CFAO Motors Kenyaは現在AVAで、ランドクルーザーLC79シリーズ、ハイラックス、ハイエース、日野のトラックとバスを組立生産している。

式典に訪れたルト大統領は、政府車両は現地生産車両から調達するべきという考えを示し、政府治安機関向けに現地組み立て車両5,400台の調達を検討しているとした。

大統領によると、ケニアには自動車部品製造工場が1カ所、自動車組み立て工場が5カ所、自動車組立生産を登録している企業が32社(そのうち14社が電気自動車)存在しており、あわせて4万6,000台の四輪自動車と30万台の二輪車の生産キャパシティがあるという。しかし、実際の生産台数はその20-30%に留まっている。政府は自動車政策National Automotive Policyを策定して現地生産を促す考えだが、その導入に時間がかかっている。
※1ケニアシリング=1.0円(モーニングスター、7/30)

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