アフリカにおける日本企業の動き(2022年11月)

アフリカにおける日本企業の動き(2022年11月)

(写真はケニアで走行テストを行うBasiGo、ABP撮影)

毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。

【エジプト】三菱重工業がエジプトの液化天然ガス(LNG)プランDamietta LNGと長期保守契約を締結(11/1)

三菱重工業が、エジプトの液化天然ガス(LNG)プラント会社Damietta LNGと長期保守契約を締結した。プラントに設置されている三菱パワーのガスタービン5基に対する修理やサービス、部品供給を行うほか、プラントのパフォーマンスや効率の向上に取り組む。

プラントには、三菱パワーのプラント遠隔監視ソリューション「TOMONI」を導入する。運転保守のエキスパートが24時間体制でプラントの稼働状況を遠隔で監視するだけでなく、高度なデータ分析と診断機能により、潜在的なトラブルの予兆検知や必要な是正措置の提案などが行われる。

Damietta LNGのプラントは、年間最大500万トンのLNG生産能力を持つ。エジプトには2つのLNG輸出プラントがあり、そのうち1つとなる。

【モロッコ】住友商事がグリーン水素・グリーンアンモニアサプライチェーンに関するMoUを締結したモロッコ工科大学が、英Chariotおよび英グリーン水素製造装置メーカーOort Energyと提携しグリーン水素のパイロットプロジェクト立ち上げ(11/4)

モロッコの大学Mohammed VI Polytechnic University(UM6P)が、グリーン水素やグリーンアンモニアを製造するパイロットプロジェクトを立ち上げるため、英エネルギー会社Chariot、および英国のグリーン水素製造装置メーカーOort Energyと提携した。

グリーン水素とは再生可能エネルギーを用いて製造された水素のことで、グリーン水素を原料に製造されるアンモニアをグリーンアンモニアという。グリーン水素は物流、重工業といった大量のエネルギーを消費する産業でのクリーンなエネルギー源として、またグリーンアンモニアはアンモニアが肥料の原料に使われることから食料安全保障に向けた解決策として、世界的に注目を集めている。

今回のパイロットプロジェクトでは、Oort Energyが特許を取得した固体高分子型(PEM)水電解装置を用いてグリーン水素の製造を行う。Chariotは経済的な実現可能性の評価にあたって専門知識を提供する。UM6Pは研究者や提携先の人的ネットワークを動員することで、モロッコでのグリーン水素やグリーンアンモニアの製造に関する教育や能力開発を行う。

モロッコのリン酸塩および肥料の大手メーカーOCP Group(OCP)もグリーンアンモニアの製造には関心を示しており、今回のパイロットプロジェクトの一部は同社の施設で行う予定となっている。

モロッコでは2022年3月に、OCP、UM6P、英エネルギー会社Shellが、再生可能エネルギーを用いることで製造プロセスでの二酸化炭素の排出を抑える、いわゆる低炭素アンモニアを製造するためのパイロットプロジェクトを開始している。

【ウガンダ、ジンバブエ】ウガンダ、ジンバブエ、九州工業大学が協力する小型衛星プロジェクトが打ち上げへ(11/5)

ウガンダとジンバブエが、初の人口衛星を米国のNASAの施設から国際宇宙ステーションに向けて打ち上げる。九州工業大学が2015年から取り組んできた、長期的で持続的な宇宙事業におけるパートナーシップを育成するBirds Satelliteプロジェクトの一環で、今回の打ち上げはBIRDS-5として、ウガンダが開発したPEARLAFRICASAT-1、ジンバブエが開発したZIMSAT-1、そして日本のTAKAという3カ国の小型衛星を協調させて機能させる衛星コンステレーションを実行する。

BIRDS-5では、市販のカメラを用いてマルチスペクトル画像を取得する。それにより森林や農地を裸地と区別することが可能になる。衛星を用いることで、他国からの情報に頼ってきた天気予報データや干ばつの情報など、データ収集が容易になる。イナゴなど害虫の発生状況を把握したり、ウガンダが開発を予定している石油パイプラインの監視も可能となる。

【南アフリカ】ブリヂストンの南アフリカ子会社が、欧州から輸入していたFirestoneブランドのトラックおよびバス向けのタイヤ2種類につき南アフリカ国内での製造を開始(11/8)

ブリヂストンの南アフリカ子会社Bridgestone Southern Africaが、これまで欧州から輸入していたFirestoneブランドのトラックおよびバス向けのタイヤ2種類につき、南アフリカ国内での製造を開始した。

南アフリカの道路での走行条件に合わせて設計を見直した。より丈夫な素材を導入したことで悪路でも長持ちするようにし、トレッドパターンの工夫により駆動力とセルフフルクリーニング性を高め、走行パフォーマンスを安定させた。

ブリヂストンは、環境負荷の低減の観点から、寿命が長く再生が可能で、かつ軽量で燃費に良いタイヤの開発を進めている。

【南アフリカ】南アフリカ競争委員会が、AkzoNobelによる関西ペイントのアフリカ事業の買収を承認しないと発表(11/9)

南アフリカ競争委員会が、オランダの塗料メーカーAkzoNobelによる関西ペイントのアフリカ子会社Kansai Plascon Africa(KPA)とKansai Plascon East Africa(KPEA)の2社の買収を承認しないと発表した。買収により、建築用塗料の市場シェアにおいて1位と2位の企業が合併することは、市場支配的な企業を誕生させ公正な競争が妨げられるとともに、消費者の選択の幅が狭まるとした。

南アフリカで、AkzoNobelはDuluxブランドの塗料を、KPAはPlasconブランドの塗料を製造販売している。業界大手同士が合併しそのバイイングパワーを用いることで、競合他社が塗料原料である顔料の入手を妨げられる可能性も指摘した。さらに競争委員会は、両社が買収によって引き起こされる反競争的な影響に対して対策を打ち出していないことも指摘している。

AkzoNobelは南アフリカに3つの塗料工場を所有し、南アフリカほか複数のアフリカ諸国で販売している。関西ペイントはKPAとKPEAを通じて、南アフリカに4つ、マラウイとザンビアに1つずつ、ジンバブエに2つの塗料工場を持つ。KPAは顔料の製造も行っている。

【ケニア】商船三井のCVCであるMOL PLUSがケニアの物流スタートアップSendyに出資(11/9)

商船三井のコーポレートベンチャーキャピタルであるMOL PLUSが、初めてのアフリカ投資として、ケニアの物流スタートアップSendyに出資した。金額は公表されていない。

Sendyは2015年に設立され、ケニアを中心に、消費財メーカーやeコマースなどの荷主とドライバーをつなぐプラットフォームを運営している。昨今はフルフィラメント業務に進出しており、調達した資金はケニアやウガンダ、ナイジェリア、コートジボワールでのフルフィラメント事業の拡大のために費やす。

両社は今後、商船三井グループの商船三井ロジスティクスとSendyによる物流倉庫の共同運営などの検討を行う。

【ケニア】ケニアの電気バス製造スタートアップBasiGoが、豊田通商のCVCであるMobility54などから660万ドルを調達し電気バスの組み立てを開始(11/15)

ケニアの電気バス製造スタートアップBasiGoが、アフリカに特化したベンチャーキャピタルNovastar Ventures、豊田通商のCVCであるMobility54、米の輸送・物流に特化したベンチャーキャピタルTrucks VCが共同で率いる投資ラウンドにてエクイティで660万ドルを調達した。2021年の創業以来、BasiGoの累計調達額は1,090万ドルに達した。

BasiGoは調達資金を用いて、2022年12月からケニアでの電気バスの組み立てを開始する。中国の電気自動車メーカーBYD Automotiveの部品を用いて2023年末までに100台の電気バスを組み立てる計画で、そのうち15台を2023年1月に納入する。2025年末までには1,000台を超える電気バスの供給を目指している。現在は首都ナイロビで電気バスを走らせる6カ月間のパイロット事業を完了した段階にある。ナイロビでは充電ステーションの整備も進めている。

BYD Automotiveから提供を受けたバッテリーは、8年または60万キロの保証がついている。バスの定員は25人乗りと36人乗りの2タイプ、航続距離は約250kmとなっている。

BasiGoは走行距離に応じて料金を払うPay As You Driveというビジネスモデルを採用しているため、顧客である民間バス会社はディーゼル車と同程度の初期費用で電気バスを運行できる。バッテリーのリース料や充電ステーションの利用料、一般的な車両メンテナンスを受けるための費用も含まれており、1km走行するごとに0.17ドルを支払う。

【エジプト】住友商事とUAEのAMEA Powerが出資する特別目的会社Amunet Wind Powerが、エジプトで大規模風力発電所を建設へ(11/15)

住友商事とアラブ首長国連邦(UAE)の再生可能エネルギディベロッパーAMEA Powerが出資する特別目的会社Amunet Wind Powerが、500メガワットの大規模風力発電所を建設する。

Amunet Wind Powerへの出資比率は、住友商事が40%、AMEA Powerが60%。スエズ湾に面する紅海県に建設する。

エジプト政府は、遅れをとっている再生可能エネルギー開発を後押しするために、合計1ギガワットの発電容量となる2件の風力および太陽光プロジェクトをIFCの支援を得て推進しようとしている。1件がこのAmunet Wind Powerによる風力発電所で、もうひとつはAMEA Powerによる太陽光発電所となる。同国は2030年までに発電量の35%を、2035年までに42%を再生可能エネルギーで賄うという目標を掲げているが、現在のところ20%にも満たされていない。

【ナイジェリア】日揮がナイジェリア初となる浮体式LNGプラントの基本設計役務を受注(11/18)

日揮ホールディングスの海外EPC子会社日揮グローバルが、ナイジェリア初となる浮体式LNGプラントの基本設計役務(FEED)を受注した。ナイジェリアの石油ガス会社UTM Offshore(UTM)から仏Technip Energiesとのコンソーシアムが受注した。同プラントでは洋上で1日あたり1億7,600立法フィートの天然ガスを処理し、年間120万トンのLNGを生産する。建設費は50億ドルとされる。

クリーンなエネルギーへの需要が世界的に高まるなか、アフリカ最大の天然ガス埋蔵量を誇るナイジェリアは、石油に依存した経済から脱却するべく天然ガスの収益化を目指している。これまでナイジェリアでは、原油・天然ガスの生産時に発生する余剰ガスは焼却処分(ガスフレアリング)されてきたが、これもLNGへと処理することで収益に繋げる。

日揮と米Kellogg Brown and Root(KBR)の英国子会社は2021年5月、基本設計の前段階であるプラントの概念設計役務(Pre-FEED)をUTMから受注し、4カ月後に完了させている。今回の基本設計役務はこれに続く契約で、設計・調達・建設(EPC)契約に進むための技術的な課題の把握やコストの見積りを10カ月かけて行う。

【エジプト】豊田通商がエジプト初となるブルーアンモニアの製造の事業性検討に関するMoUを締結。エジプト国営ガス公社は他にも多国籍企業と計7つのMoUを締結(11/21)

豊田通商がエジプト初となるブルーアンモニアの製造に関する実現可能性調査に向け、エジプト石油化学公社(Egyptian Petrochemicals Holding Company 、ECHEM)およびエジプトガス会社(Egyptian Natural Gas Holding Company、EGAS)とMoUを締結した。

燃焼時に温室効果ガスが排出されないアンモニアは、石炭などの代わりとなる発電の燃料として期待されているが、アンモニアの製造段階における二酸化炭素を主とする温室効果ガスの発生が課題となってきた。これに対し近年では、化石燃料を原料に製造するが、製造過程で発生した二酸化炭素を回収し油田やガス田、帯水層に貯留することで実質的な二酸化炭素の排出量をゼロにするブルーアンモニアに注目が集まっている。豊田通商は石油や天然ガスの産出国であるエジプトにて、既存のガス田に二酸化炭素を貯留することでブルーアンモニアを生産するための実現可能性調査を行う。

エジプトガス公社は、同じタイミングで、豊田通商とのMoUを含む合計7つのMoUを締結している。米国の建設会社Bechtelらとフィージビリティースタディーに関してMoUを締結し、Shell Egyptとは温室効果ガス排出を管理し削減するフレームワークの策定に関してMoUを締結した。SeaSplit Technologiesと米GEとは、1.5ギガワットとなるスエズ湾の洋上風力発電開発のための技術的・経済的実現可能性調査に関してMoUを締結した。エジプト国営石油会社(Egyptian General Petroleum Corporation、EGPC)と仏TotalEnergiesとの3社において、石油セクターにおける脱炭素ソリューションの技術的・経済的実現可能性への評価に関してMoUを締結した。

米マイクロソフトのエジプト法人Microsoft Egyptとは、持続可能なロードマップの共同開発に向けてMoUを締結した。英Hiirocとは、ガスフレアの排出を削減し熱プラズマ電解技術を使ったグリーン水素プロジェクトを立ち上げるためのMoUを締結した。

【南アフリカ】オムロンが自律走行式除菌ロボットを南アフリカで発売(11/30)

オムロンが、ドイツのRuhr大学と共同開発した自律走行式除菌ロボットHero21の販売を南アフリカで開始した。製造はドイツの医療機器メーカーICA Healthが行う。販売促進のため南アフリカの医療機器販売会社Mamello Clinical Solutionsと提携した。

Hero21は、紫外線光を照射することで遠隔で無人空間の表面除菌ができるロボットで、充電式のバッテリーを動力源とし、タブレット端末を用いてWiFiを通じて操作する。紫外線光は人体に有害であるため、センサーで空間内に人がいないことを確認してから動作し、開始前には音声アナウンスを行う。車載センサーにより移動中や動作中の衝突を回避する。

医療施設や空港、展示場、オフィス、航空機内、ホテルの客室などの人の出入りの多い場所での使用を想定している。

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