アフリカにおける日本企業の動き(2023年5月)

アフリカにおける日本企業の動き(2023年5月)

(写真はエチオピアのサファリコムショップ、ABP撮影)

毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。

【ケニア】豊田通商傘下のCFAO Group傘下の自動車販売代理店が事業統合。フォルクスワーゲン、メルセデスが加わるとともに、トヨタ車とスズキ、日野トラックの代理店を分離(5/9)

ともに豊田通商傘下のCFAO Groupを親会社とするケニアのCFAO Motors Kenyaと自動車販売会社DT Dobieが、事業運営効率の向上と市場シェアの拡大を目的に、人員削減を伴う事業統合を行った。

豊田通商は2012年に仏商社CFAO Groupを買収し、それに伴いDT Dobieを含む多くのアフリカ企業を引き継いだ。事業統合後は、CFAO Motors Kenya(旧トヨタケニア)の販売店舗ではトヨタ車やヤマハの二輪を販売し、DT Dobieの販売店舗では、従来扱っていたフォルクスワーゲンやメルセデスに加えて、日野自動車のトラックとスズキの乗用車の販売を譲り受ける。

合併後の名称はCFAO Motorsで、ケニアの新車市場で30%近くのシェアを持つことになり、これはいすゞ自動車のケニア子会社Isuzu East Africaの44.7%に次ぐ国内2番目のシェアとなる。合併前のCFAO Motorsは、2022年にケニアで3,084台の新車を販売して23.1%のシェアを占め、DT Dobieは772台を販売して5.8%のシェアを占めていた。

ケニアでは最近、自動車販売会社CMC Motorsが農機に注力するため、スズキ、フォード、マツダのディーラー権を競合に譲り、乗用車事業から撤退することを発表していた。

【エチオピア】サファリコムや住友商事が出資するSafaricom Ethiopiaが、エチオピアでモバイルマネーを提供するためのライセンスを外資として初めて取得(5/11)

ケニアの通信大手サファリコムや住友商事が出資するSafaricom Ethiopiaが、エチオピアでモバイルマネーライセンスを取得した。新子会社Safaricom M-Pesa Mobile Financial Serviceがエチオピア中央銀行に手数料として1億5,000万ドルを支払い、外資企業として初めて取得した。来月から始まる2023年第2四半期を目指してモバイルマネーM-Pesaの提供を開始する。

Safaricom Ethiopia は、2022年10月にエチオピアで通信事業を開始して以来、顧客数を200~300万人まで増やした。通話、メッセージ、データ通信サービスを22都市・地域で提供している。

Safaricom Ethiopiaの筆頭株主であるケニアのサファリコムは、エチオピアでの投資が響き、2023年3月期の税引前利益は849億9,000万ケニアシリング(8億4,000万円)と、前年比22%減少している。

※1ケニアシリング=0.99円(モーニングスター、5/13)

【ケニア】家庭用太陽光発電キットやスマートフォンなどの割賦販売を行うM-KOPAが2億5,500万ドル以上を調達、住友商事がリードインベスターとして5,500万ドルを出資。南アフリカへの事業拡大を計画(5/15)

アフリカ4カ国で家庭用太陽光発電キットなどの割賦販売を行うM-KOPAが、エクイティーとデットで2億5,500万ドル以上を調達した。エクイティーによる調達が5,500万ドルで、住友商事がリードインベスターとしてそのうち3,650万ドルを出資し、Blue Haven Initiative、英投資会社Lightrock、Broadscale Group、Latitudeらが加わった。デットによる調達は2億ドル以上で、そのうち半分以上はアフリカ最大の銀行である南アフリカのStandard Bankが提供した。

M-KOPAは2022年3月にエクイティーで7,500万ドルを調達しており、今回の調達を経て累計で2億4,500万ドルの出資を得た。デットはこれまで累計1億ドル強を調達してきたが今回で倍になった。住友商事はアフリカにおいてインフラ投資で知られており、アフリカにおいてフィンテックへの大きな投資を行うのははじめてとなる。

M-KOPAは2011年に設立された。太陽光発電キットに始まり、現在ではスマートフォンも加えた商品の割賦販売(PAYG)を行うほか、融資や健康保険などの金融サービスを提供している。ケニア、ウガンダ、ナイジェリア、ガーナの4カ国で事業を展開し、合わせて300万人以上の顧客を抱えているという。これまでに100万台以上の太陽光発電キットを販売し、10億ドル以上の割賦を提供し、200万トンの温室効果ガスの削減を行ってきた。

デフォルト率は10%を少し超える程度に留まっており、少額な頭金と分割払いにより顧客のクレジットヒストリーを構築し、その関係性を基盤に金融サービスを提供する。スマートフォンの販売を2020年に開始した時点で女性の顧客比率は約30%だったが、現在では40%を超えており、1万人以上いる販売員のうち52%が女性だという。

今回の調達資金を用いて、顧客数を倍増させるほか、電動バイクなどへと対象商品を拡大させる。南アフリカへの進出を計画しており、数週間以内に試験運用を開始する。

【マラウイ】マラウイで医薬品配送を行う伊藤忠商事が出資するドイツのドローンスタートアップWingcopterが、欧州投資銀行から4,000万ユーロを調達(5/15)

マラウイで事業を展開しているドイツのドローンスタートアップWingcopterが、欧州投資銀行(EIB)から準株式で4,000万ユーロを調達した。調達資金はドローンの製造やドローンを用いた配送サービスの拡大に投じる。ドローンの電源をバッテリーから水素電池に置き換える計画にも用いる。

同社が開発したドローンWingcopter 198は、垂直の離着陸が可能で、最大5キログラムの荷物を100キロメートル運ぶことができ、1回の飛行で最大3つの荷物を別々の場所に運ぶことも可能である。マラウイではユニセフと協業して遠隔地に医薬品を届けている。

Wingcopterの既存投資家には、伊藤忠商事、独小売REWE Group、米ベンチャーキャピタルXplorer Capital、配車アプリUberの共同創業者が設立したベンチャーキャピタルExpaなどがいる。

【ウガンダ】三井住友フィナンシャルグループが、ウガンダの石油パイプラインプロジェクトに関与せずと発表(5/16)

三井住友フィナンシャルグループは、ウガンダの油田からタンザニア海岸まで900マイルを運ぶ石油パイプライン事業には現在関与していないと発表した。同行はこのプロジェクトの財務アドバイザーであり融資を検討しているとされていた。同プロジェクトの予算は50億ドルとされる。

脱炭素の潮流のなか、アクティビストは石油プロジェクトに関わる個々の企業を標的に撤退を迫っていた。融資を予定していた英Standard Charteredが、2023年4月にこのプロジェクトの資金調達には関与していないと述べて、撤退したことを表明していた。

【南アフリカ】南アフリカ政府が電力危機への対応として、商船三井と提携するトルコの発電船会社Karpowershipの20年間の発電契約を実行へ(5/18)

南アフリカ政府は電力危機への対応として、トルコの発電船製造・運営会社Karpowershipに南アフリカの3港への20年間のアクセス権を与えたと発表した。Karpowershipの浮体式発電船をRichards Bay、Ngqura港、Saldanha Bayの3港に設置し、Eskomの電力網を通じて送電する。

Karpowershipは、2021年に政府の2,000メガワットの緊急電力入札において最も多くを落札したものの、環境活動家や漁業関係者の反対に直面していた。野党は、契約期間が20年間であることが、緊急電力供給としては長期であり、ガーナやブラジルといった国々でのKarpowershipの契約と比べても長すぎると非難していた。

【南アフリカ】トヨタ自動車の南ア子会社Toyota South Africa Motorsが、販売車両において最も安価となる新型ヴィッツを発売。自動車サブスクリプションのKinto Oneも導入(5/24)

トヨタ自動車の南アフリカ子会社Toyota South Africa Motors(TSAM)が小型車のヴィッツを発売した。18万9,900ランド(130万円)から購入でき、TSAMが南アフリカで販売する自動車のなかでは最安値となる。ヴィッツの発売と併せて、南アフリカでトヨタ自動車の新車サブスクリプションサービスKinto Oneも開始する。

TSAMによれば、コロナ禍以降、南アフリカの消費者は以前よりも資金繰りが苦しくなっており、ほとんどの人にとっての新車購入時の最優先事項は車両価格と維持費の安さであるという。南アフリカの乗用車市場のうち小型車が占める割合は、2018年の53%から64%まで上昇したという。

新しくサービスを開始するKinto Oneは、トヨタ自動車が世界で展開している新車のサブスクリプションサービスで、新車車両と定期メンテンナンス、保証、WiFiやテレマティクス、車両追跡、自動車保険などのすべての費用を、頭金なしの月あたりの定額支払いで利用できる。
※1ランド=7.1円(モーニングスター、5/29)

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