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アフリカビジネスの今

成長した国と不況だった国に分かれた2016年、新たな投資トレンドが生まれる2017年

アフリカビジネスの2017年予測

更新日:2017年02月07日

カテゴリー:論考・コラム

アフリカビジネスパートナーズ 梅本優香里


成長した国、不況だった国

アフリカの基本的な経済状況については、1年前に書いた「都市化進むアフリカ、期待は内需の成長 アフリカビジネスの2016年予測」をご参照いただくとして、今回は2016年の振り返りと、そこから見える2017年について書いてみたい。
 
下図は、アフリカ各国を2016年の経済成長率予測値によって色分けしたものだ。2016年のアフリカは、好調な国とそうでない国が分かれる結果となった。
 

アフリカ各国の2016年経済成長率

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(出所:IMF、予測値 作成:アフリカビジネスパートナーズ)

赤系の色は、成長率がアフリカ全体の人口増加率3%よりも低い、実質的には成長しなかった国だ。ナイジェリア、南アフリカ、エジプトといった国は、豊かなリソースと産業集積を持つ国であるにも関わらず厳しい結果となった。一方で、コートジボワール、タンザニア、セネガル、エチオピア、ルワンダ、ケニアといった国は、6~8%程度と順調に成長した。

コートジボワールは、80年代にアフリカ一の都と言われた仏語圏アフリカの中心的な国だ。商業都市アビジャンはいまも風情があり、筆者は行くたび心が躍る。内戦などによる失われた20年を経て政治が落ち着き、2012年にはコカ・コーラとP&Gが戻ってきた。都市人口(1,100万人)と中間層比率(37%)がケニアと同程度とあって、大型ショッピングモールが誕生し、モバイルマネーの普及が期待されている。豊田通商の子会社CFAOは2016年、ハイネケンと合弁でビール工場を開設した。

タンザニアは2015年に就任した新大統領が、これまでの社会主義的で情実による経済からの脱却を目指している。2016年は政府支出を削減し、セメントや肥料、食品加工といった基礎的な需要を満たす製造業を自国に呼び込む施策を、次々と打った。タンザニア沖合で発見された天然ガスを使った、日産3,800万トンとアフリカで最も大きい生産規模となる肥料工場の建設計画はその一例だ。
 
エチオピアは10月に発令された非常事態宣言が、現政権の掌握力をより強化したように見える。この原稿もエチオピアで書いているが、現在、治安は安定している。自国の資源を活かした軽工業を発展させようと、縫製産業や農業加工の工業団地を次々と開設している。日本たばこはエチオピアのたばこ専売公社の株式を540億円で取得、国内向けにたばこの製造から販売までを行っていく。ストライプインターナショナルは、日本企業で初めて、エチオピアでの衣料の生産を開始した。2017年にはカルバン・クラインなど複数のブランドを持つ米PVHの縫製工場がエチオピアに開業する。
 
ケニアは引き続き、アフリカにおける都市化と工業化の中心地のひとつだ。首都ナイロビだけでなく地方にも都市が生まれている。拡大する需要に向けた地場製造業の供給力は高まっており、農業においては商業化が進められている。2016年には豊田通商が、肥料工場の操業を開始した
 
上に挙げた「成長した国」はどこも、政治と治安が安定している。さらに、自国内で自国の需要を満たすための事業づくり・仕組みづくりに取り組んでいる。
 

「あるもの」と「ないもの」

アフリカを初めて訪れるまで、筆者は、「アフリカにはいろんなものが『ない』」のだと思っていた。水がない、電気がない、農業に適さない土地、過酷な自然、教育を受けていない人々、先進国で普及しているような商品への需要がない......。しかし実際に訪れてみると、「アフリカには(たいていのものは)実はある」ことに気づき、驚くことになった。豊かな土地があり、暮らしやすい気候の地域も多く、優秀な人がいて、需要は存在する。 

足りないのは、それなりに存在している自国のリソースを供給してきて効率的に需要を満たす、富を安定的に生み出し続けるための「仕組み」なのだった。経済成長とは生産性の向上を意味するのだから当たり前のことではあるが、それを目の当たりにした。原油を自国で精製して供給する、土壌を管理し農産物の収量を上げ、それを加工して都市部で販売する、教育を受けた人材がそれに応じた仕事に就いて付加価値を生み出すといったことだ。そして、これらの仕組みが機能するための基盤は、政治と治安の安定である。 

アフリカの2016年と将来の予測について考えると、このことを思い出す。昨年、アフリカでは、世界経済の影響を受けてどの国も思ったより経済はうまく回らず、総じて現地通貨はドルに対して下落した。それでも仕組みが機能した国は成長し、そうでない国は不況に陥った。
 

不況に陥った3カ国

不況に陥った代表的な国は、経済規模でアフリカのトップグループに位置する、ナイジェリア、南アフリカ、エジプトの3カ国だ。
 
ナイジェリアは、原油輸出収入の激減により、国家歳入が落ち込み、外貨が逼迫した。ナイジェリアには原油資源があるが、自国で精製ができず、原油をそのまま輸出し、精製されたエネルギーを輸入してきた。豊かな原油から得られる外貨を背景に、国内の主要製造業もほとんどの原材料は輸入で賄ういびつな産業構造であったので、外貨不足は供給に大きなショックを与えた。経済成長率は、2014年には6.3%だったものの、2016年予測値ではマイナス1.7%にまで落ち込んでいる。

南アフリカは、22年前のアパルトヘイト撤廃以降ずっと政権をとってきた与党ANCが末期的な状況だ。ネルソン・マンデラ氏が率い、南アフリカの8割を占める黒人の人たちに熱狂的に迎えられた政党は、産業政策の失敗、ばらまき政治、癒着や数々の疑惑によって、資源や農業に恵まれた南アフリカを成長しない国にした。2016年の経済成長率は、0.1%と予想されている。
 
エジプトの混乱と不況はアラブの春から始まった。製造業が根付き内需産業の蓄積がある国だが、政治体制の不安定さが治安を悪化させ、テロの頻発が観光業を直撃し、外貨が手に入らなくなった。2016年はサウジアラビアからの原油供給停止(さらにドルが必要となる)、突然の変動相場制への移行が重なり、さらに混乱している。2016年の予測経済成長率は3.8%だ。
 
これら3カ国は、不況の要因となった事象がすぐには変化しないため、2017年も厳しい経済状況が続くだろう。
 

昨年は総じて平和だった

ところで、2016年のアフリカは、日本の自衛隊も派遣されている南スーダンや、ブルンジなどに着目するととてもそう言える状況ではないものの、総じて平和だった。想定されていたよりは争いが起こらず、人は死ななかった。

2016年は大統領選の当たり年で、アフリカ15カ国で選挙が行われた。選挙結果を巡って内戦に発展することは珍しくない。しかし、現職が敗北したガーナでは平和裏に政権が交代し、大統領の三選の可否を巡り荒れると見られていたコンゴ民主共和国も(年を越えた今もまだ決着はついていないものの)、思っていたよりも被害と死者の数は少なかった。

世界中でテロが吹き荒れる中、相対的にアフリカは静かだった。2016年が始まる頃はアフリカのテロリスト組織とISIL(「イスラム国」)との接近が多いに心配されたが、現時点では両者の連携は限定的だ。不況の真っ只中にあるナイジェリアでさえ、政府はいまのところ国家運営をしっかり掌握している。
 
過去のアフリカを襲った長引く不況は、外的要因は二次的なものであり、一次的には国家が脆弱だったことに起因する。政治体制は不安定で、外部頼りで環境への対応ができなかった。政治と治安の安定性が増し、インフラや内需といった豊かさを生み出す仕組みができつつある中での今回の不況が、80年代から90年代にアフリカが経験したような長期の停滞をもたらすことはないだろう。
 
さらに、今年さんざんだった南アフリカやナイジェリアも、将来に向けて期待できる面もある。不況を機に、「仕組み」が機能するための改革が行われつつあるのだ。
 
南アフリカでは8月に行われた地方選において、長年圧倒的多数を得てきたANCの票数が複数の大都市圏で過半数を割り込んだ。久々に、何かが変わるかもしれない希望が南アフリカに生まれつつある。ナイジェリアでは、国内の農業や原材料の再評価が行われており、外貨に頼らない供給システムの構築が取り組まれている。トマト缶や砂糖といった基礎的な加工食品の原料自給や、国内で原油を精製するための精製所の建設も取り組まれている。ナイジェリアについては、不況とはいっても2億人近い人口を抱える潜在力が高い市場であるため、海外投資家からも強い期待がある。輸入代替による工業化がどこまで進められるか、踏ん張りどころだ。
 

今年注目される投資領域

このように、工業化と内需に注力するトレンドと外貨不足と通貨下落といった現実的な事情、そしてこれまでの資源への投資が行き場を失っていることから、2017年に投資が向かうと思われるのが、農業や食品加工、消費財の製造業、不動産、そしてテック系含むスタートアップだ。
 
スタートアップへの投資については、潮目が変わりそうだ。2016年はフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏が初めてアフリカ(ナイジェリアとケニア)を訪れた。アフリカに上陸したウーバーは、すでに14都市でサービスを開始している。Eコマースを運営するAfrican Internet Groupの評価額は10億ドルを超え、アフリカ初のユニコーン企業となった。

これまでアフリカのスタートアップは、実際には、政府や国際機関からの援助資金のようなリターンを期待されない資金をただ得ているだけで、事業そのものでは収益を生んでいないような、はりぼて企業が多かった。ここ最近は、資本の論理に立ち返り、地に足がついた商売ができるスタートアップが増えてきている。

貧困層向けのソーシャルビジネスをシリコンバレー的な手法で拡大していく企業も目立っている。ITなどのバックグラウンドを持つ創業者が、リーンにビジネスをスタートさせ、海外の投資家や財団などから多額の資金を集め、その資金をもって営業や販路の開拓をスピーディーに進め、事業を急拡大していくのだ。
内実をみると経営は雑な場合が多いが、しっかりとした戦略を持ち、シンプルな商品やサービスを、現地の人を大量に雇用した営業力によって拡大させている。現地政府とのネゴシエーションも上手だ。

たとえば、オフグリッドの電力を農村で普及させているM-Kopa Solar、スラムでのトイレの普及と回収物から製造した肥料を販売するSanargy、人々にインターネット接続の恩恵をもたらすためのモデム等をエンジニアリングするBRCK、Facebookのマーク・ザッカーバーグ夫妻の財団から資金を得た、アフリカにテック人材を育てるAndela、貧困層に教育を提供するBridge International Academiesなどが挙げられる。

ウーバーの競合相手となる現地スタートアップも生まれている。2017年は、世界のテック企業のサービスインや、現地のスタートアップへの投資が進むだろう。
 

日本企業の2016年

最後に、日本企業の2016年を振り返りたい。2016年は日本企業においても、これまで述べてきた農業や製造業、消費財といった領域で動きが見られた。
 

2016年の日本企業の動き(アフリカビジネスパートナーズ調べ)
 
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これまで資源とインフラが主要投資先であった商社も、農業、製造業、物流、消費財、消費サービス、テック事業に目を向けており、2017年はこれら領域への投資が期待される。
 
改めてみると、2016年の日本企業は、買収や合弁という手段をとった企業が多かった。これは特に消費財ビジネスにおいて妥当な方法だ。厳しい競争の中、現地の地方に至るまでの流通を押さえて、ブランドを抱き込みニーズに合った商品開発をするには、現地企業の持つ力を活用するのがよい。2017年は継続する不況の中で、資金調達のために株式を売り出すアフリカ企業もでてくるだろうことから、チャンスは広がる。

一方で、2016年には、アフリカから撤退した企業もあった。丸亀製麺で知られるトリドールは、「Teriyaki Japan」の名称にてケニアで運営していた飲食事業から撤退した。ケニアは事業を開始することは容易でも、競争は厳しい。人材や資金を管理して利益につなげていくのには、日本とは違うノウハウが必要だ。

味の素と東洋水産は、ナイジェリアでインスタントヌードルの製造と販売を目指しいていた合弁会社を解消することを決めた。この合弁は、両社がインドとナイジェリアという2つの人口大国で、それぞれが持つブランド・流通と製品力を共有しようとして2014年に決めたものだ。ナイジェリアの不況がこの決定を後押ししたことは想像できるが、すでに過当な競争となっているナイジェリアのインスタントヌードル市場では、どのように売っていくのか明確な戦略がなければ生き残るのは難しい。
 
アフリカは「最後のフロンティア」「ブルーオーシャン」と言われることがあるが、実態はそれほど甘くない。商品を売るための方法や、戦略の立て方、経営手法にセオリーがあり、その中で競争が行われている。以前書いたように、アフリカに適した方法で事業を行っていくことは、ただ新しい土地での売上を追加することだけでなく、それ自体が日本企業に新陳代謝を生み、これからも長く価値を生み続けていくことに貢献する。2017年も成功例や失敗例を積み重ねながら、日本企業のアフリカビジネスが前に進んでいければと思う。


(この記事は、2017年1月7日にNewsPicksに寄稿した記事の再掲です)
※引用される場合には、「アフリカビジネスパートナーズ」との出所の表記と引用におけるルールの遵守をお願いいたします。

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