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アフリカビジネスの今

アフリカ大陸のファッショニスタ・ベルトを行く

西アフリカの着倒れ文化に潜在するファッション産業

更新日:2015年01月25日

カテゴリー:論考・コラム

写真An African Cityに登場する5人の女性。An African City ウェブサイトから

アフリカビジネスパートナーズ 梅本優香里


私見では、アフリカで最も美人が多いのはセネガルである。東の美人国エチオピアも捨てがたいが、「美しくあることへの熱心さ」も加味すれば、西のセネガルに軍杯が上がる。道を歩いていると、思わず振り返ってしまうような女性によく会う。長い手足、高い腰、ほっそりした小顔に切れ長の目。そしてなにより装いが素敵なのだ。

マーケットでプリント生地を買ってきて、お気に入りの仕立屋でオーダーメイドして作る彼女たちの衣装は、細かいところまで凝っている。袖先にビーズが施してあったり、Aラインの広がった形の裾にフリルが入っていたり、絶妙にアシンメトリーだったり。スタイルブックを参考に自分で考えてオーダーする。共布で、頭に巻く布やバッグ、靴も作る。東京で売られていてもおかしくない、モダンでエレガントなこだわりのある服装は、さすが「セネガルの着倒れ」と言われるだけある。

セネガルから南東に約2000キロ離れたガーナも負けてはいない。ガーナ版「セックス・アンド・ザ・シティ」と呼ばれる「An African City」というウェブ上のドラマがある。ガーナの首都アクラに暮らす、仕事を持つイマドキの5人の女性が、恋や人生やおしゃれの本音をあけすけに話すという本家と似たコンセプトのドラマだが、本家同様、女性たちのおしゃれが注目の的だ。

オーダーメイドで仕立てたエレガントなプリント布のノースリーブドレスに、ブランドバッグ。スタイリッシュでクールなヨーロッパスタイルのスーツに、13センチヒールと存在感のあるアフリカ風アクセサリー。ガーナの伝統的な衣装と、欧米の洋服が混ざり合う。

登場人物は裕福で海外経験もあるという設定だが、ドラマで脇に写っている一般のガーナの人たちを見れば、主役たちのおしゃれ度ともそうかけ離れていないのが分かるだろう。ドラマの中の町並み、暮らしぶり、レストランも、アフリカの都市中間層のリアルな生活のままだ。

女性だけではない。コンゴ共和国やコンゴ民主共和国には、「サプール」と呼ばれる男性たちがいる。ゴルチェやルイヴィトンといった欧米ブランドのスーツとタイ、靴でダンディに決める人たちだ。その色彩バランスとエレガントさは、舗装されていない道やバラックの粗末な家々が立ち並ぶ環境の中、ロックでアバンギャルドでさえある。それもそのはず、もともとは反植民地的な社会運動の流れを汲んでいるのだ。ビール会社のギネスがキャンペーンに使用し、日本でもNHKの番組で放映された。


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コンゴ共和国の「サプール」のイメージ(ギネスの広告から)


アフリカ大陸の「ファッショニスタベルト」

アフリカ大陸の西端に位置するセネガルから、ギニア、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリア、そしてコンゴ共和国、コンゴ民主共和国に至る、ギニア湾を囲む地域は、アフリカのおしゃれ街道、ファッショニスタベルトと言っていい。美意識が高く、装いに熱心で、「パーニャ」などと呼ばれる綿100%のワックスプリント生地が流通しており、それをオーダーメイドで仕立てる文化が共通している。

歴史的にフランスやベルギーの影響を受けている国が多く、地理的には西アフリカと中部アフリカ、言語的には仏語圏アフリカと呼ばれる地域だ。エボラウィルスの流行で2014年によくニュースになったギニアやシエラレオネ、リベリアも、この西アフリカに位置する。


                アフリカのおしゃれベルト地帯。
ギニア湾を囲んで西アフリカのセネガルから中部アフリカのコンゴ民主共和国までの地域(ABP作成)


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この生地文化に大きなビジネス機会があると見ているのが、英投資会社アクティス(Actis)だ。アクティスは広くアフリカで、ショッピングモールや小売業など内需関連事業に投資している。「ブリスコ(Vlisco)」もそのひとつ。商品である高級ワックスプリント生地は、色合いやデザインが伝統的でありながらモダンで洗練されており、現代的なシルエットに仕立てるのがよく合う。ぜひこちらで商品を見て欲しい。値段は1着分6ヤードで1万円近い。しかしアフリカの中間層が好むのは、こういうファッションなのだ。

ブリスコの生地はオランダで製造され、コートジボワール(28店舗)、ガーナ(4店舗)、トーゴ(27店舗)、コンゴ民主共和国(9店舗)など、まさにおしゃれベルト一帯で販売されている。コートジボワール企業のユニワックス(Uniwax)、ウーディン(Woodin)といった、ブリスコより安価な、6ヤード3000円から5000円で買えるブランドも傘下に持つなど、中間層向け生地の主要販売企業だ。


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「ブリスコ(Vlisco)」のファッション(ブリスコウェブサイトから)


日本のファッション産業にも波及

コートジボワールやブルキナファソは、もともと世界有数の綿花の産地だ。コートジボワールの首都アビジャンは1980年代、アフリカで一番のおしゃれな都市で、テキスタイルの大型工場も複数あった。きっと、ファッショニスタたちが都市生活を謳歌していたのだろう。政治的な不安定により長く低迷していたが、昨年頃から投資が戻ってきている。

筆者が訪ねた、一度破綻し、現在現地の起業家により再建中のテキスタイル工場は、90年代までユニチカの協力工場だったという。「TOYODA」や「MURATA」と書かれた機械をメンテナンスしながら、コートジボワール産のテキスタイルの再興を狙う。

日本とおしゃれベルトの国々の間では最近、新しい取り組みが見られるようになった。日本のファッショニスタ達に絶大に支持されている、「桃太郎ジーンズ」などを販売しているデニムメーカーのジャパンブルーは、今年11月にコートジボワール産綿花で織った生地のジーンズを発売した。1本1万3000円だ。コートジボワールの綿花は原種に近く、風合いが豊かなのだと言う。ユナイテッドアローズも今年5月、ブルキナファソの綿花を用いて現地の職人が織った生地を使った、男物のジャケットとパンツの販売を開始した。

豊田通商が買収した仏商社CFAOは、昨年、仏小売大手のカルフールとアフリカで小売業に取り組むと発表している。その対象となる8カ国はまさにこのおしゃれベルトにある国々だ(セネガル、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリア、カメルーン、ガボン、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国)。カルフールの存在は、海外の服飾ブランドが新たにアフリカで販売を始める端緒となるだろう。1店舗目はコートジボワールにて、2015年に営業開始予定である。もちろん日本企業にもチャンスがあるだろう。


食事よりも身だしなみ

先ほど紹介したガーナのドラマ「An African City」の中では、女性たちがジムでエクササイズするシーンがよくでてくる。登場人物の一人はベジタリアンだ。実際、アフリカの都市部では、ダイエットやシェイプアップを目的に、野菜しか食べない、白身の肉か魚しか食べないという人にもよく会う。

シェイプアップに熱心なのは男性も同じだ。セネガルの首都ダカールにはじめて訪れた人が必ず驚く光景は、海岸沿いの砂浜で毎夕行われるランニングと野外ジム大会。200人はいるだろうか。仕事のあと三々五々集まった男性の集団が、同じ方向を向いて一糸乱れず、砂浜を行き来しながら黙々とランニングしている壮観な光景が見られる。

手作りのものも含め、何台も置いてある筋トレ機器のまわりを、人が囲み、熱心にビルドアップしている。「どうしてあんなに熱心にたくさんの人が運動しているの?」と聞くと、「男たるもの、シェイプアップしていつも体を保っておくべきだろう?」との答えだった。

もっとも、アフリカの人達は基本的におしゃれだ。どんな貧しい人でも、汚れた靴を履いて外出したりしない。未舗装の道路には砂埃が舞っているというのに、白い靴や白いジーンズを履いている人がいる。ワイシャツはピシっとしているし、洗濯は毎日するものとされている。洗濯機がない中、お母さんたちは朝から晩まで洗濯をしている。

生地は青空マーケットで安いものを買っても1000円~2000円はする。仕立屋への支払いも1000円程度。決して安い金額ではないが、彼らは装いと身だしなみにはお金を惜しまない。それが、彼らの美意識なのだ。


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コートジボワールの庶民のマーケットにある生地販売店
 

アフリカの社会、特にこれらおしゃれ街道の国々では、身だしなみがきちんとしているというのは、非常に重要なことだ。お金をもっているかどうかより、どれだけの人に慕われ、尊敬され、多くの関係性を持っているかが関心事なのだ。衣類や身だしなみにかける費用は、時に可処分所得を超えることもある。食事に事欠く人たちが、おしゃれやフィットネスにお金を使うはずがないと思い込んでいると、市場を見誤る。

おしゃれ街道のプリント生地は本来、部族ごとに決まった柄があり、柄やパターンで出身地や階層がわかるという。しかしブリスコはオランダで生産しているし、最近は中国で作られた安いプリント生地が流入している。ショッピングモールの普及につれて、欧米の高級ブランドやファストファッションも普及してきた。コートジボワールにはスペインのファストファッション「マンゴー(MANGO)」が3店舗あり、コンゴ民主共和国には「ザラ(ZARA)」も存在する。

しかし彼らは、伝統的なものも欧米のものも、自分たちの美意識によって、厳しい目で選別している。海外ブランドの衣料ならば必ず売れるかというとそういうわけでもない。以前日本のある ファッションブランドをアフリカで販売する計画について、現地ビジネスパーソンに話すと、「どうしてそんな安物をもってくるのか。もっとよいものを販売して欲しい」と言われたことがある。コンゴの「サプール」がそうであるように、ただ海外のものに憧れているというわけではない。彼らにとって、おしゃれは生きざまなのだ。


(この記事は、2014年12月25日に日経ビジネスオンラインに寄稿した記事の再掲です)
※引用される場合には、「アフリカビジネスパートナーズ」との出所の表記と引用におけるルールの遵守をお願いいたします。

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