
アフリカの日系スタートアップ、注目すべき7社(上)
HAKKI Africaをはじめ、累積調達額が1億円を超えるアフリカの日本のスタートアップをまとめています
(画像はGoodlife Pharmarcyのオンラインサイト広告、同社販売サイトから)
毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。
ブルーアンモニアの製造を目指す南アフリカ企業Suisoが、南アフリカで315億ランド(2,500億円)を投じ、石炭から肥料、ブルーメタノールを製造するプロジェクトにつき、実現可能性調査を完了した。早速基礎工事を開始し、2026年にはプラントの建設を開始、2029年に稼働を開始する見込みが立った。
プラントは南アフリカのMpumalanga州Krielに建設予定で、窒素肥料を年間150万トン、ブルーメタノールを年間23万4,000トン製造する。三井物産が出資する大手農業商社ETG(Export Trading Group)がオフテイカーを務め、Suisoが製造した肥料をサブサハラアフリカ諸国に販売する。
石炭をガス化させて合成ガス、水素、アンモニアを生成し、これらを用いて肥料やメタノールを製造する。原料に石炭を使うものの、製造過程で発生する二酸化炭素を回収することで排出量を抑制する。回収した二酸化炭素は石膏と炭酸アンモニウムの製造に再利用し、地中に貯蔵する可能性もある。さらに工場では、湿式排煙脱硫装置と排水処理装置を用いて二酸化窒素と二酸化硫黄の排出量を削減する。工場の動力源として、再生可能エネルギー発電会社と15年間の電力購入契約を締結することも検討している。深部塩水帯水層での炭素貯蔵に関する実現可能性調査も進行中である。
石炭ガス化技術は工業用ガスメーカーの米Air Productsが提供し、アンモニア合成技術は米エンジニアリング会社KBRが提供する。アンモニアを用いた尿素の合成では、肥料工場のエンジニアリングを専門とするオランダ企業Stamicarbonが協力する。メタノールの製造技術は中国の石油会社Sinopecが提供する。他にも中国のエンジニアリング会社Sinopec Ningboや、肥料・爆薬工場に排水処理技術を提供するスペインIncroが協力する。
※1ランド=8.2円(モーニングスター、2/4)
日本とザンビアが「日・ザンビア投資協定」に署名した。
両国間の投資保護と促進を強化することを目的にしたもので、投資における最恵国待遇と内国民待遇を確保する。公正かつ公平な扱いや特定措置の履行要求の禁止、収用や補償の条件、資金移転の自由、紛争解決手続きに関する規定も内容に含まれる。
ザンビアは銅とコバルトを中心とする鉱物資源を有しており、日本企業から強い関心を集めている。両国間の会合では、JOGMECによるザンビアでの資源探査協力を加速させることで合意した。
協定は、最後の通知が受領されてから30日後に発効される。
ケニアで配車ドライバー向けに中古車融資を提供する日系スタートアップHakki Africaが、シリーズCラウンドのファーストクローズで19億7,000万円を調達した。SMBCベンチャーキャピタル、グローバル・ブレイン、農林中金イノベーションファンドなとからエクイティーで8億円を調達し、三井住友銀行や北国銀行から11億7,000万円を借り入れる。エクイティーとデットあわせて19億1,000万円を調達した2023年のシリーズBに続く調達で、累計調達額は41億6,000万円となった。
Hakki Africaは2019年に創業した。配車アプリやタクシーのドライバーの与信審査を機械的に行うことができるクレジットスコアリングシステムを構築することで、コストとリスクを抑えた車両融資を提供する。同社によると、連結の経常利益ベースで3期連続の黒字を達成しているという。
調達資金は、今後予定する株式公開手続きの費用や、新たに進出する南アフリカやインドでの展開に用いる。南アフリカではタクシーなど商用ドライバー向けに自動車融資を提供する。インドでは宅配ドライバー向けに電動二輪向けの融資を提供する。
東洋エンジニアリングが、世界最大規模となる日産4,000トンの大粒尿素プラントをアンゴラに建設する同国の肥料会社Amufertから、肥料製造技術の供与や基本設計を受注した。肥料プラント全体の設計、調達、建設工事は中国のWuhuan Engineeringが受注した。
アンゴラは天然ガスを生産しているため、これを原料に用いて同国初となる尿素肥料プラントを建設する。稼働すれば、これまで全量輸入していた尿素肥料をすべて国内調達することができるようになる。
東洋エンジニアリングは、肥料を製造するための独自プロセスである尿素ライセンスを供与する。同社は世界で100以上のプラントに尿素ライセンスの供与やプラント建設を行ってきた実績がある。ナイジェリアでも、インドの化学企業インドラマとナイジェリア政府が出資するインドラマエレメグループに対して、同じ日産4,000トン規模の尿素プラント2基に対して、尿素ライセンス供与や基本設計を行ってきた。
ナイジェリアのバイク融資スタートアップMetro Africa Xpress(MAX)が、関係者によると、2025年1月に全従業員数の30%にあたる約150人を解雇した。同社によると解雇は事実で、ガソリン二輪への融資を中止し電動バイクに全面移行するために必要だったという。
MAXは、配車アプリなどのドライバー向けに返済後に所有できる車両融資を行っており、ナイジェリア、ガーナ、カメルーンで計12万台の電動バイクに融資することを目指している。従来はガソリン二輪を中心としており、この目標値は2024年の総融資台数の3倍に相当する。かつてMAXは電動バイクを自社で製造していたが、現在はSpiroなどの電動バイクメーカーから1台900ドルで調達しており、多額の仕入れ資金を必要としているという。解雇以外に、オフィスでの電力消費量や発電機の使用を減らすといったコスト削減策も行っている。
MAXは2015年に設立された。物流サービスから事業を開始し、後に配車サービスを追加、その後車両融資にピボットした。同社は2019年以降エクイティーとデットで計6,300万ドルを調達し、2020年には100億ナイラ(10億円)の社債を発行して4億ナイラ(4,000万円)の1年間の固定金利債券を確保した。2022年には私募により2,400万ドルを調達した。2024年11月には、1,000万ドルを投じてナイジェリア都市部に充電ステーションネットワークを構築するため、英インパクト投資PASH Globalと提携している。
※1ナイラ=0.10円(モーニングスター、2/14)
三菱重工業が、中国能源建設(CEEC)とコンソーシアムを組み、モロッコ国営電力・水道公社(ONEE)との間で、Al Wahda複合サイクルガスタービン発電所に関するEPC(設計・調達・建設)契約を締結した。三菱重工はJAC形ガスタービン2台を受注し、あわせてONEEと長期保守契約(LTSA)を締結した。発電機は三菱ジェネレーター株式会社製を採用する。
ガスタービン設備2台による発電容量は99万キロワットとなり、モロッコにおける発電容量の約7%に相当する。運転開始は2027年を予定している。天然ガスと水素を混焼することができ、二酸化炭素排出量を削減できる最新鋭JAC形ガスタービンを納入する。モロッコは2030年までに電力ミックスにおける再生可能エネルギーの割合を52%以上にするという目標を掲げている。
モロッコは、アフリカで最初にグリーン水素戦略を策定した国の一つとして、水素、アンモニア、メタノールといったグリーン分子を中心としたエネルギー転換を目指している。グリーン水素ロードマップでは、2030年までに最大30テラワット時、2050年までに307テラワット時の需要が見込まれており、そのためには2ギガワットの再生可能エネルギーが必要となる。製造したグリーン水素は、2030年までにはグリーンアンモニアの現地生産における原料および他国への輸出用として、2040年までにはエネルギー貯蔵の手段として、2050年までには国内の産業、住宅暖房、輸送で利用し、輸出も拡大する計画である。
エジプトのSokhna港のコンテナターミナルを運営するUAEの港湾管理会社DP World傘下のDP World Sokhnaが、乗用車の輸出を開始した。エジプトで組み立てられた日産自動車のサニー498台をRORO船に積んでドバイのJebel Ali港に向けて出航した。
DP World Sokhnaは、2025年に最大1万台の車両を出荷する計画である。過去20年間でAin Sokhna港の近代化に13億ドル以上を投資し、貨物輸送オフィスの拡張、サードパーティロジスティクス(3PL)ソリューションの提供、物流網の拡大を進めてきた。コンテナやバルク貨物、一般貨物、プロジェクト貨物、旅客サービスなど、幅広いサービスを提供している。
シンガポールの農業商社Olam Groupは、アフリカを中心に穀物などの農作物流通を営む傘下のOlam Agri Holdings(Olam Agri)の株式44.58%を、サウジアラビアの国営企業Saudi Agricultural & Livestock Investment (SALIC)に約17億8,000万ドルで売却することで合意した。Olam Agriの評価額は40億ドルで、現在の時価総額より23%高い。
SALICはすでにOlam Agriの35.43%を保有していたところ、追加取得により80.01%を保有することになる。3年以内に次のトランシェで残りの19.99%も取得することができるコールオプションについても合意した。買収により、サウジアラビアの食糧安全保障を確保する。
Olam Agriは、穀物、食用油、パスタといった商品を取り扱っていたが、売却により子会社ofiを通じたカカオとコーヒーの貿易に特化する。Olam Agriは2020年に再編により生まれ、シンガポールとサウジアラビアの両方で新規株式公開を目指していた。しかし、規制により計画が遅延し、2022年初頭にOlam Groupの全株式のうち約3分の1分を約35億ドルでSALICに売却していた。
豊田通商傘下CFAO Healthcareが、ケニアの薬局チェーンGoodlife Pharmacyの持ち株会社であるモーリシャスのAfrica Chemist and Beauty Care(ACBC)株式69.9%を追加取得し、完全子会社化する。2022年に30.1%を取得していた。南アフリカのプライベートエクイティーLeapfrog Investmentsおよび経営陣株主から取得するべく、株式売買契約を締結した。買収額は明らかにされていない。現在、東南部アフリカ市場共同体(COMESA)の競争当局が承認に向けてパブリックコメントを求めている段階にある。
Goodlife Pharmacyは2014年に設立された。ケニアとウガンダの子会社を通じ、医薬品、美容品、パーソナルケア製品等の小売と、一次医療相談や検査、予防接種等の医療関連サービスを行っている。CFAO Healthcareは買収により、ACBC傘下のケニアのGoodlife HoldingsとGoodlife PharmacyおよびウガンダのGoodlife Pharmacyを所有することとなる。
CFAO Healthcareはサブサハラアフリカの少なくとも24カ国で医薬品の卸流通に関わっている。最新の財務報告書によれば、アフリカでの売上高は19億ユーロに達しており、約3,800人の従業員を抱えている。