ケニア業界地図(農業ビジネス)
ケニアの農業ビジネスについてまとめています。
サブサハラアフリカ13カ国の農業に関する指標
アフリカの農業の現状と課題について、概要をまとめています。
当ページで取り上げたデータを最新のものに更新した2023年版を公開しました。最新の情報を以下から入手してください。アフリカの農業生産性や農業人口、農産物生産量/額、灌漑面積、機械化率、肥料使用量、食料自給率、主要な栽培作物や輸出作物といった、基礎的な情報を13の指標でまとめています。無料でダウンロードできます。
アフリカ農業に関する13の基礎情報(2023年版)
サブサハラアフリカと呼ばれる東アフリカ、西アフリカ、南部アフリカの13カ国を対象に、アフリカの農業を説明するのに適した13の指標を記した「アフリカ農業データシート」を作成しました。
サブサハラアフリカ13カ国
以下からPDFをダウンロードできます。
アフリカ農業データシート(2015年版)アフリカ農業データシートの内容は以下のようになっています(クリックで拡大)
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「アフリカ農業データシート(2015年版)」で取り上げた指標を使って、アフリカの農業の課題について説明します。
サブサハラアフリカでは、人口の63%が農村に住んでいます。農民の多くは、小さな土地を持ち、そこで自分と家族が食べるものを自給自足して、多くの現金を必要としない暮らしをしています。農村人口比率は、東アジアでは45%、ラテンアメリカでは21%であり、相対的にアフリカの農村人口比率が高いことが分かります。参考までに日本は8%と一桁台です。
ただし、大規模農業が発展し都市型経済が定着している南アフリカでは、農村人口は36%に過ぎません。西アフリカの国々も相対的に低いです。ひとことでサブサハラアフリカといっても国により違いは大きくあります。
農家が生み出す付加価値額は、世界やアジアと比べて低い数値にとどまっています。サブサハラアフリカの農業労働者一人あたりの付加価値額は673ドルと低く、東アジアの912ドルに対して7割ほどにとどまっています。
人が農村で自給自足の生活をしている場合、生きるのに金銭は必要なく貨幣経済が介在しませんが、医療を受ける、学校に行くといったサービスを受けるためには、現金が必要になります。また、農業は変動性が高いという特性を持つため、降雨量などの気候変動が、農民の暮らしを直撃します。灌漑設備の不足などによる水資源の非有効活用、過耕作や不適切な土地利用による土壌劣化があれば、気候変動の影響はより大きくなり、農民の生活はリスクが高いものとなります。
アフリカの中でのばらつきも大きく、南アフリカでは6,655ドル、ナイジェリアは4,575ドルと高い値を示しており、これはチリ(6,671ドル)、メキシコ(4,203ドル)と同レベルになります。一方で、多くのサブサハラアフリカの国は、200~300ドル台です。なお、日本の同数値は46,044ドル、アメリカは63,269ドルとなっています。
付加価値額を向上させるには、農業の生産性を上げなければなりません。生産性には、灌漑などのインフラ整備、高品種種子、肥料、機械化、作物の市場へのアクセスなどが関係します。アフリカの農業においては、大規模農場やコーヒーなどの輸出作物農業を除き、トラクターなどの機械が使用されることはまれです。灌漑設備もないことが多いため、一部の砂漠地域を除いては水資源があるにも関わらず有効活用されていない上、作業の予定が立てられず機会を逃すことが多いです。降雨のタイミングにあわせて、家族で、または臨時の労働者を雇って、人力で畑を耕します。
100平方キロメートルあたりのトラクター台数は、東アジアが61.9台(2000年)であるところ、南アフリカが47.5台、コートジボワールが32.1台、ケニアとタンザニアが25台程です。
1ヘクタールあたりの肥料消費量は、世界平均が141.3kgであるところ、14.7kgと約10分の1にとどまっています。肥料を使わない農業が一般的だということを表しています。東アジアは327.4kgであり、緑の革命による高品種種子の普及とともに肥料の使用がいかに東アジアの農業生産性を向上させてきたのかがうかがわれます。
しかし、サブサハラアフリカの国の中でも、大きなばらつきがあります。南アフリカの62.0kgはもちろん、ケニアは44.3kg、ガーナは34.9kgであるのに対し、ウガンダは1.8kg、タンザニア、ルワンダ、ナイジェリアは4kg台です。ケニアとガーナは近年急速に消費量が増えており、政府の農業振興策に背景がありそうです。肥料工場の建設や小規模農家の肥料購買への補助金供出(安価な肥料販売)や、肥料購買のためのローン提供などが行われています。
農業の生産性は、農村人口を食べさせるだけでなく、その国の都市人口のための食糧も賄える水準でなければなりません。サブサハラアフリカでは63%が農村に住んでいると最初に書きましたが、いいかえれば、農産物を生産もせずに消費するだけの都市人口が、残り46%存在していることになります。63%が46%を支えなければなりません。
アフリカで作られる作物は、東アフリカの紅茶、コーヒー豆、タバコ、西アフリカのカカオ豆、ゴム、パームオイル、南部アフリカの果汁、砂糖、タバコといった大規模農業による輸出作物と、メイズ、キャッサバ、ヤムイモ、バナナ、ミレット、小麦、米といった、国内で小規模農家中心に生産され、国内で消費される主食穀物とに分類することができます。各国の生産作物上位5位にあるように、どの国も主食穀物が生産量の上位にあります。にもかかわらず、アフリカの国々では国内需要のすべてを国内生産で賄えているわけではありません。
サブサハラアフリカ各国の食糧自給率(国内生産額/国内生産額+輸入額-輸出額)は、輸出作物の輸出額が多いという特徴にも関わらず、7割~9割となっています。食糧の輸入依存率をみると、おおむね30%程度の食糧を輸入に頼っています。もっとも、日本の食糧自給率も65%(2013年)しかなく、食料自給率や食糧の輸入依存率をどう捉えるかは議論があります。しかし、世界の穀物市場の動向に左右されずに安定して国民に食糧供給をしていくため、また、経済成長により手にした余剰資金を食糧の輸入に使って外部流出させるのではなく、国内に再投資でき成長を持続的なもににするためには、アフリカ各国においては食糧自給率の向上はプラスの意味合いが強いと考えられます。
食糧の自給率を上げ、自国の農産物で国内の人口を賄っていくためには、すでに述べた農業生産性の向上の他、土壌の有効利用も考えられます。各国の農業に適した土地面積のうち農業に実際に利用している農地利用比率は、ルワンダのように国土が狭く至るところに農地を開墾している国を除いて、50%を切っています。
農業の生産性が上がり、農家が土地あたり・一人あたりより高い付加価値を出せるようになるためには、生産面だけでなく、販売面も重要です。一般的にアフリカの農家は、市場へのアクセスに欠けるとされています。
作物をつくったものの、備蓄する場所がない、消費者が多い都市部まで運ぶのにインフラやコスト面の障壁がある、農村の作物を都市で売るための流通が整備されていない、または流通がオーガナイズドされておらず(多くの中間業者を経由)、売り手と買い手の間に情報の非対称があるため(不当に安く買い叩かれる)、農家の手には利益が入らない、作物が原料のまま引き取られ、加工などの付加価値分が農家の手にはわたらないといった課題の存在が指摘されています。
農家がより高い付加価値を出せるようになると、農家自身が豊かになり、インフラや生産性向上のために投資ができるようになります。また、労働力や土地をより有効に使えるようになり、国全体の効率性が高まり、それは経済成長につながります。