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アフリカビジネスの今

アフリカで日本企業が幹部候補を採用・育成する方法

更新日:2015年08月01日

カテゴリー:論考・コラム

アフリカビジネスパートナーズ 梅本優香里


アフリカ諸国で、現地人材の雇用を経験したことがある日本企業はまだ少ないだろう。日本企業のアフリカでの拠点数は、2013年10月時点で584拠点となった(外務省調べ)。しかし、アフリカで販売や製造を行い、アフリカ企業とパートナーシップを組む企業が増えるにつれて、日本企業で働くアフリカの現地人材も増えてきている。

現地の知見が少ない日本人にとって、ネットワークを持ち市場やビジネス環境に詳しい現地人材は、事業の成功と拡大を左右する存在だろう。日本企業の進出数が多い南アフリカとケニア、そしてナイジェリアでの事例を取り上げ、採用と育成のコツを取り上げてみたい。


ポテンシャルを持つ人材を採用するには

アフリカについては失業率の高さや貧困が取り上げられることが多いが、欧米の有名大学院などで学び祖国に戻ってきた「ディアスポラ」と言われる高度人材や、専門性の高い人材に限ると、需要が供給を上回る。南アフリカやケニアのようなビジネスが発達している国の都市部には、外資企業のアフリカ統括本部や研究機関、金融機関、国連をはじめとする国際機関および現地資本の有力企業などが集積しており、給料は高止まりしている。

これらの人材を雇用する際は、一般的に日本で同じ責務に就く人材よりも高い給与やよい待遇を用意する必要がある。労働意識やキャリアへの考え方は欧米のそれと変わりなく、彼らに興味を持ってもらえるような権限やキャリアプランの提示が求められる。

一方で、現地の大学を卒業した一般人材の場合、大学進学率が上昇している現在では、トップ校で優秀な成績を修めた人であっても、実務経験もなければと雇用されるのは容易ではない。彼らはチャンスを求めているため、職場のやり方を取り入れて意欲的に働くことが多い。

日本企業は海外拠点においても、職務記述書(ジョブディスクリプション)を明確にせず、特定の技能・職能であるハードスキルよりも人の資質であるソフトスキルや企業固有のノウハウへの適合性を従業員に求め、メンバーシップ型の組織運営を行う傾向が強い。このような「日本流」のやり方を遂行するためには、優秀な新卒を採用し、丁寧なOJTを行い育てるのがよい場合もある。

なお、日本語を話せる現地人材は少なく、いてもその人材レベル、信頼度は玉石混淆である。日本語での執筆や会話が必須な職務である場合を除いて、言語に大きな比重は置かずに、人物本位で採用する方がよい。

採用にあたって、人材のソーシングの具体的な方法は、他の地域と大きく変わらない。大学就職課からの紹介、人材紹介会社経由や新聞広告、競合からの引き抜き、ネットワークからの紹介などで適任者を見つける。

日本と比べると、人材の資質や能力にはばらつきが大きい。選考にあたっては、プレゼンテーション能力が高いアフリカ人材によく見られる書類上の経歴の輝かしさやアピール力に騙されずに、自社が期待する働き方や職務内容に適した人材であるかどうかを見抜くことが求められる。面接では、具体的な経験やものの考え方についてしっかり尋ねてほしい。また、新卒の場合は本採用前にインターンシップを行うことも有効だ。


法律・政策面での注意点

採用段階における目利きが重要なのは、一般的に労働に関する法律や判例に労働者保護の色が強い国が多いことにも由来する。従業員の解雇は簡単ではなく、争議は長引き、雇用側に有利に運ばないことが多い。雇用条件や解雇を巡るトラブルによって、元従業員から危害を加えられたり、政府当局や税務署などへの告発が行われることもある。

信頼関係が損なわれた結果パワーハラスメントなどで訴えられることもある。現地のルールを順守し、あらかじめ雇用契約を結び、日本での一般的な労使関係よりも緊張感をもってつきあうことが必要となる。

南アフリカで現地法人を持つ場合は、「BEE政策」への対応が必須である。BEE(Black Economic Empowerment)政策とは、アパルトヘイトのもとで不利な状況に置かれた黒人の人々のビジネスへの参加を促すため、一連のアファーマティブ・アクションを定めた各種法令から成り立っており、全ての企業が取り組むよう奨励されている。

経営への参加、雇用均等(管理職への登用)、従業員の技能開発費用への支出といった指標と基準が決められており、その達成度合いによって企業はランク付けされる。ランクの値は政府調達の際に考慮要素となる。BEEランクの高い企業を調達先として優先的に選定することも指標のひとつであるため、ランクが低ければ、政府のみならず民間企業の調達においても不利となる。


日本企業の理念を踏襲する現地管理職の育成

味の素は1991年から24年間にわたり、ナイジェリアで工場運営と販売を行っている。約400人の工場労働者と約500人の営業スタッフを抱え、ナイジェリア人管理職も10人以上いる。2013年以降ケニア、カメルーン、南アフリカといった他のアフリカ諸国へ事業を拡大しているが、これらの国の拠点立ち上げを行ったのも、ナイジェリア人管理職たちだった。

現地人材がマネジャーとして育てば、その知見やネットワークを活かした事業運営や組織運営ができるようになるだけでなく、企業理念や企業ウェイを他のアフリカ諸国や他の事業領域に拡大する際のスピードも上がる。味の素の営業スタッフは、アフリカ各国で路地や市場の小規模店舗を周り、足で稼ぐ「日本流の」地道なセールスを行っている。

日本は、アフリカ人にとって、「よい印象があるけど、詳しくは知らない国」である。働きたいと憧れるのは、ヨーロッパやアメリカの企業であり、日本企業であるからといって、それが大きなアドバンテージにはならないと思っていた方がいい。

一般的に、日系企業は日本人駐在員とローカルスタッフの間で、共有する情報や育成方法を使い分けることが多く、フェアでないと不満を抱かれやすい。アフリカの現地人材、特に幹部候補になるような人材の、労使関係への認識や働くことへのモチベーションの持ち方は、先進国の人々のそれとほぼ変わらないと捉えてよい。企業の価値観を明示的に伝え、段階に応じた経験の機会と意思決定の権限を与え、将来のキャリアプランを示し、国籍の区別なく育てていく姿勢が求められる。


(この記事は、2015年4月13日にリクルートワークス研究所に寄稿した記事の再掲です)
※引用される場合には、「アフリカビジネスパートナーズ」との出所の表記と引用におけるルールの遵守をお願いいたします。

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